新型コロナ対応で進むテレワーク・・・・・「外圧」依存を逆手に改革推進を

 新型コロナウィルスへの対応で、約7割の企業が在宅などで働くテレワークを取り入れているそうだ。かなり昔からテレワークの推進が叫ばれながら、わが国ではほとんど活用されなかった。それだけに、新型コロナウィルスの侵入という脅威があったとはいえ、あまりにも導入が早いのに驚かされる。

 もっとも、今回に限ったことではない。週休2日、週40時間労働の法制化は、日米貿易摩擦から「働き過ぎ」の批判を浴びた政府の主導によるものだったし、働き方改革もまた過労自殺を機に政府が重い腰を上げてようやく法制化にこぎ着けた。

 働き方の改革は本来、労使の自主的な努力によって進められるのが望ましいとされる。しかし、日本企業で自発的な改革を期待するのは難しい。その大きな原因は、わが国特有の「共同体型組織」にある。

 雇用の流動化が進みつつあるとはいえ、わが国では入社した以上は長期にわたり働き続けることが前提になっている。そのため組織は閉鎖的になり、内部では自然と隠然たる上下関係や既得権のしがらみが生まれ、同調圧力が強くなる。したがって内部から声をあげ、改革していくことは不可能に近い。たとえ改革がすべての利害関係者にとって利益になるとわかっていても、断行できないのが日本の組織なのである。

 だからこそ、結局は「お上」頼みになる。そのお上である政府もまた、やむをえない圧力が背景にあってこそ改革に着手できる。そして、いったん動き出したら横並び社会ゆえ、改革は意外に早く、かつスムーズに進む。

 要するに、企業も政府も「外圧」を後ろ盾にすると改革にそれほど苦労しないのである。黒船によって鎖国を解き、瞬く間に近代化の道を歩みはじめた日本社会の体質は、いまも変わっていないということだろう。

 だとしたら、むしろ外圧を前向きに受け止め、それを機に仕組みそのものを一気に変えてしまえばよい。テレワークを定着させるには、仕事の分担から管理職の役割、人事制度、意思決定システムまで変える必要がある。またテレワークを行うなかで、ムダな仕事や慣行もあぶり出される。

 新型コロナウィルスの流行が収まるのをひたすら待ち、耐えようとするだけではなく、システム改革の好機ととらえるしたたかさがほしい。

#COMEMO #NIKKEI

「個人」の視点から組織、社会などについて感じたことを記しています。