第四章〜人生の転換期はいつも突然やってくる〜
ネットワークビジネスで作った借金は300万弱。
アルバイトを掛け持ちして、何とか全ての借金を1年少しで返し終わったのですがすでに30歳を超えていました。
私は若くエネルギッシュな20代を勧誘にあけくれ、何のスキルも身に着けず借金を増やすだけで終わったのです。
その時、初めて自分のして来た事に後悔をして人生をやり直す事を決めたのでした。
そんな私は知人の紹介で飲食店で働きだします。
毎日を必死で生きていきました。
営業をしていた若い頃の何事もとことんやり切って成果を出す経験を活かし、料理だけでなく接客やマネージメントまで誰よりも貪欲に学びました。
私は周りの人を笑顔にしたかったのです。
お客様が『美味しかった!』と笑顔で帰ってくれるのが私にとって喜びでした。
このとき、目標もできました。
(ここで店長になり修行を積んで独立したい。)
多くの人を笑顔にできる、そんなお店を作りたいという夢ができたのです。
努力の甲斐もあってか最速で店長になることが出来ました。
店長になると
当然、人事面接をこなしていくわけですが、
あるとき、アルバイトで入社して来た女性で、どうしても気になる子がいました。
店長とアルバイトという関係性ではありましたが、私よりも接客のスキルに長けており、仕事の面でも尊敬できる人でした。
(以前の私なら素直に部下を尊敬することは出来なかったかもしれません)
私は初めて彼女から上司としての振る舞いや考え方を学んだのです。
私は真面目に働き、目標を持つ事は出来ていたのですが、さらに彼女のおかげでスキルも早く得る事ができました。
仕事が終われば、帰り道で今日の営業の反省をしながら帰ってました。
そうやって仕事での彼女が占める割合が増えていったせいか、仕事がお休みの日には、いつも気づけば彼女の事を考えている自分に気づきました。
仕事にもプライベートにも距離が近付いた私たちはいつしか付き合うようになりました。
仕事に加え、独身だった自分にとって、さらに大切なものを得る事ができたのです。
それが今の奥さんです。
アルバイトで入ってきたこの子が、自分の人生のかけがえのない人になったのでした。
私には頑張る理由が出来ました。
結婚して2年目の34歳の時に初めての子どもを授かりました。
父親が居なかった私。
お金で苦労した私。
寂しかった私。
そんな思いで私は努力ができたのです。
そして継続ができたのです。
私は37歳で念願の独立を果たせました。
目標を叶えたのです。
私はスキルを身に付ける事ができたのです。
うれしかったのは、
ネットワークビジネスの時にどんどん離れていった過去の友人たちが真面目に頑張って、独立まで果たした私のお店にたくさん足を運んでくるようになったことです。
お店も徐々に軌道にのっていきます。
開業して2年目には2号店の出店を果たし、4年目には3号店、4号店と店舗を拡大していったのです。
が、しかし
全てが順調に進んでいたと思われていた時、私は体調を崩して職場で倒れてしまったのです。
病院のベッドで目を覚ましました。
明らかに働きすぎによる過労からくるものでした。
(流れる点滴と白い天井を見ながら、私は、ただボーっと家族のことをひたすら考えていました。)
当時、
私には3人の子供がおり、幼い頃の自分のような思いをさせたくない!と仕事をがむしゃらに頑張っていたのです。
『幸せになるにはお金を稼ぐしかない!』
という思いも強く、、、。
(いや、そんな呪縛にとらわれていたのかもしれません。)
妻には3人の子供の育児を任せっきりにしていました。
働きづめの私は子供の寝顔しか見ることしかなかったのです。
子供や奥さんの笑顔を大切にしたいと言いながら、子供や奥さんの笑顔を見る事がなかったのかもしれません。
白い天井を見ながら、ふと私は我に返ったのです。
父親と同じ事をしているのではないのかと。
末っ子が1歳の時に、
私がもしこのまま死んでしまったら…
子供たちの成長や今、一瞬の笑顔が見れなくなってしまう。
いや、今すでに私は見ていないのではないか?
そんな葛藤をしている中、一本の電話が鳴ったのです。
「あなたのお店を買いたい。」
それは隣県の飲食チェーンの店からでした。
岡山県に初出店を考えているらしく、私の物件とビジネスモデルを気に入って頂き『売却を検討してもらえないか?』という相談だったのです。
当時、当然売却などするつもりはない私。
(自分の築き上げた4店舗、従業員も含め自分が守るべき家族だという思いが強かったので誰かに任せるという選択肢はありませんでした。)
しかし一度話を聞いて欲しいと強く勧められ、仕方なしに商談の席につきました。
先方からの条件は破格でした。
従業員も含め全ての店舗をM&Aしたいとの事で、私としては懸案の従業員の心配もなくなりました。
そして、家族の顔を見ながら生きていくこともできるかも…
売却したとしても、子供も小さいしまだまだ働かなくてはなりません。
本当に悩みました。
返事を保留にし、ある日家族で近所の焼肉屋に外食に行きました。
そこは住宅街の中にひっそりと佇む老夫婦が営んでいる老舗焼肉屋です。
20年近く営業をされており、近所の方が家族で通うようなアットホームなお店です。
お店の外観も古く、テーブルも7席しかない小ぢんまりとしたお店です。
私はそのお店が好きで、休みの日には家族でよく通っていました。
そんな折、店主からこの店を畳むと聞いたのです。
もう高齢で仕事に支障をきたしていることが原因らしく、今でも多くのお客様が来店されているから、それだけが心残りだと。
『この店、私にやらせてください!』
直感で思わず私はそう発していたのです。
『実はあなたにやってもらいたかったんだ』と、店主から返ってきた言葉は驚きでした。
そこの店主さんは私の経営していたお店にもよくお客様としてご来店されており、私の料理の腕を認めてくださっていたのです。
私は家族に相談し、既存の店舗を売却してその焼肉屋を継ぐことにしたのです。
焼肉屋には同じ敷地内に大きな家もついていました。
家族で生活するには充分すぎるマイホームと隣接する自分のお店を手に入れる事で、私は家族との時間と大好きな仕事を同時に手に入れたのです。
その年の12月まで既存店で営業をして、翌年から新生活をスタートさせました。
家賃も人件費も広告宣伝費も銀行の返済も何もない生活。
全てに解放された私がいました。
少し前まで
ベットの上で天井を眺めていた私。
家族の笑顔を見たくて、家族の笑顔を見れなかった私。
いろんな葛藤があった私の人生は大きく舵をきったのです。
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■プロローグ
■第一話 〜片親、DV。でも夢を追いかけた少年時代〜
■第二章 〜挫折からの初就職。社会人になってまた挫折〜
■第三章 〜いよいよネットワークビジネスの世界へ〜
■第四章 〜人生の転換期はいつも突然やってくる〜
■第五章 〜物事の真理。再度ネットワークビジネスにチャレンジして解ったこと〜
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