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「シュークリーム」 けっち

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Photo by Dani on Unsplash

自分のなかで「シュークリーム」と「シューアイス」を混同していた時期があります。シュークリームといわれて思い浮かべるのはシューアイスのことで、冷たいバニラアイスをシュー生地で覆っているものがシュークリーム。そう思っていました。

べつにシュークリームといわれて「シューアイス」を思い浮かべるからといって生きていくのに不都合なことはまったくなく、シュークリーム食べたいなあと友達が言えば、それは僕のなかでは「アイス」のことだった、でもそれで困ることもなく子ども時代は過ぎていったのでした。

というのも、たぶん母がシューアイスをかってきて、それをシュークリームと呼んでいたからだと思いますし、母にとってもまたシュークリームもシューアイスも、その呼び名が違うからといって生きていくのにまったく不都合なことはなかったのでしょう。

うちではシュークリームを買うことは、ほとんどありませんでした。何度かシューアイスではないシュークリームを子どものときに買って食べた記憶もあります。でもおいしくなかった。なぜならクリームの部分がアイスじゃなかったからです。それくらいシューアイスの「アイス」の美味さがシュークリームに勝っていたことになります。

市販のシュークリームは皮もぶあつく、皮を食べていってぶちあたるクリームは、ちょっとしかなく物足りなかった。だからシュークリームよりシューアイスが断然好きで、そうなってくるとシューアイスこそ僕にとっての本物のシュークリームなので、やはりシューアイスと呼ぶことはないまま、シューアイスこそシュークリームなのでした。

この状況が変わったのは大人になってからです。

ケーキ屋に行くことが劇的に増えたのは妻と暮らしはじめてから。僕自身はそれほど甘いものへのこだわりもなく、シュークリームとシューアイスの区別もあいかわらず曖昧にしていたのですが、ケーキ屋にいくとシュークリームが売っていて、それが一番安い。ケーキが1つ350円以上するとしたら、シュークリームは200円以下で、ケーキによってはシュークリーム2個より高かったりします。なのに、そのシュークリームは僕の知っているあのゴワゴワした分厚い皮のシュークリームとはちがう。注文したらお店の人がクリームをつめてくれたりするのです。それなのにケーキの半額。

ケーキ屋でシュークリームを買ってかえるようになって、もちろん僕も食べるのですが、それはもうおいしかった。シューアイスよりはるかにおいしかった。シューアイスも今でもすきではありますが、シュークリームのクリーム部分の濃厚なカスタードやバニラのかおり、たっぷりの生クリームが口じゅうにいっぱいに広がるあの迫力。そしてゴワゴワではない、パリッパリのシュー生地。

本物のシュークリームはこんなにうまいものなのか……と今ではシュークリームは大好きなおやつのひとつです。たまーに、シューアイスを食べることもありますが、そのときはちょっと複雑な気分。ああ、昔、これ、すごく好きだったよ……とシューアイスにはノスタルジーを感じつつ、やっぱりシュークリームが好きだな、僕は、と思います。今日もありがとうございます。


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