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【2月13日は日本遺産の日】自然と信仰が息づく『生まれかわりの旅』

はじめに

 羽黒山・月山・湯殿山の3山で構成される出羽三山。この出羽三山における山の自然、そして信仰が、2016年に日本遺産『生まれかわりの旅』としてに登録されました。また、昨年2022年には日本遺産の他のモデルとして重点支援地域にも選定されました。この日本遺産は山形県・鶴岡市・西川町・庄内町で構成されています。

 2月13日は2(にほん)・13(いさん)で日本遺産の日です。日本遺産『自然と信仰が息づく「生まれかわりの旅」~樹齢300年を超える杉並木につつまれた2,446段の石段から始まる出羽三山~』を記念して、2月11日(土)~13日(日)はいでは文化記念館の展示入館料が無料になります。館内には日本遺産にまつわるビデオやフォトが鑑賞できる日本遺産コーナーがあります。ぜひご来館ください。

 本日の記事では、日本遺産『生まれかわりの旅』の元となった、出羽三山の信仰について少し触れていこうと思います。

出羽三山の修験道とは

 修験道は、山へ籠もって厳しい修行を行うことで悟りを得ることを目的とする日本古来の山岳信仰です。修験道の中でも出羽三山の修験道での修行者(山伏)は、罪や穢れのようなものを持った自身を浄化し、清浄な体となって人智を超えた力を得るという、いわゆる精神的な「生まれかわり」を行います。修行で得る人知を超えた力で救民を行います。

それぞれの山の意味

 明治時代初期まで神仏混淆であった出羽三山。現在それぞれ神社の境内となっている羽黒山・月山・湯殿山ですが、それぞれに意味があります。
 羽黒山は現世を意味するお山です。羽黒山の本地仏は聖観世音菩薩(しょうかんぜおんぼさつ)という現世利益の仏で、出羽三山の中でも最も村里に近く、人々の現世利益を叶えるとされています。
 羽黒山では神として出羽郡の産土神(うぶすなかみ:生まれた土地の守護神)である伊氐波神(いではのかみ)や五穀豊穣・商売繁盛を司る神である倉稲魂命(うかのみたまのみこと)が祀られています。(いでは文化記念館の「いでは」はこの伊氐波神からきています。) 羽黒山が「生まれかわりの旅」におけるルートのはじまりの山です。

『秋の峰入り』
山伏の養成を目的に約1週間の山籠もりを中心とし、
擬死再生の「生まれ変わり」の儀礼を現在に残す唯一の修行。
山伏になるにはこの峰入りに参加が必要。

 羽黒山を越えて向かうのは月山です。月山は過去を意味するお山です。月山の本地仏は阿弥陀如来(あみだにょらい)という死後の救済仏で、祖霊が鎮まる山として過去の世を表している山です。
 月山では「黄泉(よみ)」や夜・水をつかさどる月読命(つくよみのみこと)が祀られています。そのため月山の8合目の弥陀ヶ原の「弥陀」は阿弥陀如来からきているのです。また、神が田植えをしたことから「御田ヶ原」とも呼ばれます。
 今年は干支で卯年ですので、月山卯歳御縁年の年です。欽明8年(西暦547年)に月山神がその姿を現したとされたことに由来します。

庄内が一望できる月山

 そして月山を越えて向かうのは湯殿山。湯殿山は未来を意味するお山です。湯殿山の本地仏である大日如来(だいにちにょらい)で、永遠の生命や生産力の象徴です。月山で一度死に、湯殿山で生まれかわるという意味を、「生まれかわりの旅」は持っています。
 また、湯殿山では山を司る大山祇神(おおやまつみのみこと)、国土の神である大己貴命(おおなむもののみこと)、医薬の神である少彦名命(すくなひこなのみこと)を祀っています。湯殿山は昔から出羽三山の奥の院(もっとも神聖な区域)とされ、湯殿山にある湯の湧き出る御神体に触れて、「生まれ変わり」を実感するのです。

湯殿山

三関三渡の行と秋の峰入り

 現在・過去・未来をめぐる「生まれかわりの旅」は、羽黒派修験道では「三関三渡(さんかんさんど)の行」と言います。この三関三渡の行、または生まれかわりの旅は、「西の伊勢参り、東の奥参り」(奥は出羽三山のこと)と言われ、江戸時代に庶民の間で巡礼が広がっていきました。

 「三関三渡の行」では、羽黒山からはじめ、月山を経由し、湯殿山へと向かいます。羽黒山の秋の峰入りの修行で行われる擬死再生の「三関三渡の行」は現在に残る唯一の修行だと言われています。
 秋の峰入りでは、自らを死者とみなして白装束を纏って修行を行います。現世における罪や穢れのようなものを持った自身を浄化し、清浄な体となって人知を超えた力を得るため山を駈けます。そうして得た力で救民を行うのです。

さいごに

 今回は日本遺産「生まれかわりの旅」に注目して、「生まれかわりの旅」とは何か、出羽三山で信仰されている神仏はなにか、ということについての解説がメインの記事となりました。夏~秋は月山・湯殿山が開山時季で、三山の登山が可能です。ぜひ挑戦してみてください。
 羽黒町観光協会(いでは文化記念館内)は山伏修行体験塾を主催しています。いきなり修行に入るのはハードルが高いけれど、少しでも体験してみたい!という方にはおすすめですので、参加してみてはいかがでしょうか。

参考資料・クレジット

『明日のわたしに逢える場所 出羽三山』,出羽三山「生まれかわりの旅」推進協議会(山形県教育庁文化財・生涯学習課)

・日本遺産「生まれかわりの旅」(文化庁)
 構成市町村:山形県・鶴岡市・西川町・庄内町