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欧州の株式投資事情:結局は日本でインデックス投資してるのが無難

日本では、なんだか株式市場がにぎわっているようですね。
下落なんですか?でも、これまで円安の影響で調子よかったんですよね? 

株価って、上がったり下がったりするものだと思うんですが、だとしたら、普通のことが普通におこっている、ってことじゃないんでしょうか。

日本で投資が流行りだして、日本の株式市場が調子よかった年初あたりに、「投資で儲けてFIREして、北欧に移住したい」と書いている人をSNS上で見かけましたが、あ、この人、海外の状況をまったく理解していないな、と思いました。

まぁ、「投資」、「FIRE」、「北欧」などなど、いわゆる流行りのキーワードに踊らされるタイプのひとは、国を問わず結構います。

そもそも、北欧諸国は全体的に、物価も税金もケタ違いに日本より高いのですよ。日本円で小金持ちでも、投資している資金でゆったりFIREなんて、北欧ではまず不可能です。


デンマークでの株式投資

特にデンマークは、個人が株式投資をするのには最悪の環境だと言われています。デンマークにおけるキャピタルゲイン課税は、42% から 59% もあり、これは世界一高いです。

さらに個人投資家にとって最悪なのは、デンマークでは、分配金なしのインデックス・ファンドや ETFを保有していて含み益が生じた場合、それに課税がされます。配当金への課税の話ではありません(インカムゲインには普通にインカム・タックスがかかります)。利確していない(=売っていない)ファンド または ETFの「含み益」への課税です。

デンマークにも、日本の NISA みたいな少額投資制度(株式貯蓄用口座)がありますが、これとて非課税ではなく、17%が課税されます。デンマークにおける普通の投資口座よりも課税率がちょっと低い、というだけです。

さらに、この株式貯蓄用口座には上限があり、2024年時点で 上限は135,900クローネ(円換算で約300万円)に設定されています。ただし、物価の高いデンマークにおいては、135,900クローネという金額は、実質的には日本における300万円の価値はなく、これの7掛け程度の感覚です。そして、これは年間の投資上限額ではなく、累計の上限です。つまり、株式貯蓄用口座の枠内で、過去の全投資を含めた合計が規定の上限に達したら、それ以上は入金できません。

デンマーク政府がこの制度を導入したのはごく最近で、2019年からです。当時は上限が50,000クローネ (100万円程度に換算されますが、実質的には日本の感覚だとざっくり70万円くらい)に設定されていました。投資に熱心なアメリカ人の知人(アメリカの大企業のデンマーク支社に転勤してきた人です)は、赴任当時、毎年この上限まで低税率で投資できるものと誤解しており、それが累計の上限だと知った時は、「冗談かと思った」とあきれ果てていました。

他のヨーロッパ諸国の投資環境

他のヨーロッパ諸国についてはあまり詳しく知らないので、以下は聞きかじりですが、アイルランドやオーストリアでも、含み益に課税されると聞いています(アイルランドは毎年じゃなく、7-8年ごとだったかな?間違ってたらすみません)。

ギリシャとか、あと、欧州の新興国、とくに東ヨーロッパあたりの国は株式投資への課税率が低いと言われていますが、果たしてそこが住みやすいか、というと疑問です。

個人投資家の移住先としてヨーロッパで人気なのは、やはり南欧でしょうね。定年後の移住先としても人気です。天候が良くて物価が安い、というのが大きな要素でしょう。でも、株式投資とはあまり関係ありませんが、南欧は、医療制度や安全面(犯罪率とか)においては、西ヨーロッパの先進諸国や北欧に比べると劣ります。

日本は恵まれている

総合的にみて、日本は恵まれています。それに、海外には、ふるさと納税もNISA や iDeCo もないですよ、当たり前ですが。

地道にインデックス投資でもして、あとは日々の生活で切磋琢磨することで、ほとんどの人はそこそこ安定した暮らしが日本で出来るんではないかと思います。(そんなことない!と言う人は、海外生活で「安定」を獲得・維持するのがいかに難しいかを知らないだけです。)

それに、株式投資ってお金を貯めることが主目的だし、貯めるということは、使うため(あるいは、使う予定または可能性がある)という点を踏まえると、とどのつまりは、自分の生活スタイルや人生設計、ひいては、生活する中で自分が社会とどう関わっていくか、という事にまで関係してくると思うのですよ。

日本における、ここ数年の投資ブームと、最近の株価下落騒動(というか、メディアやインフルエンサーのたんなる煽り)をはるか彼方から傍観していると、かなりの日本人が、自己の「資産額」という極めて小さいバーチャル世界の中で、数字相手にひたすらラット・レースを繰り広げ、不必要に一喜一憂しているようにも見えます。

投資は大事だし、今の日本はいろんな意味で過渡期なのかもしれません。が、待機資金を握りしめて株価指数を凝視し続けるとか、むしろ時間の無駄な気がします。不安に駆られているかたは、そういうのはちょっとしばらく止めてみてはいかがでしょう。

長い人生の中、やれること、やるべきことは、他にも沢山あるはずです。


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