内緒にして。
真剣な表情で端末を握りしめ、会話をしている君は、
何度も唇を噛み、一点をずっと見つめている。
暫くして、端末を置くと、
座椅子の背に寄りかかり、ゆっくり瞬きをした。
内緒って言葉は人によって、重さ、刺激、高揚感を感じるものだと思うの。
あの子が内緒を言った、あの人にも内緒を言える人がいて、
内緒の輪はどんどん広まっていく。
人間っていうのは、一人を恐れるから。
そう呟く君は、溺れ藻掻いているかのよう
瞳を揺らしている。
やがて、バシャ、バシャと鳴っていた音が
小さくなっていく。
縋るよう、クッションに顔を埋めた君は、
傷ついてほしくない。
でも、少し安心したの。
私だけ、私だけが。
籠った声で、泡のように吐き出した。
僕は確信した。 君は溺れる事を選んだんだね。
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