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だから、ライターの仕事が好きだ。



今まであまり書いてこなかった仕事のことをたまには書いてみようか、と今日はめずらしくパソコンに向かってnoteを書いている。

文章を書く仕事のここがいいなあ、好きだなあと思うところをひとつ挙げるとするならば。

人生で経験したこと、味わった感情すべてがプラスに働くところだ。

いいことも、わるいことも、望むことも、望まないことも。経験したことすべてがライターとしての糧になってくれるようなところがある。別に、それを直接ネタにするとかコンテンツにするとかそういう意味ではない。苦しみの中で言葉が磨かれ、悲しみの中で視点が増えていく感覚がある。味わった感情すべてが、インタビュイーに、そして読み手に寄り添う力に変わっていく気がする。

だから、心の病になってしまって何もできなかった日々も、不妊治療で思うように働けない日々も、本音を言えばあまりにもつらくてくやしいけど、ブランクではなくライターとしての深みを増すための期間になっていると捉えるようにしている。


20代前半のまだ会社に入ったばかりのころ、ああ、失敗したなあと思う取材がある。正直ひとつやふたつどころではない。数えきれない。はぁ〜申し訳ない。今考えるとまだまだ勉強不足でライターとしての技術も足りなかったし、何より人としての経験が浅すぎた。今もまだ取材は得意とは言えないけれど、今ならもうすこしは、苦労を重ねたあの人の本音に迫れるかもしれない。あのころより多少は、わたしも近い経験をしたから。

そういえばメンタルクリニックの最後の通院日に、主治医に「望月さんはあんまり幸せになりすぎないほうがいいんじゃない~?その方がいろいろ書けそうだし」と言われて、ふたりで笑った。いやだいやだ。ほんっとうに勘弁してほしい。わたしは幸せになりたい。

でも、どんな苦しい状況になっても、それを書く原動力にすればいい、ライターとしての深みに変えてゆけばいいのだとわかったことは、あまりに頼もしい発見だった。これから40代、50代と年を取っていく中で、できることならずっと平穏無事に生きていきたいけれど、やっぱり避けて通れない苦難もあるんだろう。いやだけど!そのときはまた何度でもこのことを思い出そうと思う。

ほんとうは、心の病も、不妊治療も、たび重なる流産も、それからここにはまだ書いていないようなつらいできごとも、経験したくなかった。したくなかったけれど、してしまったから、ならばこれを糧にするしかない。ライターは、それができる仕事でもあると思う。一生腕を磨き続けられる仕事なんだと思う。だから、わたしはライターの仕事が好きだ。

おわり

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