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「虐待の後遺症」をどう科学的に判別するか?

福井大学子どものこころの発達研究センター長であり医師である友田明美さんの研究により、虐待を受けた人の脳MRIの画像から、脳萎縮が見られるという研究結果が出ています。虐待を受けた経験がある1500人の中から「体罰」「暴言」など特定の行為のみを受けた人を抽出し、MRIで脳の画像を撮影して分析し、虐待を受けていない人の脳と比較したところ、脳の特定の部位に「萎縮」や「肥大」といった変形が見られることが分かったそうです。

前頭前野は犯罪抑制力にも関わる部位です。またダメージを受けるとうつ病の一種である気分障害という症状が出てきます」と友田医師は脳へのダメージによる精神的トラブル(虐待の後遺症)が発生することを指摘しています。以下の記事を参照ください。

ここからは、私の独自の見解ですが、脳MRIで子ども時代に虐待を受けていたことを証明をすることは、かなり難しく、通常の病院での脳MRIだけでは、判別が不可能だと思います。

虐待による脳へのダメージは確実にあると思いますが、脳MRIでの脳への萎縮については、個人差も激しく、萎縮しているといっても、わずかなものであり、目視だけでは判別が難しく、統計を取り、健常者の脳と比較して有意差が出るかどうかを検証しなければならないし、形態の違いには、遺伝も含まれるため、虐待など環境要因との因果関係が証明が非常に難しいからです。

厚労省が2018年6月に虐待の後遺症を複雑性PTSDという病気と認めているので、精神科医による複雑性PTSDの診断書が虐待サバイバー(虐待の後遺症)の科学的な証明でいいと私は思います。その複雑性PTSDの診断書によって公費でトラウマ治療が受けられるようにすれば一番いいと考えています。

虐待を子ども時代に受けたかどうかを、児童養護施設の出身か否かで判別することは非常に危険であり、虐待がひどくても施設保護からもれる被害者は沢山いますから、施設の出身の有無で公的支援を決めてしまうと、本当は虐待が酷かったのに発見されず、虐待の後遺症が成人後に重度の被害者が、施設保護からもれたという理由で治療が公費で受けられなくなるからです。

虐待による脳の萎縮の有無が大事なのではない

ここからが、私が主張したい重要な内容となります。逆にいえば、脳が虐待によって萎縮していたとしても、精神的トラブルが少なく、通常の生活に支障が出ていなければ、問題ないわけです。
一方で、MRIで脳の萎縮がみられなくても、虐待の後遺症で、精神的トラブルで苦しんでいる被害者は、治療や支援がいると思います。

これは、発達障害でも同じことが言えて、私も発達障害の診断は下りていますが、特別、私が生活の中で困っていると感じていないため、支援が要らないわけです。

虐待の後遺症でも同じことがいえて、脳の萎縮の有無が大事なのではなく、本人が日々の暮らしの中で「生活障害」が出ていれば、治療や支援がいるのだと思います。
発達障害でも、検査で凹凸がとても激しくても、「生活障害」がでてなくて、本人が社会適応できていれば、治療、支援がいらなくなるのと同じだと思います。また、検査で凹凸がそれほど見られず「発達障害グレーゾーン」と診断された人でも「生活障害」が出ていて本人が困っていれば、治療や支援がいるわけです。


治療が必要で求めている被害者がトラウマ治療が保険対象外であるために、高額治療で治療を受けたくても受けられないことを、まず、解決したいと思います。
虐待サバイバーだからといっても、別に後遺症に困ってないよ、という方まで、強制的に治療させる考えはもっていません。あくまで本人が「生活障害」が日々の暮らしの中で生じており、困っている場合に治療が保険対象内で受けられるようにしていかなければならないと思います。

虐待の後遺症として「精神的トラブル」が激しく「生活障害」が出ている方について、脳の萎縮の有無に拘らず、また児童養護施設の出身の有無に拘らず、精神科医の複雑性PTSD(虐待の後遺症)の診断基準で治療が保険対象内で受けられるように厚労省に呼び掛けていきたいと思います。以下の署名にご賛同をどうぞ宜しくお願い致します。

※虐待の後遺症の典型的な症例については、以下の書籍に詳しくまとめてあります。精神科医の和田秀樹先生の監修・対談付き。


虐待の被害当事者として、社会に虐待問題がなぜ起きるのか?また、大人になって虐待の後遺症(複雑性PTSD、解離性同一性障害、愛着障害など多数の精神障害)に苦しむ当事者が多い実態を世の中に啓発していきます!活動資金として、サポートして頂ければありがたいです!!