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【旅レポ】 淡いブルーの静寂ブルーズ

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 2021年1月2日、AM5:00。昨日の夜の馬鹿騒ぎが嘘みたいに思える静かな部屋で、突然覚めてしまった目を天井へと向けていた。

『ソファーベッドで寝たのは間違いだったか』と、腰の痛みに後悔をしながらソファーから転げ落ちる。窓から覗く淡いブルーの静寂が、外はマイナスの世界なのだと視覚を通して教えてくれた。

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 2020年最後の日。『年越し○○だ!』と、それぞれがそれぞれの【年越し】や【新年】に想いを馳せる1年の締めくくりの日。僕は22時頃に、夢の中へと落ちた。

 思い返してみても『年越し○○』だと言って夜更かしをしていたのは、結婚していた頃が最後だったような気がする。毎年見ていたテレビ番組も、見てすぐに感想を言える相手が傍に居ない。だから、リアルタイムで見る必要性を感じなくなった。仕事が始まるまでに、軽く見ておけば良いのだと理解したのだ。

・・・とか何とか書こうかなと考えながら静かにしていると、泊まっているトレーラーハウスの扉がガチャっと開く音がした。友人の一人が起き出したのだ。

ぼく「トイレ?」
Y君「トイレ」
ぼく「俺も行く」

 寝起きのガサガサした声で、必要最低限の言葉を淡々と言うだけの会話だった。まだ寝ている二人を起こすまいと、忍足でその場から出ていく。

 外の気温は、窓から見た通りの極寒だった。マイナス7度。普段過ごしている土地ではなかなか味わうことの出来ない気温に、心も大きく震えた。トイレで用を足すと体内の熱が放出され、より寒くなった。「うおおい・・・」なんて二人で小さく声を上げたが、幸いだったのが手洗いの水がほんの少しだけ温かく感じたことだった。

Y君「焚き火の準備しとく?」

 トイレを出てすぐに、昨日使い切らず半分以上も残した焚き火用の炭と薪に火をつけた。外に出しっ放しにしてしまった薪は湿気ってしまい、なかなか火がつかなかったが、待っている間に1杯のコーヒーを淹れて、外の寒さを楽しんだ。

 一口ズズッと啜って、マグカップから口を離し「ほぉー」と息を吐くように声を漏らす。至福のひと時だった。

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Y君「ちょっと回りを見てみようか」

 そういえば周辺探索はしていなかったと、辺りを歩いてみた。早い時間にお酒を飲んで、友人たちとの会話に盛り上がってしまったこともあり、全く見ていなかった景色を撮るべくカメラを片手に、足跡ひとつない雪の絨毯へと踏み込んだ。サク・・・サク・・・と、一歩進むごとに鳴る素敵なメロディを耳に入れながら歩いて行くと、緩やかに流れる川が僕たちを出迎えてくれた。

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Y君「入る?」
友人の問いに「一応まだ生きていたいからやめておく」と僕は答えた。

 よく見たらあっちもこっちも綺麗な景色が広がっている。この景色たちは、早朝だからこそ見せる顔なのだろう。思わず「おぉ〜・・・これなんてセンチメンタル?」なんて言ってしまう。寒さで悴んだはずの指は、何度もシャッターを切ってくれた。

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 数十枚の写真を撮り、満足な気持ちに、そしてホクホク気分になった僕はトレーラーハウスの方へと戻り始める。寝ていた2人もちょうど起き出し、4人でまた焚き火台を囲んだ。

 起きてきた2人の表情を見る限り、頭の上には、吹き出しの中に黒い線をぐちゃぐちゃに書いた漫画的表現が浮かび上がっているのが見えた。・・・まだ眠いよね。

 時刻は7:30を回ろうとしている。空は快晴。次第に体全体を覆っていた寒さも、つま先だけになってきた。

 カメラのホワイトバランスを電球からオートに変更し、焚き火台に向けてシャッターを切っていると、焚き火の火力を増そうとした先輩がゴロゴロと木を動かした勢いで、パチパチと火の粉が散った。

「わあぁああ!!!」
そんな大したことでもないのに絶叫する男たち。ダサすぎて、笑える。

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 あっという間に11時になってしまった。チェックアウトを済ませ、帰り始める。
今年の年始はどこも営業していないようなので、寄り道をするに出来ず、ただ元来た道をなぞって帰るだけだった。

 帰りの車内ではひたすら懐かしい曲をセレクトして聴いていた。
20代後半〜30代前半がめちゃくちゃ聴いていた曲。エルレガーデンから始まり、ロコフランク、Hi-STANDARD、175R、MONGOL800、GOING STEADY、音速ライン、LUNKHEAD。

この時代は日本のロックバンド全盛期だと思い出した。

 もうしばらく聴いていなくとも、カーステレオから流れてくればうろ覚えでも歌えてしまうほど、当時はかなり聴き込んでいたのだろう。学生ノリのように大声で歌った。それがとても楽しかった。

・・・

 シーズンごとに、集まれたら集まってキャンプでもしようかって話になっている。
みんな社会人だし、それぞれの仕事があるからきっと叶わない夢として終わるのは間違いないけど、年に1度ペースで出来たら良いな。次は早くてGWか。

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