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東京国立博物館の『国宝展』へ行ってきました〜おすすめの会場の巡り方など〜

先日、『東京国立博物館トーハクで開催中の「国宝展」の見どころ』というnoteを書きました。現在トーハクで開催されている特別展『国宝 東京国立博物館のすべて』の、見どころを紹介したnoteです。

noteを書き終えた時に、「やっぱり平治物語絵巻は見ておきたいなぁ」って思って、いちおう展示期間を調べてみました。すると、な…な…なんと! 今月末(10月30日)で、(今週で)展示期間が終了してしまうことが発覚しました! ということで、いそいで平日のチケットを購入しようと、過去noteに貼っておいたチケットの予約購入サイトへ急ぎました。

↑ スムーズにチケット予約サイトへ飛べるので、このnote、書いておいてよかったぁ…と、まずは自分が思いました。ただし12月になると、チケット購入サイトのURLがまた変わるので、気をつけましょう

■チケットの予約購入の顛末

先週チェックした時点で、週末はすでにチケット完売を確認済みだったため、もちろん平日狙いです。チケットサイトを開くと、一見すると、チケットが余っている日はなさそうでした。表示されているカレンダーは見られるのですが、ポチポチとクリックしてみても、先へ進まないのです。

あぁ…イライラするぅ…なんて言いながら、チケットサイトの画面を何度か「更新」してみたんです。そしたら……なぜか平日の1日いちにちだけ、空いているような表示がされていたんです。たしかカレンダーには、チケットの残り枚数が表示されるはず……なのですが、そのときには表示されていなかった気がします。

予約できたのは、平日の最終時間……15時30分の入場チケットです。

閉館時間が17時なので、1時間半しか見られないことに……。でも、わたしが見たいのは、とりあえずは『平治物語絵巻 六波羅行幸巻』と、あとはキリンの剥製、それに鳳輦ほうれんです。この3件だけなら、混んでいても1時間半もあれば十分でしょう。

観覧日を楽しみにしつつ、週末にはトーハクへ下見に行ってきました。

しかし『国宝展』の威力ってすごいです。全員が特別展の『国宝展』を見に来たわけではないでしょうけど、この『国宝展』が始まってからは、平日も週末も常に人がいっぱいです。もちろん小学生や中学生の団体さんが来ていることもあるんですけどね。(うちの子も、学校で上野の西洋美術館へ……行く予定でしたが、体調を崩してお休みしていたな……というのを思い出しました)

※以下に展示物の写真を載せますが、特別展会場内は、ごく一部を除き撮影禁止です。以下に載せた写真は、いずれも過去の通常展(総合展示)で撮影したものです(一部は、トーハクの掲載OKの画像サイトからの写真です)。

■いよいよ当日

いよいよ、『国宝展』のチケットを購入した日がやってきました。

平日なので、午前中は普通に仕事……というか、いつもよりもテキパキとToDoをこなしました(わたしも、いちおうは仕事をしています)。午後になってからはソワソワしはじめて、14時ころにはトーハクへ行ってしまいました(仕事終わってないけど……まぁいっかぁ〜、ということにして)。

早めに行ったのは、ソワソワしていたのも理由の一つなのですが、トーハクで現在開催されている特別企画『未来の博物館』を見て回りたかったからです。

この特別企画については、上記を参照ください……なのですが、もし『国宝展』へ行かれるのであれば、この中の『四季をめぐる高精細複製屏風』だけでも、『国宝展』の前後に押さえておくことをおすすめします。特に、長谷川等伯の『松林図屏風』など、絵画に興味を持っている人はおすすめです。

そうして『四季をめぐる高精細複製屏風』を見たり、別の部屋で開催されている別の同じ『未来の博物館』企画の、『時空をこえる8K』を見たり……それでも時間があったので、いつも最も空いている東洋館へ久しぶりに行ってみたりして、時間を調整しました。

そして入場時間の15時30分の5分前になったのを確認して、『国宝展』の会場である平成館へ向かいました。ほんと…トーハクって広い……。

平成館の入口からは、長い行列が伸びていました。そうなんです。15時30分の入場分を買っても、その時間に入れるわけではありません。ざっくり数えて、わたしの前には150人以上が並んでいるように見えましたし、わたしの後ろにも、ぞくぞくと来場者が並んでいきます。この時間帯だけで200人前後は入場するようです……感覚値ですいません、正確な人数は知りません。

