「こんなに辛い失恋もいつかは怖い話になるのかな?百物語の最初の方で誰かが話してくれるのかな?そう思わないと哀しくて死んじゃうよ」

 昔、村上春樹がジャズバーを経営していた頃にどうしても月末に5千円だけが足りない事があったという。その支払いが出来ないと店を畳むしかない状況。奥さんと方々に金策に走ったが足りない。どうしようかと2人で項垂れて歩く夜道の前方になんと5千円が落ちていたという。確か、村上春樹だったと思う。何かの文章で読んだ記憶がある。

 私は両手に神秘十字という手相がある。これはどうやら強運らしい。そして私はその恩恵に預かっている気がする。土壇場でラッキーを拾ってきた自負がある。

 失業保険の期間を全く勘違いして有り金を酒宴に費やして、いざハローワークに行ったらもう支給期間終わってますと言われ顔面真っ青になった2時間後に元の労働先から期間限定で働いて欲しいと連絡を受けて首の皮が繋がったり。

 行きつけの居酒屋で吞みまくっていたら矢先ハタと気が付き財布を確認すると300円しか入っておらず、急いでコンビニのATMに駆け込むも時間外で下せず、顔面真っ青で残りのハイボールを呑んでいたら隣の不動産業に勤めるカップルに声をかけられ一緒に呑んでいたら奢って貰った事もあった。

 酔った勢いで通販で大量に本を買い込んで翌朝、家賃が払えないと顔面真っ青になった時、ちょうど演劇のギャラが入って、尚且つ、割と高額だったので、家賃を払って、そのまま呑みにも行けた幸運もあった。

 単純に金がない時に、お金が沢山貰える夢を見た事もあった。これはぬか喜びである。

 読書以外にまともな趣味のない私は飲酒に金を使ってしまう。しかし、ここ最近その飲酒もめっきりである。何故ならば排気口新作公演『時に想像しあった人たち』の台本作業&稽古の真っ最中だからである。

 台本作業中の私は疲労とストレスで性根がグぬぬとねじ曲がっていくので、「台本大変ですね」と言われると「なら酒でも奢れ」と言う。「稽古大変ですね」と言われると「なら酒でも奢れ」と言う。こだまでしょうか?いいえ誰でも。二日酔いの金子みすゞみたいになるのである。

 さて排気口「時に想像しあった人たち」ティザー用長篇映画『エウァンゲリオン』予告篇が公開された。

 排気口「時に想像しあった人たち」ティザー用長篇映画『エウァンゲリオン』とは何か?と疑問に思われる方もいるので説明すると、というか、もしかしたら、今まで、説明したことが無いかもしれない。

 排気口新作公演はぢるちゃんのフライヤーと山河図のティザーの三すくみになっている。ぢるちゃんと山河図こと澁谷さんに私は最初のプロットめいた構想を話す。今回の新作はこんなものを書きたい。こんな場所を目指して台本を進めたい。その新作公演の最も原始な形をそれぞれが解釈し拡大し時にもっと遠くの方へ投げ出すように、形にしたのがフライヤーであり、ティザー映画なのである。

 排気口新作公演とフライヤーとティザー映画をそれぞれを補完し1つの大きな塊になっている。新作公演のある部分はフライヤーに託され、新作公演のある部分はティザー映画では手放されている。予告であり本質、本質であり予告なのだ。ティザー用長篇映画『エウァンゲリオン』とはもう一つの『時に想像しあった人たち』なのである。

 排気口新作公演は台本から役者へと言葉も身体も通過して変化して作られる。だから私個人の欲望から例え出発しても形は大きく変わる。総体としての欲望になる。その点、フライヤーとティザー映画は最も原始なもの、つまりは、私が一人で頭の中で描いたものを起点にしている。だから排気口フライヤーは「そう見えたはずの風景」でありティザー映画は「もしかしたらこうだったかもしれない風景」でもあるのだ。

 排気口新作公演『時に想像しあった人たち』は確かに私が真夜中に思い浮かべた風景が最初としてある。しかしフライヤーとしてティザー映画として、リゾームの様に変化変容して伸びていく。稽古があり、役者の欲望と身体と発話があり、スタッフの技術が作品を大きく変化変容させていくのと同じように。

 残暑の日々から始まる排気口新作公演『時に想像しあった人たち』はフライヤーとティザー映画も大きな構成要素として、分裂を目指す統合の様に、統合を目指す分裂の様に、限りある美しい時間をその身体に、写されたイメージに、祈りのキュートを多く讃えながら。

 そしてもう1つ、排気口新作公演『時に想像しあった人たち』をより楽しむためのアイテムこと新しい排気口物販も近いうちに情報公開される。
「排気口物販を着て排気口新作公演『時に想像しあった人たち』を観に行こう」が合言葉。忘れないでね。

 最後に。予約音頭だ!!わーい!!わーい!!


  ふざけてして予約がマジになる瞬間。それは最後の暗転からまたもう一度明るく光が貴方を照らす時だと思うんだ。

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