生成AIはどのようなインパクトをもたらすのか?
生成AIが目覚ましい技術革新を遂げ、社会に浸透し、社会にどのような変化をもたらすのか、とても興味深いところです。
画像生成AIの技術進歩も留まることを知らず、例えば、アニメーションの生成(というかコピーに近い?)もできてしまうようです。
このように、誰もが簡単に自分の求める画像を生成できるようになると、自分の身のまわりで一体どのような変化が起きるのか。
アートの歴史を振り返ってみると、そのヒントがありそうです。
今では当たり前の「写真」ですが、一瞬の現実を切り取るこの技術が誕生した当時は、社会に対して非常に大きなインパクトを与えたようです。特に、アートに与えた影響は大きく、ひとつのアートスタイルを誕生させるきっかけとなりました。その経緯について、触れてみたいと思います。
写真の誕生
1837年、ルイ・ダゲールが発明したダゲレオタイプという写真技術をきっかけに、世の中に写真が出回るようになりました。アート界にも影響をもたらし、表現技法のひとつとして写真を受け入れる者もいれば、「価値のないものだ」と反対する者もいました。
また、写真はアートの民主化も引き起こしました。それまでは、上流階級のみがアートを鑑賞していましたが、一般市民でも安価に楽しめるアートとして写真が世に広まっていきました。
写真誕生時のアートスタイル
写真が誕生する19世紀頃は、写実主義 というアートスタイルが主流でした。写実主義 とは、現実世界をアートによって忠実に再現しようとする画風であり、現実世界の複雑さや細かさを表現する技法として用いられていました。また、写実主義に至るまでに、均衡・調和・形式的な美を追求する新古典主義や、個人の感情・自然への感動を情熱的かつ力強く表現するロマン主義がアートスタイルとして台頭していました。
写真が生み出した新しいアートスタイル
写真の誕生により、アーティストたちは「現実とは何か」に対する認識を改め、現実の本質は、"constant movement" = "絶えず動いていること" だと言います。そうして、これまでヨーロッパのアートスタイルの主流であった写実主義の範疇を超えた "印象派" というアートスタイルが誕生します。"印象派" の画家たちは、写真では表現できない要素として、色彩、光、動きを追求したのです。
今回は、写真の誕生がアートスタイルに与えた影響について触れてみました。写真が与えたインパクトを大まかに整理すると、以下のようになります。
写真が誕生する以前は、現実世界の複雑さやきめ細かさを忠実に表現するアートスタイルである "写実主義" がアートの主流であった
写真の誕生により、アーティストたちは現実世界に対する認識を改め、現実の本質は "絶えず動いていること" だと捉えた
その結果、写真では表現できない色彩、光、動きといった要素の表現を追求する "印象派" というアートスタイルが誕生した
手軽に誰でも高品質な画像をつくることができる画像生成AIという技術は、社会はもちろんのこと、アート界にも影響を及ぼしていくと考えられます。写真がアートに与えた影響をヒントにすると、画像生成AIが持っていない要素を追求するようなアートスタイルが新たに誕生するのかもしれません。