帰り際に撮った平成館。特別展は2階です

結局、ロッカーに荷物を押し込む時間を含めて、会場に入ったのは15時50分頃でした。あぁもう、あと1時間強しかないな……なんて思いつつ、国宝が並ぶ第一会場へ入ってみると……人…人…人…。これは、普段のようにのんびりと見られる状況ではないなと、半ば諦めて、空いている場所を探して、のんびりと会場をあちらへぷらぷら…こちらへぷらぷら…しながら先へ進みました。もともと、とりあえずスタンプラリーのように、全てを見ようとは思いましたが、解説パネルなどを読みながらじっくりと見て回るつもりはありません。

そしてすぐに、目的の一つ『平治物語絵巻 六波羅行幸巻』が現れます。

『平治物語絵巻 六波羅行幸巻』(部分/東博画像検索サイトから)
それにしても絵画や書跡は、本当に、なんでこんなにきれいに残っているんだろうっていうくらい、残っている部分については、最近描かれたものですか? っていうくらいにきれいに残っているんですねぇ。博物館ではいつもそうですが、数百年前の人と、作品を通して繋がったという気が、すごくしました。

絵巻はですね……まぁ混みますね。たいていは並んで、頭から見ていきますし、ゆっくり見たい人もパパッと見たい人も、みんな“ゆっくり”見ていく人のペースに合わせて行列は進んでいくものです。行列が嫌いなわたしは、並ばずに、飛ばし飛ばしで、気になる所だけ「すいせぇ〜ん…」と心の中で言いながら、行列の隙間に身をねじ込んで、じぃ〜っと見つめてから、ソッと身を引いてまた別のところを見に行く……と言った具合です。

平治物語絵巻 六波羅行幸巻』が見終わった時点で、目的の1/3以上が終わった気がしました。あとはまたのんびりと、空いているところだけを飛ばし飛ばしに見て回りました。

雪舟さんの『秋冬山水図』(部分/東博画像検索サイトから)。
こちらは、イメージよりも本物の方が断然素晴らしくて、肉眼で見られて良かったなと思いました。実はこのモノクロ画というか水墨画が苦手でして……。でも、本物は、線などがものすごくパキッとしていて、↑ こんなモサッとした感じではないんです。総合展示会場にも、いま「伝・雪舟」みたいなのが展示されていたので、今度、じっくりと見てみたいと思います
いつもは特別待遇的な展示なのに、特別展では目立たないような展示だった法隆寺献納宝物の中の、『水滴(水注)』
※上の写真は、特別展で撮ったものではありません

そして気がつけば、15分くらいで第一会場の出口でした……(これで会場の半分が終了です)。

■女性が多い「国宝刀剣の間」へ

長い長い長すぎる行列ができているミュージアムショップを通り過ぎて、次は第二会場です。こちらはいきなり「国宝刀剣の間」です。その名の通り、国宝の刀剣が19件、薄暗い部屋の中にズラァ〜っと並んでいます。

大人気だった『太刀 三条宗近(名物 三日月宗近)』
もともと人気なうえに、最近はNHK『歴史探偵』でも特集されていたし(見逃しました…)、展示ケースの周りには女性たちの人だかりがすごかったです。近寄って、少しだけ見させてもらいましたが、すぐに退散……とほほ……
※上の写真は、特別展で撮ったものではありません

でも、普通に展示ケースへ寄っていっても、見られるのは女性の頭だけでした。びっくりするくらいに女性率の高い部屋でしたね……。予想通りと言えばそうなんですけど…これほどまでか、という感じでした。わたしのようなおじさんたちは、展示ケースへはあまり近づかずに、さぁ〜っと室内を一巡して、次の部屋へ行かれる人が多かった気がします。

■いよいよ鳳輦ほうれんとご対面。でも実は……

刀剣の部屋を抜け出ると、だいぶ雰囲気が落ち着きます。これまでの「見てやるぜ!」というオーラが、観覧者からはなくなっていき、クールダウンしていく雰囲気なんです。

というのも、ここからは国宝はなく、トーハクの歴史を振り返りましょう! といった特集展です。わたしが特別展を見に来た、3つの目的のうちの2つは、ここにあります。鳳輦ほうれんとキリンさんです。

と……その前にですね……部屋に入ってすぐのところに、雅樂で使う笛や笙などが飾ってあったんです。この展示品はまぁきれいなのですが、注目したいのは、その展示ケースなんですよね。隣のケースもですが、これって「ただものじゃない感」を漂わせているんです。

