読みたいことを、書けばいい。:本の紹介(ネタバレ少)
本書は、自称「青年実業家」の田中泰延氏の、いわゆる普通のHow to(ハウツー)本とは一線を画した、エンタメエッセイである(自己解釈)。
およそ青年1人分(24年)を広告業界の巨塔・電通でバリバリのコピーライトしていた、紛れもないオジサン・田中氏の独自の視点から、タイトルの通り「書くこと」について、極めてシンプル且つわかりやすい内容で真に迫ってくる。
さて、ハウツー系だ!と思うと、勉強する気で読まなければいけなくて気が引けることはないだろうか?ぼくは勉強が嫌いなので気が重い。少なくともこんな記事を読んでいるあなただってそうだろう(確証済み・確認前)。
ぼくが本書を書店で見つけ、購入してから読むまでには工程がある。まず表紙を眺め、少し飾ってみたり、積んでみる。そして寝かせて、あるいは一緒に寝て。少し連れて歩いて、読もうかどうか思いを馳せる。この間、約2週間である。
また、ぼくは本の使い方には「読む」、「眺める」そして「諦める(売る)」といった多様な楽しみ方を有している。思い返せば小学校時代からその様な態度で本に向き合っている。いつ金を払ったかとか借りたかとかどうかは、眺めていたら忘れているので、気にならない。
だが、満を辞してページをめくったが最後、本書はあっという間に読み終えた。「遅読家」のぼくでさえ、「書き方」という重苦しげなテーマであっても、サクサク楽しく読めて、嬉々としてレビューしている。多少読みやすさが伝われば、と思う。
まるで仲の良い田中先輩が語りかけてくるように、「書くこと」への考え方や、今まで沢山の生徒に指導してきた経験が凝縮されている。にも関わらず「極めてサクサク読める」のが、まさにタイトルの説得力や整合性を高めている。
元々コピーライターの最たる仕事である、短い言葉でメッセージを的確に伝えることが隅々まで生かされているため、一言一言が響くし、響きすぎて記憶に残っていない。どんどん更新されるので、一読では「ためになる楽しい映画を見た感じ」になってしまう。
重要と思しき文字が太字になっているあたりにハウツー本らしさが垣間見れるのだが、その程度の短文とか単語のパワーではない。ロジカルなのに情に訴え、つい「うんうん、なるほど」と思わせてくる、論や文書の巧みさがある。
読みやすさばかり強調しているが、メッセージが明確である。特に、技術やウケる書き方などの小手先の話ではなく、そのずっと手前の、インプットや整理、そして、読みたいことの話へ繋がっていく。
そして、めちゃめちゃタメになるし「やるぞ!」という気にさせてくれる。ぼくと同じく素直さが売りのあなたには、是非おすすめしたい。
半ば、書くものへ対する自己啓発本のような節もある。田中教か、田中塾にでも入ってしまったようであるが、本を通し田中氏とは一定の距離保ちながら、同氏の、書くことによる生き様を垣間見れるようで、エンタメ感満載だ。
これから書くぞ!という方は勿論、書いてたけど疲れた方や、書くことに迷いが出た方、そして、昔書いていた方なんかにもおすすめできる本ではないだろうか。
まずはAmazonで目次から眺めてみても、損はないかもしれない。
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