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電車

電車に乗ったら車内には私しかいなかった。何も考えずに椅子の端に座って一息ついた。
暑い外とは違い、冷房の効いた車内は寒いぐらいだった。あたりを見回したが、隣の車両にも人の気配は無かった。

十分も十五分も電車は走っている。
電車の走る音すら聞こえなくなるほどの静けさが怖くなり次の駅で降りようと決意するぐらいだった。
電車が動いてる音はするものの全く次の駅に着く気配が見えない。
スマホを見てSNSを開らくと、文字化けを起こして画面は変になっている。
しかし、外は見慣れた川沿いを走っている。


おかしい。
地獄のような白昼夢を見ているのか狸や狐の類に化かされているのだろうか。


ただ冷たい汗だけが嫌に背中を冷やしているのがわかった。
体感時間で三十分も乗っているが延々と川沿いを走っている。
広告もどんどんと訳のわからないものになって行く。
こんな現代社会に対応している狐狸妖怪がいるのかと思ったりして驚いた。
眉唾の言う言葉もある通りに眉に唾を塗ってみると、まだ電車には乗っておらず駅のホームのベンチに座って汗をダラダラと流していた。
今のは夢だったのだろうか、狸や狐の類に化かされたのかはわからないが悪夢のような昼間を過ごしていたのだった。

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