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(26)会社の老化は止められない

細分化の流れは止められない
部門や階層は

「手段」

なのに

組織の箱の数の増殖も階層の数も不可逆プロセスである。「増やすのは簡単でも減らすのは難しい」という心理的な不可逆性に加えて、一度縄張りができるとそこの中での最適化を図ろうとする縄張り意識もこの不可逆性に拍車をかける。
さらにいえば、

「手段の目的化」

という不可逆性も追い討ちをかけるだろう。
そもそもは、組織全体のミッションを達成しやすくするために機能を専門文化させ、組織に部門や階層が誕生したはず。
つまり本来は「手段」だったのが、縄張り意識と組み合わさって「自分の箱や階層の維持」「部分最適化」という「目的」になってしまうもの。


「オレは聞いていない」が意味すること
「ほうれんそう」教に毒された管理職からよう聞かれるセリフが「オレは聞いていない」である。

これも老化した組織に見られる典型的な症状と言える。

このセリフがどういう場面で発せられるかを考えてみよう。
・権限上は「オレ」が聞いておくべきところなのに、
・すでに別のルートで実行されてしまっている。

ときに発せられるセルフだろう。要するに組織の「本来のチャネル」が機能せずにインフォーマルのチャネルが機能してしまったということ。
これは中身を重視する人と形式を重視する人との違い。
内容よりも中身を重視するのは老化現象のなせる技で、なおかつ、なぜ連絡が来ないかといえば、「言っても価値がないから」である可能性が高い。

「ブランド力を高めれば社員の依存心は増す」

集まるのは

「ブランドに惹かれた人材」

会社のブランドの重要性については、いまさら言うまでもない。
だが、ブランド力を高めることが「会社の老化」に貢献してしまっていることに気づいている人は意外に少ない。
ブランドを築く行為そのものは間違いなく不可逆プロセスである。
ブランドが確立した会社は「優秀な人材」を多く集められる力を有しながら実際にその会社に集まってくるのは当然のことながら、「ブランドに惹かれた人材」である。ここにブランドのジレンマがある。


「物売りとソリューションビジネス」
基本的なところでの価値観の相違があり、ソリューションビジネスが成長するにつれてどのビジネスでも一つの大きな壁に突き当たる。それは自社製品を売りつけるかということ。

物売りは基本的に売り上げを最大化することを考えるから、たとえ他社製品の方が顧客ニーズを満たすと分かっていてもそれを基本的にできないが、ソリューション売り、あるいは問題解決型の営業は理想的にいうならば、純粋に顧客視点での最適化を考えるため、必要であればあえて他社製品を勧めることをオプションとして持っていなければならない。
二つのパラダイムの間には根本的な価値観の相違があり、会社の中で意思決定する上での大きな阻害要因となる。

ソリューションは「目的」である。

これまで製品という「手段」を売ってきたにすぎない。
それを上位の「目的」で商売をやろうとすること自体が自然の動きに逆らっている。
この流れを成功させるためには、その間にある断絶を超えなければならない。
さらに、部分→全体という逆行も求められる。
製品というのは顧客課題の一部を解決するだけであるのに対して、ソリューションは特定の製品だけにこだわらずに総合的に顧客の課題を解決するスタンスでなければならない。

「考える社員、考える組織」
老化に拍車をかける要因の一つは「思考停止」である。
自分を客観的に見られなくなり、手段が目的化し、部分最適に陥り、表面事象だけに目を奪われる。
思考停止すれば老化が進み、老化が進めばさらに思考停止するという悪循環に陥る。
逆にいえば「考える」ことによって老化の速度を抑制することができる。

「なぜ?」

によって目的を明確化して方向性を揃えたり、混沌とした情報を分類・整理したり、知識を体系立ててまとめたりすることに老化を遅らせる効果がある。


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