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写真を通じて出会った人たちへ

そして、2018年に出会った人たちへ

いつの間にか、あの日あの時からもう6年が経とうとしているの、気が付きたくない!
ねぇねぇ、皆様、お元気ですか?
どんな人達も大人になっちゃって、私つまんないかも。
25歳は大人じゃないし、26歳だって迷ってる。
私まだ17歳だったの。大人が大人じゃないこと、教えてくれちゃって罪深くて深い冬、千葉のあの寒い堤防で話した34歳だって、大人じゃ無かったんだね。
みんな居なくなっちゃったけど、まだ私の声が届いたりする?久し振り、元気にしてるかな。

高校生の頃のフェーズはもう既に完全に閉ざされていて、私達は過去へは戻れないことを知りました。
ようやく、遅くない?
細胞は繰り返し代謝を繰り返し、あの頃の私の形は、もう心のハートディスク…♡にしか残って居ないのです。
iPhoneは壊れましたし、日記帳はどっかに行きました。

photoりょうたさん

昨日お友達とウチの換気扇ガンガンに回して一緒にハイライト吸ったの、緑の。
私この子が好きだからハイライト吸ってた。
そういうのと恋って、何が違うの?
薬指のキラキラ、もう婚約指輪じゃなくなってちっとも驚かなかったし、私達の会話は二年で形成されたものとは思えないぐらい活き活きとしていて、彼女の、常に微笑みの形が残された愛らしい唇はいつだって魅力的で、少し妖しい。
「はぐち、今私達は現在を認識することが出来ても、もう認識した瞬間それは過去なんだよ。さっき撮った写真は、全部過去なの。怖くない?」
彼女の笑顔はもう昨日の夜の話で、それは過去で、したためた現在の言葉も思想も思いもやがてそれは過去になる。それってすごく……すごくこわーい。

でもね、私は時間の感覚にもう2018年には気付いてしまったの。
もしもし、過去の自分へ
私は今憧れの東京に一人で生活しているよ。

目をね、瞑るといつだってあの時のキラキラが、うぅん。ぎらぎらが心の中で踊るの。
だって、最悪だったじゃん。
同世代での水面下の睨み合いとか、あったよね。私忘れてないよ。写真の狭い界隈、なんか沢山あったじゃん。数え切れないぐらい憎悪があって、信じられないぐらい沢山の擦り傷をつけあったじゃん。
私、呪いって永遠に続くのかと思っていた。
あの子が怖い呪い。あの子との確執、そういうのって永遠にこびり付いて生涯永遠に死ぬまで離れないって本気で信じていた。
なんでかって?
視野の狭い17歳だったから。
田舎だったし寮生活で、電波の薄い小さな部屋、東京のお友達が流すツイキャスが世界を繋ぐ窓だったの。嘘じゃないし本当だよ。
それぐらい、私は貴方達にありがとうって、本気で思ってるんだよ。
顔を上げると冬の空、満天の星空、永遠に辿り着かない帰路と形成された白い息、電波越しに気まぐれにくれたあの人の言葉が今も救いだって言ったら笑ってくれるかな。
今は、私の弟を助けてくれてありがとうね。


東京は…部分部分で切り取られた東京は。
秋葉原はなんも無い駅、マックフロートと黄緑色、生まれて初めて泊まった君の狭いワンルーム、東京の家賃って狭いのに高いんだ、ふーん。
大学生って全然別の生き物で、ダサくて意味がわからなかった。
中野駅、浅草駅、市ヶ谷に雑司ヶ谷、私に映画を作りたいって意気込んでいたあの人は、きっと今も行動せずに言葉を宙に浮かべているのだろう。
私は色んな大人を見た。色んな大人に出会った。
新宿駅のゴールデン街、渋谷駅に池袋。
高校生が羨ましくて仕方なかった。私は放課後、遊んだことなんてなかったから、早くお風呂に入って夜の時間を作ることしか娯楽が無かったから、放課後あのごった返したマックでさくらんぼ色のグロスを塗って唇を尖らすなんて小説の中でしか出会わなかった。
見たことない人や会ったことない感覚、それはショックと衝撃と痛みが混ざっていて、幾度となく目眩がした。
ああいう苦しみ、今はもう感じることが出来なくて、それは人との関係に明確な壁を…
透明な隔たりを、オブラートを作れるようになったから。
人との境界線は確実にあった方がいい。
人は人、それが私は分からなかった、だから痛かった。
地元まで来てくれたインターネットの女の子、お化け屋敷に並ぶ最中に高校生だったのに真っ赤に染まった頬でストロングゼロを飲みながら上機嫌に高校を辞めた時の話をしてくれた。


