【熊本で人と出会う旅】 - 2024年4月
移住先探しの旅として奈良を巡ってみた前回に引き続き、今回は熊本を訪れてみた。
これは生き方を探して仙人修行に励む人間の話…。
~連れ添いのさば(人)~
暮らしを感じるをテーマに巡っていたが、今回は連れ添いのさばのお家におじゃまさせてもらえるということで、ありがたく泊まらせてもらった。
関西方面から新幹線で移動すること三時間半。熊本に到着。さばの母に駅まで車で迎えに来てもらいお家へ。父、母、さば、弟の四人家族で、弟君のお部屋に泊めさせてもらえることに。よそ者と拒まれることなく迎えてもらえて感謝。
4月に入り、桜が見頃を迎えていた。みんなで近くの公園にお花見に。桜吹雪が舞う中、公園でグランドゴルフをするおじぃおばぁを眺めながらのいい時間。お湯を沸かしてラーメンを作る。やっぱり外で食べるごはんは格別だ。
高天原(たかまがはら)神話の発祥の神宮とされる幣立神宮を訪れた。山奥の澄んだ空気と厳かな佇まいのある場所でした。境内は見上げるような階段を登っていく。そこには樹齢一万五千年というご神木のヒノキが祭られている。屋久島の縄文杉より歴史が深いのかと思うと身が震える。
奥には散策できる道もあり、なかなか満足度の高い充実した時間を過ごせた。
帰り道に通潤橋に立ち寄った。近世最大級の石造アーチ水路橋であり、石造アーチ橋の中で唯一“放水”ができる橋らしい。放水のタイミングは逃したが、立派な橋だなと感じた。吹き上げる水はさぞ圧巻なのだろう。そこにあったくまモンのモニュメントが、木や葉の自然物のみで作られていて面白かった。
九州は温泉が豊かでいい。どこに行っても温泉郷があるように思う。今回は日奈久温泉の金波楼へ連れてきてもらった。日奈久は熊本県最古の温泉地らしい。金波楼は創業100年を越える木造三階建ての建物で文化財にもなっている。雰囲気漂う中の極楽の温泉気分。この日は晩白柚風呂だった。浴槽に晩白柚がぷかぷかと浮いている。晩白柚はスイカ大の柑橘で、熊本八代の特産になっている。なかなかの存在感。外風呂もまた気持ちがいい。雨がざぶざぶ降ってきたが、熱い湯が気持ちいいので構わず入った。
放浪の俳人種田山頭火も訪れ、「温泉はよい、ほんたうによい、ここは山もよし海もよし、出来ることなら滞在したいのだが、-いや一生動きたくないのだが」という歌を残していったようだ。本当にそう思う。
〜ニオーサンと夜のまち〜
夜には熊本のまちなかから徒歩5分程のゲストハウスⅡ0Ⅲ(ニオーサン)へ。イベント的にコーヒータイムを開催してるようでおじゃまさせてもらった。こだわりの珈琲とクラフトジンを置いていて、おすすめのジンをいただいた。やっぱり観光に困ったら、ゲストハウスのオーナーさんと話をするのがいちばんいい。興味をそそられるこぼれ話もぽろぽろと出てくる。その後はさばと弟君と三人で訪れていたので、夜のまちの遊び方を教えてあげようと言いながら、飲み歩いたわけでもないけど、〆のラーメンを食べに行く。夜のラーメンは最高だな。弟君もご満悦な様子でよかった。
〜わざわざ来たいと思える場所〜
翌日、甲佐を訪れることにした。自然豊かでありながら、過ごしやすそうな地域だ。バスに揺られて、まず訪れたのはやまぼうしの樹のさびカフェ。ここは築140年の農家の家をリノベーションしたことがきっかけで始まったらしい。中の空間は広々としていて、心地よい素敵な場所。さびカフェのメニューはやさしい定食のみ。それもまたいい。身も心もあったまるような時間を過ごせた。本館の向かいの南館には雑貨屋さんなどが並んでいた。わざわざ来ないと来れない場所だけれど、わざわざ来たいと思える場所だった。
