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1回目の緊急事態宣言から、生活者の消費行動はどう変化した? 三井住友カードの調査結果から


フィットネスクラブを中心としたリアル店舗の顧客管理、予約、決済を行うSaaSサービス「hacomono」を提供する弊社。withコロナ、DX(デジタルトランスフォーメーション)時代における店舗ビジネスのネクストスタンダードをつくるという言葉を掲げて、日々チャレンジをしています。このオウンドメディアでは、hacomonoの機能やスタッフの紹介に限らず、リアル店舗に関わるニュース記事やコラムもお届けしていきます。

新型コロナウイルスの感染拡大により、1月8日から2月7日まで、2回目の緊急事態宣言が発令されました。対象地域が拡大され、1月22日には「1か月程度の延長が検討される」といったニュースも出るなど、状況は日々変化し、正解の分からない日々が続いています。

特にリアル店舗ビジネスを展開する事業者にとっては、これまでのような接客や販売をすることが困難な状況が続き、大きな転換を求められている方々が多いと思います。

新たな事業戦略を考えるうえで大切な要素となるのが、生活者の消費行動がどのように変化しているのかを知ること。三井住友カードは12月21日、同社が保有するキャッシュレスデータとアンケート調査などから、新型コロナがもたらす消費行動の変化を分析した内容を発表しました。今回の記事では、その結果の一部をご紹介できればと思います。

リアル消費のゆるやかな上昇傾向が続いた1~11月

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▲決済金額とコロナ感染者数の推移

1~11月における三井住友カードのキャッシュレスデータによると、1回目の緊急事態宣言以降、決済金額は減少。5月25日の解除後、8月以降は昨年並みの水準に戻っています。9月以降は感染者数も増加傾向にありましたが、決済金額も増加しており、同社では「感染者数に左右されない『コロナ慣れ』とも呼べる消費行動が垣間見える」と分析しました。

緊急事態宣言下においては、EC決済とリアル店舗決済に大きな開きがありましたが、9月以降はリアル消費も回帰の傾向にあるようです。一方で、本調査は11月までの結果の紹介となっています。11月27日からは各所で飲食店における営業時間の短縮要請が再開されたこと、観光需要喚起策「Go To トラベル」の一時停止も決定したことから、EC決済とリアル店舗決済の差は12月以降、また広がっていることが考えられます。

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▲クレジットカード決済金額の推移(2019年1月を基準としたときの相対値)

また、2019年1月の金額を基準(100)として決済金額の内訳を分析すると、「EC」は緊急事態宣言が出る4月まで約20前後で推移。しかし、4月以降は20後半となり、10月以降は30を超えました。同社は「決済金額の約3割はEC決済に定着してきた」と分析します。

「旅・移動」は、4月に7まで激減(昨年同月が35)。Go To トラベルの効果で10月には21まで回復しましたが、昨年同月と比べると3分の2程度となっています。

5つのセグメントごとに異なる消費行動がみえた

三井住友カードは、キャッシュレスデータの分析に加えて、マクロミル社によるアンケート調査を掛け合わせ、生活者の意識の分析も行いました。キャッシュレスデータをもとに「家中消費の増減」と「休日おでかけ(買い物)範囲の距離増減」に着目し、アンケート調査の結果も踏まえてセグメントを分けたところ、5つの消費行動が見えてきたといいます。

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▲キャッシュレスデータ(行動)とアンケートデータ(意識)から分類したセグメント

5つに分かれたセグメントの特徴を相対的に比較したものが下記となっています。

従来維持型:今の状態への不自由さは感じておらず、コロナ以前の生活スタイルを維持。緊急事態宣言中はECを積極利用したが、現在はほぼコロナ以前に戻った。

巣ごもり型:感染への不安が強く、巣ごもり気味。新しい生活様式に適応している。旅行などへの願望が強く、ストレスがたまっている。

変化適応型:家中消費は増えているが、映画やエンタメ施設、旅行にも出かけている。利用金額はコロナ以前と同水準に戻ってきている。

倹約型:不要不急な外出も家中での買い物も控えており、ストレスが高い状態。コロナが落ち着いてからも消費は戻っていない。

自己中心型:ステイホームよりも、気が合う人と外出する傾向が強い。コロナ以前の生活スタイルを維持しており、利用金額はコロナ以前水準に回復。

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▲セグメント別の性年代の傾向

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▲セグメント別決済金額(前年同期間比)

各セグメントでは、性別と年代が異なる傾向があるようです。たとえば、「従来維持型」だと男性、「巣ごもり」「変化適応型」は若い年代の女性が多くなっています。

「4~5月」と「7~8月」の決済金額でみると、4~5月の緊急事態宣言下でも落ち込みが少なかった「変化適応型」と「自己中心型」は、7月以降の回復も早く、ほぼ前年と変わらない数字となりました。逆に「巣ごもり型」は、回復傾向が見られていません。

一方で、同社が「巣ごもり型」にインタビュー調査を行ったところ、「家族会議型購買」「ご近所ファンディング」「マイクロストレスケア」など、これまであまり見られない6つの消費行動の変化が見えたといいます。家族会議型購買は、EC購入が増加して「実際の商品が見られない」「店員に相談できない」中で生まれた変化と考えられています。その選択不安解消のため、身近な家族や友人に相談する機会が増えたという声があったようです。

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▲「巣ごもり」型へのインタビューから見えてきた6つの変化

同社では、事業者視点で考えたときに、リアル店舗で担保していた「オススメポイント」「家族説得のポイント」などをWeb上に公開することで、家族内の相談を円滑化し、購買を促進できる可能性があると分析しました。このように、多様化する消費意識に対応すべく、自らの顧客セグメントとインサイトを見極め、対応したサービスを提供することが必要とも指摘しています。2回目の緊急事態宣言により、さらなる消費行動の変化も予想されるため、今後もこまめに顧客ニーズに対応していくことがより求められていくでしょう。

なお、三井住友カードが紹介していキャッシュレスデータとは、同社が発行するクレジットカードのデータを個人と利用店舗が特定されないよう個人情報保護法および関連法を順守し、適切な加工と統計化処理を実施したデータとされています。調査結果の概要や各セグメントの詳細については、プレスリリースからご参照ください。

(画像出典:三井住友カード プレスリリース

文章:庄司智昭