あの子の茶色い目がかっこよくて、シャッターを切った。汗ばんだ髪が前髪を濡らした。
煌めきや青春は心が締め付けられるぐらい美しくて、季節を乗り越えまた出会おうとすると、もう二度と出会えない瞬間を孕んでいる。いつだってそう。
もう一度出会いたい。出会いたい。出会えない。
出会えないから未練がましくシャッターを下ろす。今でも。
私はもう彼女達には出会えない。
彼女達は、もう既にあの頃の私には出会えない。
写真という存在を知ったあの日、富士フィルムのxt10、1年で壊れたあの小さなカメラで初めて世界を知った。
美しい緑の田んぼの海、鮮やかな季節、夏、田舎。
生まれて初めて世界を愛せた。
たんぽぽの綿毛に留まる丸い世界、雫を真っ直ぐに跳ねた花の蕾。
放課後、16時を過ぎると私はカメラを持って学校を飛び出した。
広大な田舎、それしか娯楽がなかったから。
それでも、冬の18時半が1番空が美しいこと、最近ちゃんと空、見てる?
自然が美しくて、それだけでなんだか元気になれた。あの頃の心、今もちゃんと宿っている?


目の悪かった私にとってカメラは、写真はコンタクトで、正しい世界の見方だった。
写真が好き。どんなに弄れても、曲げようとされても、強い言葉を言われても、己の醜さが反映しても、私は写真が好き。生を授けられて、初めてコンタクトをした時の世界の鮮明さに、その解像度のあまりの高さに魂が揺さぶられたあの日からずっとずっとずっと写真が好き。
写真を通じて出会った人達、今はもう皆大人になっちゃったね。
私は覚えてるよ。ずっと、あの時の感覚、忘れられないの。
錦糸町駅から歩いて行った人のマンション、冷たい階段四角いお風呂男物で溢れかえった部屋での撮影、めくるめく変わる電車の風景、新宿湘南ライン、何回も着古したセーラー服。私の学校はブレザーだったのにね。
新宿駅の待ち合わせ警察署、今はもう迷子にならないよ。
いつだって、どんな駅だって、私にとってはもう会えない人達との一瞬の思い出の場所なの。
忘れたと思った?ずっと忘れられない。
全ての撮影の、全ての瞬間が私のパーツで、血肉で、忘れ去って立ち去った人達が羨ましい。強くて、逞しくて羨ましい。

photo りょうたさん


別に、成功体験とかじゃないの。
だけど、やっぱり私はあの頃のあの日々が、ずっと美しくてキラキラしてる。
戻れない事を理解しているから、美しいの。
スカイツリー近くの乗り換えが複雑なあの駅、女子高生ばっか食ってたって、私は偶にしか来られなかったから全然狙われ無かったし、多分興味なかったんだろうけど…。
今は子供まで生まれてどこか遠くに行ったあの人の部屋、マンションを開けたらたくさんの女の子達と出会えたあの部屋、もう二度と帰れない東京の記憶。
この世界ってすごく喜びに溢れていて、沢山の人それぞれの救いがあって、同時に物凄く寂しいね。

photoかちゅーさん


私の記憶もこうやって書かないとどんどん薄れていくの。
私もあなたも、いつか死んで世界から記憶が完全に途切れてしまう。
私が仮に甘えて「会いたいよ」と連絡した時、それは今の貴方じゃなくって、過去のあの瞬間に帰りたいだけだと思うの。
だからもう、連絡しないようにするね。

photoすぽーんさん


最近、沢山写真のことを思い出すの。1年前よりもずっと、来たるべき時にタイミングは訪れると思っていて、全てにはきっとリズムと波がある。
今はきっと、そう言う瞬間。絶対に意味がある。


表紙/ Model、あげちゃん photo、hamさん

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