次はヨリドコロえんがわへ。一階が雑貨屋で奥と二階にカフェスペースがある。古民家の佇まいに学校の椅子を使っていたり、レトロな趣を感じられる。オーナーさんと近所の方か常連さんかはわからないけど、楽しげに話している声が聞こえてくるのがなんだか心地よかった。
さんぽの道中にパンを食べて歩きたいなとNIPPONIA甲佐にあるパン屋さんの古田パンへ。川沿いに立つ宿NIPPONIAの雰囲気がいい。古田パンにはフォカッチャなどいくつかあり、どれも美味しそうだった。
〜築100年の古民家と自給自足の暮らし〜
甲佐の町から歩いて、本日のお宿の竜野園藝まで。山の方へ歩くこと1時間弱の道のり。甲佐に来た目的は竜野園藝があったからだ。山の方でなんだか面白そうな人が面白そうな暮らしをしているのを見つけてやってきた。その嗅覚は当たりだったと思う。築100年の古民家と自給自足の暮らし。家主の玄武さん。ただならぬ雰囲気を纏う、でも人当たりの良さが伝わる。着いて一息つくなり、「どういうことに興味があるのかな、今晩のサラダを採りに行こうか」と声を掛けてくれた。おぉ!行きます!と返す。畑で野菜を育ててるのかなと思いながら向かっていると、綺麗な小川に到着。そこはクレソンが自生している場所だった。「クレソンが今晩のサラダだよ、食べたい分だけ摘みな」と籠とハサミを受け取って、摘ませてもらった。自分のご飯を自分で収穫する楽しさを知れた。「お酒を飲む人には、囲炉裏で焼いてちびちびお酒を飲むのがいいけど、お酒を呑まないなら鍋にしようか」と鮭がたっぷりの石狩鍋をふるまってくれた。「家のお風呂もあるけど、外でドラム缶風呂にしようか?」とドラム缶の下に薪をくべて、火を焚いてくれた。これがまた気持ちいい。この日は曇っていたので、満点の星空とは言えなかったけど、そのイメージも膨らむ。自給自足の古民家宿の楽しみが詰め込まれていた。
玄武さんとお話をさせてもらっていると、尺八と、2㍍あるかという大きな笛を持ち出してきた。オーストラリアの部族のものらしい。貸切の独奏会が始まる。尺八は虚無僧の人に教わっているらしい。綺麗な音色だ。オーストラリアの笛はその大きさの存在感を超えるような音の迫力だった。家中どころか山中に響き渡っていたんじゃないかと思う。笛の音を聴かせてもらった後には、熊本のおすすめの場所はありますか?なんて聞いていると、熊本県の観光PR動画を見せてくれた。へぇ〜と観ていると最後にはしっかり竜野園藝の紹介で玄武さんが出演していて、なるほどこれを見せたかったのかと納得。夜が更けてくると、宮崎から玄武さんの友達が遊びに来ると「今日はどんな夜になるかな」なんて言って笑っていた。
ずっと楽しげにしていてくれるのが良かった。色んな人に会いに行って、話をしてもらってきたけど、楽しそうに話している人と一緒にお話しできるのがいちばんいい。「家作るのとかに興味あるのなら、夏休みくらいに小屋づくりワークショップやろうよ」とも言ってくれた。めちゃくちゃ楽しそうだ。興味ある人いれば一緒に企画から始めよ~!ぼくは夏に休みをうまく作れるかどうかと悩みどころではあるのだけれど、、。でも、おかげさまで楽しみが増えた!
