見出し画像

空白を覗く

「芸術」って何だろう。

ヨーゼフ・ボイスは「すべての人間は芸術家である」と述べた。つまり彼曰く、私たち人間はただ生きているだけで"何か"を創造しているらしい。

全く理解できないわけではない。

確かに、私たちはただ生きているだけでも、人や動物、その他あらゆるモノと関係性を構築し、社会を彫刻している。つまり全ての人間は何かとの関係性とそこから生まれるストーリーを有している。それはまさしく社会を創造する者であり、芸術家とも表現できるのかもしれない。

ただ、ヨーゼフ・ボイスが伝えたいことが本当にこのような解釈であっているのかはわからない。というのも、私は彼の著書を読んだことがあるわけではないからだ。そんな浅い知識で文を書くなと言われるかもしれないが、私は敢えて、”よく知らないから”今回彼の言葉をテーマにした。

「すべての人間は芸術家である。」

ヨーゼフ・ボイスがこの一言にどんな意味を込めたのかはわからない。上記した私の解釈には何の根拠もない。しかし、そもそも彼の本を読んだり、彼と話したりしても完全に彼が考えていることを理解し説明できる人はいるのだろうか。

私はいないと思う。

言葉という非常に限られた媒体で人間の感覚や価値観は表現し尽くせないからである。だから、創造者の想いを正しく理解しようとすることは大して重要なことではないと思う。

ここで最初の問いに立ち返る。

「芸術」とは何か。

その答えは制限である。と私は思う。

私たち人間が持つ感覚、感情、価値観、思考それらを100%他人に伝えることはできない。しかし、文や絵、楽器、踊りなど媒体を制限することでその一部を表現しよう試みることが芸術であると思う。
そして受け手が、制限によって生まれた空白を"勝手"に解釈することで生まれる新たな解釈もまた芸術であると思う。

つまり、私たちは常に受け手であり作り手である。自ら空白を作り、誰かの空白を覗くことで創造の連鎖を起こしているのが人間だ。そういう意味では、今私はヨーゼフ・ボイスの空白を覗いている「芸術家」なのかもしれない。

この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?