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イギリス NHS(国民健康サービス)ってどう?

よく日本の友達に聞かれます。
イギリスのNHS(国民健康サービス)ってどう?怖い話も聞くけど… と。

結論から言えば、賛否両論。
100人に意見を聞けば、100人それぞれ本人やその家族が色々な経験があるでしょうから、様々な意見が出てくると思います。

ネガティブな話からすると、友達のメアリーがつい最近、2か月ぐらい具合が悪くて、処方された薬を飲んでも一向に良くならないとGP(病院の専門医に診てもらう前に行かなければいけない医療の窓口)に再度相談しに行ったところ、前回と違うお医者さんが「あぁ~、前回のドクターが間違った処方箋をだしてますね。今回は正しいのですからもう大丈夫だと思いますよ。スマイル」とあっさり言われたそうです。ごめんなさいもなければ、今後気を付けますでもない。日本人的には「はっ?!!!」ですけどね。

それから、隣に住んでいたリチャードさんが入院した時、翌日9:00に手術があるのだけど、身内で彼の着替え等をもってきてくれる人がみつからないので、手術が始まる前にまとめて用意してある荷物をもってきてくれないかとお願いされたことがあります。8:00ぐらいに病院に行ってリチャードさんの病室を見つけ、「あぁ、リチャードさん。手術うまくいくといいわね。」と荷物を手渡すと、「実は今朝起きたら、今まで診てくれてたドクターじゃないドクターが手術前に色々チェックした結果、手術はしないで『治療で治す』という結論に至ったようで、急遽手術をしないことになったんだ。」とまだ痛みのある体をさするようにしながら話してくれて、私は「手術がなくなってよかったね。」と言えばいいものなのか「これからその痛みと薬を飲みながら治るまで長く付き合っていかないといけなのは残念だ。」と言ったらいいのかわからなくて困ったという経験もあります。

私の家は市立病院の近くにあるので、近所に看護婦、お医者さん、薬剤師等が多く住んでいます。彼らから内部の話を聞くと、正直、同情の気持ちしか沸いてこないぐらい、職場環境・条件はかなり過酷なものがあるようです。今年は看護婦やジュニアドクター(研修医)のお給料の値上げと仕事環境の改善と向上を求めてストライキをおこしていました。

イギリスの医大をでた後、研修医(ジュニアドクター)として数年働かないとコンサルタント(主治医にあたるのかな?)にはなれないのですが、厳しいシフトや難しい仕事内容にかかわらず、ジュニアドクターのお給料が9時-5時、週末ありの一般企業の新入社員と同じかそれ以下のようなお給料しかもらえないというのが現状のようです。それが嫌で、英語圏にあってイギリスよりもジュニアドクターへの待遇が良いオーストラリアの病院に大学期間中に留学し、そのままオーストラリアでジュニアドクターの職を探し、コンサルタントの職を得れるまでの経験を積んだ後イギリスに戻ってくるヤングドクターが年々増えているようです。

「イギリスは生きるか死ぬかにならないとスピードアップしてくれない」という印象はあります。患者の問題の大きさにより優先順位をつけないといけないという考えからなのでしょう。そこは全世界的に同じかもしれませんが。救急病院に行っても、着た順に見てもらうわけではなく、症状が深刻な人から見てもらえるとなりますので、死に至らない外傷の患者さんたちは救急病院で待たされる確率が高くなります。血がついた足で待合室で待っている若者(スポーツ中の事故と思われる)が長時間待たされているのを見たことがあります。イギリスは2時間から4時間とか平気で待たされます。

ポジティブな話をしましょう。
私の経験でNHSってすばらしいなと思ったことも、もちろんあります!

あくまで私の知っている範囲の話ですが、癌を患ってしまっている、癌で亡くなってしまったという私の友人・知人、その家族は、NHSには感謝の気持ちしかないと言っています。ほとんどの治療が無料で行われ、コンサルタントにも看護婦にも本当によくしてもらったという話を聞いています。みんな口を揃えていいます。「NHSには感謝している。」と。

娘が5歳の時に目の検査を受けたところ遠視であることがわかり、メガネをかけないといけなくなりました。メガネを一般の眼鏡屋さんで調達するのですが、検査、メガネのフレームそしてレンズもただ。その後の毎年の定期検査も無料(17歳までかな?)。そして定期検査後に毎回新しい眼鏡をいただいて帰ってきます。すごくありがたかったです。18歳になったらそれからはすべて有料となるので、来年以降、もしメガネを壊したりなくしたりした時に、NHSが一体いくら自分のために娘のために払っていてくれたんだとわかるようになると思います。

それから、子供のうちは歯医者は検査も治療も無料でお願いできます。

NHSの経営も大変なようで、いろんな問題が生じるたびに将来はプライベート化すべきではという声も上がってきているようです。貧富の格差の激しいイギリス社会。NHSのプライベート化によって起こる問題も容易に想像できます。でもイギリスは少なくとも困った人には手を差し伸べる国であると思っているので、アメリカのようにお金のない人が医療を受けれないというシステムにはならないと信じていますが、恐らくプライベート化を国民はそう簡単には了承してくれないと思います。

NHSについては色々思うことはありますが、結論としては、医療に従事している人たちがその道の専門家で、彼たちが日々できる範囲で最善の努力をつくして医療に努めているのだと信じたい、信じるしかないと思っています。「NHSからもらっている恩恵に感謝の気持ちと医療従事者への尊敬を忘れないようにしよう。」と自分に日々言い聞かせています。

それにしても娘のNHSの歯の矯正、4年待って2024年には5年目に突入するんですけど、もうそろそろ声がかかってほしいなぁ。NHSのおかげで、忍耐力もかなりつきました。ありがとう、NHS(笑)

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