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愛の変化ー小説『四月になれば彼女は』

久しぶりに1日で1冊を読み終えた

川村元気著 『四月になれば彼女は』

半年ぶりのnoteにしては長くなったので
あらすじは割愛します

1.本を読むきっかけ

SNSの広告で15秒ほどの映像が流れた

辛い、苦しい
それでも人は恋をする

それはなぜなんだろう

前提として、本のあらすじや帯にも
「なぜ」という言葉があったら
作中でその問いに触れずに終わることはない

主人公やそれ以外の登場人物が
その問いと向き合い、時には持論を語る

私の抱える不明瞭な悩みに関して
この本には答えが書いてあるかもしれない
大きなヒントが見つかるかもしれない

焦燥に駆られる想いでページを捲った

2.「好き」の温度差

登場人物を客観視しているうちに
長く彷徨っていたわたしの
言葉にできない気持ちの一部が
様々な登場人物の言葉と重なった

「これだけわかり合えていても、妻のことをいま愛しているかどうかわからない。とても大切で、一緒にいるべき人なんだ。けれどもときどき、俺たちの夫婦関係をつないでいるものが、ただのこだわりでしかない気がして、すごく怖くなるんだ」

『四月になれば彼女は』p.141

なぜ大切な人と思えるのに
愛しているとはっきり言えないのだろうか

わたしも最近、恋人のことがわからない
変わらず自分のことを
好きでいてくれているのかわからない

反対に、
好きでいてくれているのかわからない彼を
これから先も変わらず好きだと言えるだろうか

ずっと深い霧の中にいるような心地だった

YouTubeなどのお悩み相談で
多くのカップルがぶつかる壁としてよく聞く
「好き」に温度差が出ること

よく聞く悩みではあるけど
実際に感じるその苦しみには、なかなか耐え難いものがある

とあるバンドの曲にこんなフレーズがあるのを
ご存知だろうか

両思いのはずなのに
片思いをしてるみたいね

バランス/This is LAST

初めて聴いたとき
温度差を感じる側の切ない心情が胸に刺さった

辛い、苦しい
それでも人は恋をする

それはなぜなんだろう


3.今日の愛から、明日の愛

わたしは愛したときに、はじめて愛された。
それはまるで、日食のようでした。
「わたしの愛」と「あなたの愛」が
等しく重なっていたのは、ほんの一瞬。
避けがたく今日の愛から、明日の愛へと変わっていく。
けれどもその一瞬を共有できたふたりだけが、
愛が変わっていくことに寄り添っていけるのだと思う。

『四月なれば彼女は』p.264

かつての恋人・ハルが持つ
儚さと芯の強さが美しい文体で表現されていた
最後の手紙

わたしはここでようやく、解決策の糸口が見えたような気がした

その一瞬を共有できたふたりだけが、
愛が変わっていくことに寄り添っていけるのだと思う

もちろん「寄り添う」ためには
自分だけじゃなくて、ふたりがこのことを心得ておく必要がある


わたしは遠距離の彼と、離れていても
「支えられている」という感覚がお互いを繋いでいた

それでも悩んでしまった
いつもと違う電話越しの声に返信の文章

そこに感じてしまった冷たさを
なかったことにせず、一度伝えるべきだろうか
伝えるならどこのタイミングが良いだろうか

けど、伝えても伝わらなかったら?
そう思うとなかなか前に進めなかった

そこで出会ったこの小説
そしてハルの手紙

彼にも共有したいと思った
たとえ彼に変化が来てなかったとしても
自分の感じたことを言葉にして伝えたい

4.おわり

愛の変化

受け入れ難いけれど
向き合うことでふたりの関係は
これから先もっと強くなるのだろう

世のカップルがこの先壁にぶつかっても
愛の変化に寄り添えるのは彼、彼女だからだと強い関係に気づくためにも
この本を多くの人が手に取ってくれたらいいな
そう思った

ちなみにこの手紙には続きがあり、
残りの3行に滂沱の涙した

その3行は是非
小説の中で触れていただきたい

追記

本書の解説で、あさのあつこさんは述べた

読まない方がいいと思う。
軽やかに生きていたいと望む人は、すてきな恋をしたいと願う人は、すてきな恋をしていると公言できる人は、誰かが愛して、幸せにしてくれると信じている人は、読書は楽しくてためになると口にする人は、この本を読まない方がいいと思う。

「解説・あさのあつこ」より

突き放すような鋭い視点だった。

だが読んでみると分かる
この本は、
悩み苦しむ人だからこそ読む意味がある
悩み苦しむ人にこそ手を差し伸べて
伝えてくれるものがある、と

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