haimitsu

はじめまして。読んでいってください。

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内緒にして。

真剣な表情で端末を握りしめ、会話をしている君は、 何度も唇を噛み、一点をずっと見つめている。 暫くして、端末を置くと、 座椅子の背に寄りかかり、ゆっくり瞬きをした。 内緒って言葉は人によって、重さ、刺激、高揚感を感じるものだと思うの。 あの子が内緒を言った、あの人にも内緒を言える人がいて、 内緒の輪はどんどん広まっていく。 人間っていうのは、一人を恐れるから。 そう呟く君は、溺れ藻掻いているかのよう 瞳を揺らしている。 やがて、バシャ、バシャと鳴っていた音が 小さく

    • レモンと、彼。

      教室を照らす陽光 柔らかな風と夏の匂い まるでレモンを絞ったような、そんな夏。 視界に入る髪を押さえ、結ぼうかと迷いながら、 白が増えていく黒板をただ見ていた。 ―――あつい、な、 五日前に席替えをしてから、右側がやけに重く、熱く、感じる。 彼が居る右側が。                          左から差し込む陽よりも右側があつく感じるのはなんでだろう。 学校生活一番のくじ運を使ってしまったみたい。 ―――ありがとう、神様。 今日こそ、今日こそと意気

      • 花畑と、君。

        カーテンが揺れる。 生ぬるい風とシャンプーの香り。 目を閉じるとそこはまるで、一面に広がる花畑。 ちらり、隣の席に視線を移す。 靡く髪を小さな手で押さえ、黒板を見つめる君。 ―――あぁ、そっか、目なんか閉じなくてもここは花畑だ。 五日前の席替えが、おそらく一年分程の幸運をくれた。 雑に千切られた紙切れは、ゴミ切れとならずに、財布の中で、大吉のおみくじと並んでいる。 前髪短くなった気がする。 少し日焼けしたかな、いや、でも白いな。 眠そうだな。 ―――あ、欠伸した

        • 雨と、サンカヨウ。

          ポツリ、、、 肌を滑る雨粒。 ポツリ、、、 揺れる睫毛。 ポツリ、、、 重くなっていく髪の毛。 そっと、目を瞑ってあの日を思い出す。 ・・・・・・・ その日も雨だった。 朝から違和感があって、 それは、肌の調子が悪いとか、 前髪が決まらないとか、 熱っぽいとか、そういった類のことではなく、 じわじわと侵食していた灰が一面に染まり切った感じがした。 放課後になるとそれは、濃く重くなっていて 周りの声も、雨の音も聞こえなくなっていた。 気づいたら歩道橋の上か

        内緒にして。

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        • 君の、灰色な日々。
          1本
        • 物語
          3本