栗林元

名古屋市出身。 広告会社で、営業、WEBディレクターとして勤務。 体験を生かした小説「…

栗林元

名古屋市出身。 広告会社で、営業、WEBディレクターとして勤務。 体験を生かした小説「神様の立候補」で、平成3年に第二回ビジネスストーリー大賞(テレビ東京/日本経済新聞)佳作入選。 現在は会社を退職し、マイペースで作品を発表しています。 近著は「不死の宴 第一部・第二部」

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    小説やシナリオなど、言葉で物語を描くことに関しての気づきや技に関する記事です。 「小説指南抄」は過去記事を、「創作エッセイ」は新しい記事をアップしています。

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    栗林元の小説作品集。1997年から初めたWEBサイト「デジタル文芸」から名前を取りました。サイトは休眠中ですが、創作活動は継続中。

最近の記事

ブックガイド(132)「CUT 猟奇犯罪捜査班 藤堂比奈子」

取り壊しの決まった廃病院で発見された腐乱死体。検死に向かった比奈子たちの前に、病院内の各所から同様の死体が。計五人の死体が物語る異様な殺人者の動機とは? いよいよ、おなじみのメンバーもこなれて来て快調に物語は進む。 このシリーズでの比奈子と保のコンビ、さしずめ「羊たちの沈黙」のクラリス捜査官とレクター博士だなと気づく。 内藤さんの作品は、「よろず建物因縁帖」でも、うっすらと「ゴーストハント」シリーズ(小野不由美)のキャラクターたちと重なる部分が合って、それでも一つ新機軸(イノ

    • 映画レヴュー(135)「マスターズ・オブ・ホラー」

      2018年公開のホラー映画。5人の映画監督(アレハンドロ・ブルゲス、ジョー・ダンテ、ミック・ギャリス、北村龍平、デヴィッド・スレイド)によるアンソロジー作品。 真夜中の奇妙な映画館。その上映作品タイトルに自分の名前が入っていることに気づいた者が、誘われるようにして見始めた映画が彼ら、彼女らの運命を語る、というスタイル。 特に第四話の「出口はこちら」はすごかった。 最近のネットゲーム「バックルーム」(2019)とか「8番出口」(2023)のルーツは、この第四話かもしれない。 ア

      • ブックガイド(131)「ON 猟奇犯罪捜査班 藤堂比奈子」

        第21回日本ホラー小説大賞読者賞。 奇妙な「自殺」事件。犯人はみな殺人犯で、過去の自分の事件をなぞるようにして自殺している。 やがて彼らの心療内科による治療歴から明らかになっていくのは…。 というお話。 サイコSFとミステリーの境界線上を走る物語に魅了され、もう途中で本を置けなかった。日奈子を始めとする八王子署の面々の今後も楽しみ。 ホラー創作欲が萌してきて、今書いてる長編が夏にはアップしそうなので、その後はホラー書きたいなと思ってる俺。 そんな気にさせる作品だった。 「O

        • 映画レヴュー(134)「鵜頭川村事件」(WOWOW 2022)

          2020年の小説「鵜頭川村事件」(櫛木 理宇)のドラマ化。あの「死刑に至る病」の作者である。 医師の岩森明(松田龍平)は娘を連れ、行方不明となった妻の仁美(蓮佛美沙子)を捜しに、妻の故郷である鵜頭川村(うずかわむら)を訪れる。12年ぶりに開催される、エイキチという名の神の祭りの準備のただ中で村は活気づいていた。しかし、そこは血縁に基づく不毛な一族同士の権力闘争が続けられる一方で、都市部から取り残された若者たちが鬱憤(うっぷん)をためる、絶望に支配された空間だった、という物語。

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        • 映画レヴュー(134)「鵜頭川村事件」(WOWOW 2022)

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          ブックガイド(130)「熊の皮」(ハヤカワ・ポケット・ミステリー)

          もともと短編小説やエッセイの作家で自然愛好家ジェイムズ・A・マクラフリンの処女長編。 世捨て人の戦い  主人公ライス・ムーアはバージニア州のアパラチア山脈の自然保護区で管理人をしている世捨て人。メキシコ国境で事件に巻き込まれ、収監されていた過去がある。  ある日、手足と胆嚢を切り取られ全身の皮を剥ぎ取られた熊の死骸が禁漁区である山中で発見される。熊の手と胆嚢は、中国向けのブラックマーケットで高額で取引されているという。かつて生物学者を志していたライスは、単独で調査に乗り出

