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【詩】馬の訪問

馬は窓の端から顔を出して
こちらをじっと見つめていた
私がその視線に気がつくのを
ずいぶん前から待っていたようだった

私の目と馬の目が一瞬合った
馬が何を考えているのか読み取ろうとしたが
暗く沈んだ茶色の瞳は
私に何も教えてくれなかった

馬は私が気がついたことを確認すると
静かに窓枠の外へ去っていった
慌てて窓に駆け寄り外を見渡すと
馬の姿はもうどこにもなかった

見えたのは馬の顔だけだった
身体は見えなかった
顔だけが来ていたのだろう
この辺りに馬はいないから


(ユリイカ2020年7月号「今月の作品」)

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