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[主観的考察] エンジニアとしてレース現場で働ける職場のまとめ (国内編)

こんにちは、ドイツレースチームで働く山下です。
現在は海外にいますが、数年前まで僕はSuperGT, SuperFormulaなど国内レースを中心に働いていました。たまに質問を受けるので国内レース現場で働くチャンスがある会社をまとめました。

この記事では、僕の友達がいる会社を中心に主観を混ぜて紹介します 笑
レース業界のエンジニアを目指している学生さん、レース業界に興味がある方の参考になれば嬉しいです。

(1) メーカー/チューナ系

(1-1) Honda HRD Sakura

日本モータースポーツの代名詞で説明不要だとは思いますが一応紹介します。F1, MotoGP, SuperGT, SuperFormulaなど国内外のレースをサポートしています。国内でレースに携わる仕事としては設備面、待遇面はトップクラスです。ただし、レース部門のあるさくら市には本当に何もありません。宇都宮まで車で1時間以上かかります。HRD Sakuraに移動となった知り合いは”都落ち”と嘆いてました 笑

たまにモータースポーツ部門の中途採用を行っています。F1は2021年末の撤退を発表してしまいましたので暫くはないかもしれません・・・

(1-2) M-tec

国内レース車両における開発初期はHondaが仕様を検討、設計します。但しHonda系車両のエンジンチューニングを含めて最終的なレース仕様に落とし込むのはM-tecの担当です。エンジンメンテナンス、エンジン系のデータ解析もレース現場で行います。SuperGTやSuperFomrulaの現場にはHonda本社のメンバーより多くのM-tecメンバーがいます。レースが好きで個性豊かな人が多いです。僕がピットを覗きに行くとお菓子をくれるマネージャさんがいます ww
レース関係の募集は一般的な転職サイトで募集している事は稀ですが、M-tecはリクナビ経由で求人が出ていることもあります。

(1-3) NISMO

日産系はモータースポーツ活動の大部分を子会社のNISMOに移管しています。ちなみに多くの欧州ワークス系も同じようにレース部門を子会社化しています(本社直下でF1に参戦するHondaが異色ということです)。故に日産系のレース活動の99%はNISMO経由です。
唯一の例外は2015年ルマン用に開発されたLMP1車両です。アメリカの会社に委託されており、あるNISMOエンジニアは専門誌のオートスポーツで進捗を知ったと笑ってました。そのFFレイアウトを採用したLMP1車両は・・・苦笑
でも、LMP2ルマン活動はNISMOがサポートしており大活躍しています。

建屋は綺麗で車両の展示ギャラリーが併設されています。社員用の駐車場には電気充電スタンドが設置されています。電気自動車のLEAFで毎朝2時間以上かけて通勤しているエンジン大好きなマネージャさんがいます。

(1-4) TRD

最近のレース活動ではToyota Gazoo Racingのブランドを全面に押し出していますので影が薄くなった印象ですが、僕が日本で働いていた時は、国内レースの実働部隊はTRDでした。実はTRDは株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント(旧トヨタテクノクラフト)のレース部門です。会社自体はアフターパーツ、救急車など色んな開発をしています。非常に大きなショッピングモールに併設されています。場所も新横浜駅から近く、Quality of Lifeは高そうです 笑
3大メーカの中ではトヨタ系が一番落ち着いていて常識人が多いイメージがあります 笑

(1-5) ケン・マツウラレーシングサービス

トヨタ系のレースエンジンのメンテナンス、市販車の先行開発サポートを行っている企業です。SuperFormulaで採用されているオーバーテイクシステムはケン・マツウラレーシングが供給する燃料リストリクターが無いと成立しません。

(2) サプライヤ

(2-1)株式会社ルマン

F3ダラーラ製シャシ、コスワース部品などレース部品の供給及びサポートを行っている会社です。本場欧州と日本レース業界を繋ぐ商社のようなイメージです。一部エンジニアがレース現場をサポートしています。知人が入社しましたが、羨ましいことにイギリス出張に行けるみたいです。

(2-2) ボッシュエンジニアリング株式会社

SuperGT500クラスの共通パーツサプライヤであるボッシュ部品をサポートする会社です。エンジンECU(コンピュータ)を含めた包括サプライヤになり、SuperGT現場には毎レーススタッフが行き、チームをサポートします。立場的には上述のルマンに似ています。なんと横浜の観光地のみなとみらいにオフィスがあります。

(2-3) 株式会社ジーエーティー

僕はレース車両の電装設計を担当していたので良くお世話になった会社です。ワイヤーハーネス (車両のセンサやECUを繋ぐ配線)を設計、制作する会社です。レース車両の場合、コネクタはMIL規格という軍事用コネクタが採用されることが多いです(下図)。頑丈で取り外しも容易でメンテナンスに向いておりレース車両には最適です。しかし、高価で高いものは単価が1万円とかします 笑

(2-4) 株式会社 エンドレスアドバンス

アフターパーツで有名です。ブレーキパットを中心にレースチームをサポートするために担当者がSuperGTのレース現場にいます。僕はレース用ABSのチューニングする際にブレーキについて色々教えてもらいました。

(2-5) タイヤ系サプライヤ (ブリジストン、ミシュラン、ヨコハマ etc.)

SuperGTには各メーカがトランスポンダーで乗り込んでいます。常にレースドライバー及びチームエンジニアと情報交換しています。モータースポーツにおいてタイヤの重要性は非常に大きいです。僕の専門の電装システム系はラップタイムに直結しない仕事も多いです。タイヤのように自分の成果がラップタイムに直結するとやり甲斐は大きいのかなと思います。

(2-6) 童夢

日本を代表するシャシーコンストラクターです。FIA F4やGT300マザーシャシの設計も担当しています。SGT300クラスチームのサポートも行っています。2014年にトヨタ自動車に売却した風洞施設である風流舎を2019年に取り戻して稼働を再開しています。

(3) レースチーム

レース現場で働きたいのはレースチームが一番です。興味がある方は各チームのホームページの連絡先に直接コンタクトするのをお勧めします。僕は大学生の頃にこの方法で車両テストに帯同させてもらったり、エンジニアの方に現場での仕事内容を教えてもらったりしていました。やる気があると結構優しく対応してくれる人もいます。興味ある方はSuperGT, SuperFormulaのホームページの参戦チームリストを参考に自分で調べてみてください。

(4) その他

(4-1) オートテクニックジャパン (ATJ)

SuperGTなどのレースプロジェクトでホンダ車両の開発、運営をサポートしています。エンジニアをメーカ、レースチームに派遣している企業です。本当に色んな場所でATJの人が増えてきており、エンジン開発の現場に居たATJの担当者に挨拶したら、過去にレースチームで一緒に働いた知人だったことがありました 笑

(5) まとめ

ここまでレース業界で働ける会社を紹介してきました。本当にごく一部の会社ですが新たな発見があれば嬉しいです。また一括りにエンジニアと言っても、レースチーム、チューナ、自動車メーカでは業務内容が大きく異なります。業界で働いていないと分かりづらいので下記の記事にまとめました。よろしければ参考にしてください。

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