暗めの展示室でジロジロとケースの枠などを見ているわたし……とても怪しかったでしょうね……なんだか監視員から警戒する視線を感じた気がします。でも、これらのケース……おそらく戦前の帝室博物館の時代に使われていたものだと思うんです(たぶん、展示会場のどこかに解説が書いてあると思うのですが……そうした解説文を見つけられませんでした)。

で、昔の帝室博物館時代の写真を見たら、そのままズバリの展示ケースが写っていました。↓ この一番右の棚に寄りかかっている展示ケースです。このタイプのケースが、今回は少なくても3〜4個は使われていましたね。あと、単品を展示するためのケースなども使われていました。

写真を見た時に、これこれこれ! とつぶやいてしまった展示ケースです。この↑↑このへんに奥の棚に寄りかかっている展示ケースですw
単品展示用のケース……そのままズバリかは分かりませんが、こういう感じの展示ケースも、おそらくリノベーションして使っていました

ということで、これから行くことがあれば、この展示ケースにも注目してほしいところです。ちょっと、そういう演出に、感動して興奮してしまいました。

それで隣で見ている女性に「あの…このケース分かります? たぶん、むかしの帝博で使ってたやつですよ」とコソッと教えてあげたくなりました。でも、もしかすると「えぇそうですよ。そこの解説パネルに書いてあるじゃないですか」とか「そうなのよぉ、雑誌の『和楽』に書いてあったわよぉ」なんて言われたら恥ずかしいので、やめておきました。

そして脱線しましたが、まずは鳳輦ほうれんが現れました。

「これかぁ〜〜!!!」って思いましたよ。

ぼくは特に幕末史が好きなのですが、幕末と言えば孝明天皇ですよ。その孝明天皇が、確実にこの鳳輦ほうれんに乗られているんですよ。数えてはいませんが、16枚の花弁のある菊花紋章が、あちこちに貼られているんですよ。そういうものを、わたしみたいなのが目の前で見ている……ダメだけど触ろうと思えば触れるくらいの距離で……平伏もせずに突っ立って眺めているんですよ。

これって、すごいことじゃないですか!

とひとしきり感動してから、もう目の前に“居る”、キリンの剥製に近づいていってしまいました。

でも、2周目で気がつくんですが、この鳳輦ほうれんの周りにも『赤坂離宮花鳥図画帖』という、すばらしい作品が並んでいました。どうやら今の赤坂迎賓館で、当時の赤坂離宮を立てる時に、多くの美術家が動員されました。そして(解説パネルのうろ覚えの断片によれば)七宝焼の何かを、その離宮に飾ることになったとか。七宝焼で描く絵柄を、渡辺省亭さんと荒木寛畝さんとで、コンペさせたんですね。その時の2人の画案がずらりと並んでいます。

またもう一つ、浮世絵コーナーもあったのですが、その最後の2枚が、葛飾北斎の『神奈川沖浪裏なみうら』と、歌川広重の『月にがん』です。江戸期の天才絵師二人の力作が、こうして並んでいると、迫力が違うなぁと。それぞれは見たことがあるし、過去にも感動しましたが、こうして揃って見ると、また「この人たちすげぇな」ってワクワクしてしまいます。

家に帰ってから二人の絵を並べてみると、やっぱりすごいなとは思うのですが、実物が並んでいるのを見るのとは、ちょっと……というかだいぶワクワクが減りますね。なんでしょうか……やっぱりこれが実物のチカラ、なんでしょうかね
すげえな…と感じたのは、ダイナミックな構図です。「ざばぁ〜」っていう波の音や、「ひゅぅぅぅ〜」っていう翼が空気を切り裂いて滑空する音が聞こえてきます……いや、そんな幻聴は聞こえませんが、そんな雰囲気が伝わってくるっていうね

そして、キリンですよ。鳳輦ほうれんを見ながらも、遠目にキリンの剥製も見ていましたが……想像していたよりも小さかったです。前かがみになって水を飲んでいるようなポーズだから……というのもありますが、意外とコンパクトだなと。

それでも、「やっと会えたなぁ」って気がしました。くりくりした愛らしい目も魅力的でしたが、毛が……毛がね……展示のためにきれいにしたんでしょうけど、ほんとに何ていうか、上質な絨毯のような……思わず撫でたくなるような毛並みでした。こちらのキリン……わたしが言うほど注目度が高いわけでもないので、ゆっくりと見て回れます。

■最後の見どころは……

いやぁ、すっかり忘れていました。トーハク好きとしては見逃せないのが…‥というかもう見逃しようのない展示場所なのですが……今回の展示がお披露目となる『金剛力士立像(仁王像)』です。英語だと「Gate Guardians(門の守護者たち)←かっこいい!」です。

