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失われた時を求めて2    陸海のやなみ


Annual city  Sea-Gypsies of the Inland Sea
1948年(昭和23年) 7月23日 管絃祭
西の松原付近から 撮影:花田観光社

原爆投下、終戦から1ヶ月後の1945年9月17日枕崎台風が到来。
被爆直後の広島をはじめ、宮島もまた甚大な被害を受けた。河川からの水害土砂で社殿が埋まった嚴島神社はこの年(1948年)ようやく土砂搬出を完了した。
引き続きこの直後から「昭和の大修理」と呼ばれる
社殿と鳥居の修理に突入する節目の年。
写真の中の前景には家船(えぶね)と呼ばれる(家財道具の一切を船に積み込み一年の大半を海上で過ごす)海上生活者の生活臭までもが映り込む。
船を覆う天幕は海上都市の家並(やなみ)のように大鳥居のはるか遠方の沖まで連なる。
一方で、陸上の湾の形状に沿って扇状に築かれ、通りに対して平入りに連なる特徴的な街並みと渾然一体をなして一つの巨大な都市に見えたであろう当時の光景を想像してみる。
そこに集まる海の民にとってそれは
「賑わいのユートピア」である以前に
「余儀なくされた場所(ディストピア)」の記憶。

 

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