見出し画像

春らしい陽気。外を歩けば、ほぼ満開の桜と幾度もすれ違う。空の青と、桜の薄ピンクが目に優しい。

しかしながら、子どもたちにとっては、満開の桜よりも、その下に流れる小川に顔を出し始めたタニシやサワガニ、川底の小石の方が、よっぽど重要らしい。

長女はタニシを捕りながらサワガニを探し、次女は小石を向かいの広場から運んできては川底に落とす、という遊びを延々とやっていた。

傍には桜を写真におさめようとする老若男女が、入れ替わり立ち替わりやって来ていたが、子どもたちは全く気に留めない。

タニシ、サワガニ、小石。
これが、そのとき彼女たちの目に映る全部だった。

ようやく朝の散歩が終わり、家に帰ると、さっき朝ごはんを食べたばかりのような気がするのに、と思いながら、また昼ごはんの準備をする。

庭では長女が、さっき川で捕獲してきたタニシたちをプラスチックケースに移している。(サワガニは捕れなかった)
それを次女が触りたくてウズウズ。触らせてもらえないとわかるや、お決まりの大号泣。

泣き喚く次女をなだめながら、どうにかこうにか、昼ごはんへと誘導。とりあえず次女に昼ごはんを食べさせる。長女はまだタニシにかかりきりだ。

てんやわんやの次女昼食を終えると、長女と自分の昼ごはんは後にすることにして、先にベビーカーで寝かしつけ散歩、兼、買い出しに出かけることにした。
長女に、行ってくるね、と声をかけてから、さっきの散歩道とは逆の道をベビーカーを押して行く。

いつものスーパーの傍の公園の桜は7分咲きぐらいだった。先程の満開の桜に比べたら、少々地味な桜だったが、こちらの方が安心して眺めることができた。

最近、桜並木で威風堂々としている満開の桜よりも、ちっぽけな公園や道端に、こっそり立っているような、まだ満開になっていない桜の木に心惹かれる。

そういう桜を見かけるたびに、「いいぞ!がんばれ!」と心の中でエールを送りたくなるのだ。
細い枝先に、ぽつぽつと頼りなげに咲いた小さな花も、膨らみ始めたばかりのつぼみも、「大丈夫、ちゃんと見ているから」と、伝えたくなるのだ。

春は卒業、そして始まりの季節だ。
誰にとっても大変だった今年、色んなことから卒業し、新しい道に踏み出してゆくすべての人にとって、どうか明るい前途が待っていますように。

手早く買い出しを終え、来た道を引き返す。
ベビーカーの中を覗くと、さっきまでキャッキャとはしゃいだ声をあげていた次女の目がとろんとしている。
どうやら寝かしつけは成功だ。

早く帰ろう。帰って長女と二人、ゆっくり昼ごはんを食べよう。そして、新しい学年でどんなことを頑張りたいのか、長女の話をじっくり聞いてみよう。
次女の昼寝の時間はとても貴重なのだ。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?