翌朝、さばの両親に迎えに来てもらい甲佐でお昼ご飯に欒時へ。さば一家の家族旅行に混ぜてもらった感じで光栄でした。ゆったりお昼ご飯を食べ、阿蘇薬草園でお茶を買い、阿蘇神社へお参りし、草千里を望み、コストコに寄って、夜は家でラム焼肉といういい一日になった。
~自然の中で眠るのは気持ちがいい~
さばの父が朝から釣りに出かけるということでついていかせてもらうことに。いつも行くという目的の釣りスポット近くのキャンプ場白岩戸公園でぼくとさばは降ろしてもらった。綺麗な川辺でなかなか気持ちのいい場所だった。早朝の出発だったので眠く、着くなりシートを広げてお昼寝。(まだ朝だけど、)
ぱらぱらと雨が降ってきたようだったけど、それ以上に眠かったので気にせず睡眠。ひと眠りした後で、豚汁でも飲もうとしたところで、水をこぼしてしまうという事態に。持ってきた貴重な飲料水を失い途方に暮れてまた横になる。ただ、寝に来たという感じだったけど、自然の中で眠るのは気持ちがいい。いい過ごし方ができた。また雨が降ろうかという頃に、さばの父が迎えに来てくれて、帰宅の途についた。
~空想的であり現実的~
熊本と言えば、その界隈では有名な三角のエコビレッジサイハテ。訪れてみることにした。というのも、サイハテのユウキさんに会いたかったから。なぜだか、会う人に「サイハテのユウキくんに似ているね~」と度々言われてきたのだ。話す間と雰囲気が似ているんだと。そして、苗字がどちらもサカイという。その念願叶って会うことができた。まぁ似ているとは思わないけど、きっとぼくの数歩前を歩いている人なんだなと思った。たくさん話をしてくれて、サイハテの村づくりの話。ヒッピーで過ごした20代、ヒッピーと社会を繋ぐソーシャルヒッピーに転職した30代、そして今、40代ではスタートアップヒッピーを始めるのだと。空想的であり現実的であるような話の膨らみが面白かった。どうやら「お好きにどうぞ」で作ってきたサイハテの村づくりは終わりを迎え、また新たな名称とコンセプトで再出発する転換期なのだそう。そして、それとは別でユウキさんが進めているもので、お金が消えた世界をつくっちゃう「タダの箱庭プロジェクト」の話をしてくれた。この世界は「市場規範」と「社会規範」で動いていて、ふたつの異なる世界に生きているという事を理解しようというものらしい。そして、書店では買えないギフトでのみ手にできるタダの箱庭の本を手渡してくれた。世界観に共感する人にこの本を回していく。なかなかのボリュームで読みごたえがあるので、十分に咀嚼してから次に回したいのだけど、興味がある人がいれば手渡したいので、ぜひ!
~熊本での旅を終えて~
この熊本での旅は人と出会う旅になったように思う。キーパーソンに出会えた旅と言えるかもしれない。連れ添いのさばのお家におじゃまさせてもらい家族の輪に混ぜてもらえたことは嬉しかったし、ゲストハウスや古民家宿、エコビレッジの方々からはそれぞれお話を聴かせてもらえて、なにかエネルギーのようなものも受け取れた気がする。熊本で出会った方からはなんだか強いパワーのような熱さを感じた。奈良を巡った時には村の人たちの繋がりや結束力のような暖かさを感じた。これは県民性が滲み出るのかなんなのか。興味深い感覚を覚えた。次の旅への足掛かりを得ることができたし、また会いたいという人ができたのも嬉しい。熊本との関係性も少し深まり、自分の幅みたいなものがまた広げられた気がする。
旅の意義は自分の心の欠片みたいなものを訪れた場所や出会った人に残すことにあるのかもしれない。その心の欠片の在る所に拠り所が出来ているようにも思う。
次は別府に向かおうと思う。
続く。
この記事が参加している募集
よければサポートをお願いします。おかげさまで今日も僕は生きていけます。 代わりに僕にはなにができるでしょうか?