          ブックガイド(130)「熊の皮」(ハヤカワ・ポケット・ミステリー)

          映画レヴュー(133)「レッド・クイーン」

          フアン・ゴメス=フラドによるスペイン文学界を席巻した作品のドラマ化。 アントニア・スコットは世界一賢い女性で、その聡明さから警察の秘密プロジェクトのレッド・クイーンとなった。とある問題を起こした刑事のジョン・グティエレス(屈強なバスク人でゲイ)は、誘拐と殺人という、血が騒ぐ2つの事件で再び人生に花を咲かせることはできるのか。 というドラマだが、けっこうお約束通り感はある。 優秀だがコミュニケーションに難のある女探偵とゲイの男探偵のバディもの。ゼロ年代ならユニークだったかもしれ

          映画レヴュー(133)「レッド・クイーン」

          映画レヴュー(133)「DCU」

          おなじみの役者によるサスペンスドラマだけど、海上保安庁の完全タイアップで迫力はあった。ストーリーも起伏に富んでてついつい一気観した。 日曜劇場枠で2022年に放映されたもので、オリジナル・ストーリーである。 凝った設定 海上保安庁に新設された水中事件や事故の捜査を行うエキスパート集団DCU(Deep Crime Unit、潜水特殊捜査隊)が、従来の海上水域だけでなく、警察の捜査では困難な「危険極まりない日本全国の河川や湖」など、あらゆる水中に潜り隠された証拠を探し「水中未

          映画レヴュー(133)「DCU」

          創作エッセイ(75)ご近所トワイライト・ゾーン(2)

          神社仏閣系の物件だが、中もよく見えないし、字も見えない。田舎にはよくあるんだよなあ。 県道沿いで半世紀近く営業してたけど、高齢化で廃業したようだ。この手の廃業物件、少なくないんだよな俺の近所。 血糖値下げるためによく歩いてるんだけど、ご近所のトワイライト・ゾーン物件、これからも見つけたらアップしようと思った。 こういった心に引っかかる物件の印象や情景などのインプット、小説書く時のネタに使えるのだ。気が付くと、観た時の印象や様子を心の中で文章にしてたりする。 小説書きの性(

          創作エッセイ(75)ご近所トワイライト・ゾーン(2)

          映画レビュー(132)宮部みゆき「ソロモンの偽証」(ドラマ)

           2015年の映画版は観ているのだが、今回はドラマ版。全8話のエピソードでじっくりと描かれている。  クリスマスの朝、主人公の藤野涼子(上白石萌歌)が雪の積もった校庭でクラスメイト・柏木卓也(野村裕基)の死体を発見するところから物語はスタートする。  警察や高校が自殺と断定する中、涼子のもとに“同級生・大出俊次(坂東龍汰)らによる殺人”を告発する匿名の手紙が。自殺か他殺か、転落死をめぐって騒ぎだすマスコミやSNSユーザー。  いわくありげな登場人物たちによってドラマは二転三転

          映画レビュー(132)宮部みゆき「ソロモンの偽証」(ドラマ)

          映画レヴュー(131)「エンバー 失われた光の物語」

           滅びゆく地球環境からの避難所として建設された、大型発電機を動力源とする都市エンバーは、200年にわたり人口を維持するよう設計された。しかし、その計画の詳細は七代目の市長の時に失われ、人々は壊れゆく街で不安な日常を送っている。そして、その発電機が故障した今、エンバーは闇に沈み、まばゆかった光はちらつき弱まり始める。  主人公の少女リーナと少年ドゥーンは地上への道を探す…。  ファンタジーであるが、これは剣も魔法もないSF的ファンタジーである。閉ざされた都市から脱出するのは少年

