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トーハクにある法隆寺関連の国宝を、隅々まで見られる感じられる『デジタル法隆寺宝物館』が始まります@東京国立博物館

東京国立博物館トーハクの法隆寺宝物館に、通年で鑑賞できる展示室「デジタル法隆寺宝物館」が、2023年1月31日に開室されるそうです。

「デジタル法隆寺宝物館」は、「常時展示できない法隆寺ゆかりの名宝を、デジタルコンテンツや複製でくわしく鑑賞、体験する展示室」だとしています。もちろん、デジタル法隆寺宝物館の会場内は写真、動画の撮影が可能です。

どんなものが観られるかと言えば、1月31日からは国宝『聖徳太子絵伝』を、8月1日からは『法隆寺金堂壁画』をテーマに、臨場感あふれるグラフィックパネル(複製)と、大型8Kモニターで、絵の詳細まで自在に鑑賞できるデジタルコンテンツを展示するとしています。

■実は法隆寺の宝物を多数所有するトーハク

実は、トーハクには、江戸時代までは法隆寺にあった法隆寺の寺宝がたくさん収蔵されています。「なぜか?」と言えば、明治初期に起こった神仏分離令や(寺領削減の)上知令、それらに伴って激化した廃仏毀釈運動が影響して、法隆寺をはじめとする全国の寺院は、経済的にも困窮していました。そこで法隆寺は、現在の価値で数億円となる下賜金の代わりに、一部の寺宝を皇室に献上することにしました。その皇室献上品が、トーハクに引き継がれて、主に法隆寺宝物館で展示されています。

東京国立博物館の法隆寺宝物館

とは言っても、特に布や紙製の物は、展示するほど劣化していくこともあって、常時展示されていませんし、展示できる期間も減ってしまい、なかなか観られません。

そうした作品の一つが、およそ1000年前の……平安時代後期の1069年に秦致貞はたのちていによって描かれた、国宝の綾本著色聖徳太子絵伝」です。

国宝「聖徳太子絵伝」展示風景(法隆寺宝物館第6室) ※2019年撮影
11歳、雲のように空に浮かぶ(第1面)/国宝「聖徳太子絵伝」(部分)

この絵は、もと法隆寺東院の絵殿を飾っていた障子絵。江戸時代、屏風に改装されて、さらに近年になって10面のパネル装にされたそうです。数ある聖徳太子絵伝のなかでもっとも古く、初期やまと絵の代表作にあげられます。

でも、長い年月を経て画面の痛みがひどく、絹で織った綾地の雰囲気や、鮮やかな著色ちゃくしょくは、今はほとんど失われてしまい、肉眼で細部まで鑑賞することはかないません。

『聖徳太子絵伝』は、法隆寺の東院の絵殿に飾られていた障子絵です
法隆寺の東院の絵殿・舎利殿(Wikipediaより)

1月31日から始まる「デジタル法隆寺宝物館」では、そんな国宝「聖徳太子絵伝」の高精細画像を、大型8Kモニターで鑑賞できるそうです。

デジタル化された作品は、原品ではよく見えない聖徳太子の表情までが8Kモニターに映し出され、聖徳太子の生涯にわたる50以上もの事績から、観たい場面を選んで解説とともに鑑賞できるんです。

5組10面のパネルには、聖徳太子の57の事績を表現した絵が散りばめられています
第3面の右上に描かれた、27歳で黒駒に乗って東国にあそび富士山に登る聖徳太子/国宝「聖徳太子絵伝」(部分)

トーハクの法隆寺宝物館の会場で観られる『8Kで文化財 国宝「聖徳太子絵伝」』は、もとの作品の高精細画像を、大型8Kモニターに映し出すアプリケーションです。1面およそ縦1.9m×横1.5mの原品を、計28区画に分割して撮影し、画像をつなぎ合わせて1面で18億画素の画像データを作成したもの。鑑賞者自身の操作により、2面で36億画素という画像データが、リアルタイムに処理され、70インチ8Kモニターに表示されます。

12歳、百済の賢者、日羅と会う(第10面)/国宝「聖徳太子絵伝」(部分)

この8Kモニターでは、国宝「聖徳太子絵伝」の観たい部分を大きく拡大すると、聖徳太子の表情までくわしく確認できるそうです。聖徳太子の生涯のエピソードから場面を選び、その場面の解説も聞けて、絵伝と聖徳太子の魅力を、じっくりとご堪能できそうです。

41歳、百済国の味摩之、伎楽を伝え、これを童子に習わせる(第5面)/国宝「聖徳太子絵伝」(部分)

会場には8Kモニターのほかにも、「聖徳太子絵伝」を原寸大で複製したグラフィックパネルが、法隆寺の絵殿にあったときと同じコの字型の配置にして展示されるそうです。

8Kモニターのデジタル(バーチャル)で詳細を観つつ、グラフィックパネルで実体験も可能だということです。

■まだ先の話だけど8月1日からは「法隆寺金堂壁画」をテーマに!

トーハクの法隆寺宝物館での「デジタル法隆寺宝物館」は、約半年ごとにテーマを変更していく予定です。そして、2023年8月1日からのテーマは『法隆寺金堂壁画』です。

同壁画は、名前の通り、法隆寺の金堂に描かれていた7世紀後半から8世紀はじめに制作された壁画です。その金堂は、昭和24年(1949年)1月26日の解体修理中に、火災に遭いました。そして内部の壁画も被害を受けてしまいました。

でも、その火災や解体修理前の昭和10年(1935年)に、美術印刷会社の便利堂によって、ガラス乾板(コロタイプ原板)を使って撮影されていました。この363枚の「写真ガラス原板」自体も重要文化財に指定されているのですが、近年、専用の高精細スキャナー(1500dpi)でデジタル化されて、2020年には『「法隆寺金堂壁画」写真ガラス原板デジタルビューア』として公開されました

今回、トーハクの法隆寺宝物館での「デジタル法隆寺宝物館」では、そのデジタル素材を70インチの大画面で鑑賞できるそうです。

第二号壁 菩薩像/「法隆寺金堂壁画」(部分)
第六号壁 阿弥陀浄土図/「法隆寺金堂壁画」(部分)


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