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「ごはん」の時間

一食、一食をきちんと食べる大切さ。
これはコロナ禍で改めて気づいたこと。
「食べること」って、カラダだけじゃなく、心にも栄養を与えてくれる。


自粛生活で料理に目覚める


自粛。
もう耳にタコができるくらい毎日見聞きするこの2文字。

あー、もう外出て仕事したーい。
生徒さんの顔見ながらセミナーしたーい。
家族がいる京都に帰りたーい。

…と思うけど、自分ひとりのために誰かに迷惑をかけてはいけないので、自粛生活を続けている。

元来、外へ出て働くことが好きな人間なだけに当初はきつかったが、何とかそれなりに慣れてきた。
今、一番の楽しみは「料理を作る」こと。
それもこれまでトライしたことがないものがいい。

最近のヒットはたけのこの下茹で。
恥ずかしながら53歳になるまで、ただの一度もたけのこを茹でたことがなかった。
まずどこまで皮をむいていいかわかんないし、何より手間がかかりそうで。
しかし時間だけはたっぷりある。
「ならば」と試したところ、これがとんでもない達成感で、すっかりはまってしまった。

分厚い皮をつるーんとむいた内側にひそむ乳白色の身、
縦に切った時の規則的な断面、
そして何より栗を思わせる茹でたての甘味がたまらない。
「どうしてもっと早くやらなかったのだろう」と後悔しきりである。

生のいかをさばいて塩辛を作るのもまた一興。
市販の塩辛は人口のアミノ酸やみりんなどが入っていて、どうも好きになれない。
だが自分で作ればいかのワタと塩だけのシンプルで極上の塩辛ができる。
いい日本酒を買っておいて、前日から塩辛を仕込む幸せといったらもう…。

そうそう、数年ぶりにケーキも作ってみた。
といっても炊飯器でだけれど。
今後の収入が見えない今、コンビニスイーツを年中買うわけにもいくまい。
ホットケーキミックスを使った簡易版だけど、素朴で懐かしい味がいい。
自作だと砂糖の量も加減できるので、ダイエットにも良さそうだ。

エサからごはんへ


とまあ、こんな具合に自粛生活を楽しんでいる。

時間をかけて作った料理は盛り付ける皿だって凝る。
今までだったら食洗器で乾かしているものにザクっと盛っていたが、
「せっかく作ったんだから」と丁寧に盛り付けるようになった。

食べ方も変わった。
これまでは仕事の合間にスマホを見ながらササッと食べていた。
特に自宅でのランチがひどかった。
お腹を満たすことが目的のまさに「エサ」。
いくら忙しいとはいえ、食や酒をテーマに執筆する人間がやるべきことではない。
何ともお恥ずかしい限りである。

時間と手間をかけて料理を作り、作家ものの器に盛り愛でる。
そしてじっくりと味わう。
自画自賛だが、なかなかおいしい。
「うふふ」と口角が自然に上がる。
ああ、「エサ」じゃなくて、「ごはん」になったんだなあと、しみじみ思う。

今までどのくらいごはんの時間をむげにしてきたんだろう。
何だかちょっと損をした気分だ。

コロナはとっとと終息して欲しいけど、丁寧に暮らすってすごく豊かだ。
この気持ちを忘れないよう、今日もキッチンに立つ。

◇◇◇◇◇

たけのこのかたい部分でメンマを自作。これまたお酒が進む。太らないように気をつけねば…。

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