この2体は平安時代に遡る貴 重な作例である。かつて滋賀県の寺の門に安置されていたが、 昭和9年(1934) の室戸台風 で大破した。近年の修理をへて、令和4年に新たに収蔵された。

ざっくり解説の解説パネルより
阿形

金剛力士立像を、360度から見たことがないので分かりませんが、体全体から力強さを感じました。高さが2.8mで単純に大きいだけでなく、胴回りなどもすさまじい太さです。

吽形

それにしても、解説パネルにある「かつて滋賀県の寺の門に安置されていた」というのが気になるんですよ…。動画の中でも「ある寺に」と、なんだか隠しているのか、それほど有名ではない寺だから名前を出さないだけなのか……。解説パネルに「旧・〇〇寺伝来」とか記されてもいいと思うんですけどね。なにやら、そのあたりの事情を、言わないようにしているんですかね……。

まぁでも、これで特別展は終了です……と思いきやです。最後の最後に、昨日のnoteで触れた『見返り美人』が展示されていました。数カ月前に本館の通称:国宝の部屋で、展示されていたばかりだった気がするのですが……こちらにも来ていたんです。

とにかくすごい人気の『見返り美人』です

半年前に見たときよりも、きれいになった気がしました。これはもう修復後ということですかね? また、半年前は通称「国宝の部屋」で見たのですが、その時よりも作品に近づける展示ケースだったので、絵をまじまじと見られました(混んでいるのを気にしなければ…ですが)

■『国宝展』会場の、おすすめの巡り方

特別展『国宝 東京国立博物館のすべて』は、トーハク所蔵の89件の国宝が一気に見られるというのが、ウリです。ただし、前期の一度だけでは、50〜60件くらいしか見られません。特に絵巻を含む絵画や書跡などの「紙モノ」は、光を当てることによる劣化を考慮して、年間の展示日数を2週間以下に抑えるという指針があるためです。

わたしの場合は開催初期の2週間しか展示されない『平治物語絵巻』が見たかったので、その期間に合わせて無理して行ってきました。そうした見たいものが決まっている場合は、それに合わせて行きたいものです。

ただし、結局のところ今回の特別展は「トーハク所蔵品」のみで構成されています(キリンを除く)。つまり、トーハクの平常展(総合文化展)で、近い将来にも展示される可能性が高いんですよね。実際に、この2〜3年間、しげしげとトーハク通いを続けているわたしは、今回の展示品の半分くらいは平常展で見ています。

そのため、見たいものがある人は、逆に、今回無理してみる必要もなくない? とも思ってしまいます。平常展でも国宝の展示ケースの前は、混むことが多いですが、近くのソファなどでジーッと待っていれば、人の波が途切れる時間が必ず訪れます。トーハクのサイトをチェックし続けて、その時に見に行くのが良いかなと……。

あれもこれも見たいという方や、何かコレを見たいというわけではなく国宝群を見たいという人には、今回の特別展は絶好のチャンスです。

わたしの場合はたまたま「3時半〜4時半」に入場するチケットを購入しました。たまたまとはいえ、最終の時間なので、おそらく最も人気のない時間帯だと思います。

ただし、その3時半からのチケットは、閉館時間間近で見られる時間が少ないというデメリットだけではありません。なにせ、3時半に入場してしまえば、後から人が増えることがないんです。

わたしは3時50分頃に第一会場に入り、全てを見終わったのが4時半くらいでした。そこで予定していた通り、第二会場を出てから、改めて第一会場へ直行しました。2周したということです。思ったとおりに、あの超人気だった長谷川等伯の『松林図屏風』も、『平治物語絵巻』や雪舟の『秋冬山水図』だって、ゆっくりと全体から細部まで見られました。

ただし刀剣ファンは、最初から最後まで「国宝刀剣の間」にいらっしゃるようで……閉館時間のギリギリまで、多くの女性で埋まっていました。

そのため、刀剣以外については、4時半近くから人が少なくなるようなので、その時間からゆっくりと見始めるというのもおすすめです。「え? それだと30分間しか見られないのでは?」と思われるかもしれませんが、まぁ大丈夫です。人も少ないし、ゆっくりと見て回れますよ……とだけ記しておきます。

あと特別展専用のミュージアムショップについては、閉館時間後も混んでいました。お土産を買うのも目的であれば、3時半入場回はおすすめしません。


『広目天(四天王立像のうち)』京都:浄瑠璃寺伝来(トーハクへ寄託)
これも国宝なんですけど、今回の特別展では展示されていませんね……。


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