          映画レヴュー(131)「エンバー 失われた光の物語」

          映画レヴュー(130)「ブラック・ダリア」

          1947年にロサンゼルスで実際に起きた猟奇殺人事件「ブラック・ダリア事件」を題材としたジェイムズ・エルロイの同名小説(LA4部作の第1作・1987年)を原作としている。監督はブライアン・デ・パルマ。 刑事バッキー・ブライカートと、やはり元ボクサーの刑事リー・ブランチャード。二人はボクシングの試合を通して仲良くなり、捜査課でバディとなる。リーの恋人との三人の友情は、やがてブラック・ダリア事件という猟奇犯罪事件の捜査を通じて壊れていく。 この二人のバディの関係を通して、1940年

          映画レヴュー(130)「ブラック・ダリア」

          ブックガイド(129)「この場所、何かがおかしい 」(最東対地)

          おかしなものを観察する探訪記。ここでの「おかしい」は怪しい、可笑しいなど色々な意味を内包してる。 街を歩いていると遭遇する、予想もつかないおかしなモノ。現在だとyoutubeの怪奇系チャンネルでよく見るネタだが、以前は書籍でリリースされることが多かった。いわゆる「珍百景モノ」のブログ本である。 この本の面白さは、関西人である再東氏のセンスで再解釈していることかな。 私の地元・愛知県のネタも二話入ってる。 「この場所、何かがおかしい 」 (追記) 小説家にとってのインプットは

          ブックガイド(129)「この場所、何かがおかしい 」(最東対地)

          映画レビュー(129)「プラチナデータ」

          「プラチナデータ」から犯人を特定する最先端のDNA捜査が可能になった近未来。目指しているのは検挙率100%、冤罪率0%の社会だ。 主人公・神楽龍平は警察庁の科学捜査機関「特殊解析研究所」に所属する天才科学者。天才数学者の蓼科早樹とともに開発したDNA捜査システムを用い、いくつもの難事件を解決してきた。 ところが、そのDNA捜査の重要関係者が次々と殺される連続殺人事件が起きるがDNAのデータはNF(該当者なし)。 捜査が難航する中、蓼科も連続殺人の被害者となってしまう。そして、

          映画レビュー(129)「プラチナデータ」

          映画レビュー(127)「ザ・ロストシティ」

          サンドラ・ブロック主演の冒険もの。「スピード」以来、この手の役が一番似合う美人さんだ。 元考古学者の小説家ロレッタはマンネリ気味の冒険ロマン小説を書いている。その本の表紙モデル・アランはマッチョなハンサムだけど実は不器用な男。 ところが、ひょんなことから資産家のトレジャーハンターにさらわれ、失われた宝物探しに就かされることになる。アランはそれを救い出せるか? というお話。 小説家の小説ネタの宝さがしということで、少し「メタ」なコメディである。ブラッド・ピットとか大物を贅沢な使

          映画レビュー(127)「ザ・ロストシティ」

          映画レビュー(128)「ラーゲリより愛を込めて」

           辺見じゅんの「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」の映画化作品。  シベリア抑留で亡くなった山本幡男氏の体験と、ソ連兵の厳しい監視を盗んで届けられた遺書のついてのお話。  絶望に沈み、自棄になってしまう抑留兵たちの希望の灯をともし続けた山本氏と彼を待ち続けた家族たち。見ごたえあった。  しかし、ソ連による抑留のいかに非人道的なことか。後半、抑留者を思想教育するためにアクチーフ(積極分子)を作って優遇する、不平分子をあぶりだすために人民裁判をするといった、集団教育の恐ろしさよ。

          映画レビュー(128)「ラーゲリより愛を込めて」

          創作エッセイ(74)「リサ・ラーソン展」岐阜県現代陶芸美術館

          人や動物のユーモラスな造形で人気のリサ・ラーソンの展示会を観てきた。 展覧会開催中の本年3月11日に92歳で亡くなられている。スウェーデンを代表する現代陶芸家で、その作風は温かい。 当初はユーモラスで可愛い動物の造形で人気を得るのだが、やがて恋人同士、夫婦、母子、家族などの情愛を抽象的な表現で造形していき、観る者の心にあたたかな灯をともすような作風に至る。 そんな彼女の生涯を作品の変遷で追いかける展示になっている。 実に見ごたえがあった。図録まで買ってしまいましたとさ。 「リ

          創作エッセイ(74)「リサ・ラーソン展」岐阜県現代陶芸美術館