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髪は女の命

昨日、フランス人の友達マリーと2か月ぶりに外食しました。
マリーには15歳になる女の子がいます。

2ヶ月前にマリーに会った時、この数年間、思春期真っただ中の現在15歳の娘さんの気持ちの浮き沈みが激しく、両親に対する反抗・暴言が増えていて、マリーはどうしていいものかわからないと嘆いていました。

1年前、マリーは娘さんをある美容室に連れていったそうです。
娘さんがインスタグラムで見て気に入ったヘアスタイルがあったので、その写真を電話に保存して美容師さんに見せたそうです。レイヤーを入れた動きのある髪型をリクエスト(以下のイメージ写真のような)


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マリーは美容師さんが髪を切っているの間、チラッチラッ確認をしながら待っていたそうです。30分後・・・

マリーが見たときに、美容師さんが娘さんに「There you go(できあがり~ぃ)」と手鏡を頭の後ろの方に当て娘さんに仕上がりを見せていたそうです。

マリーは「えっ」と慌てて娘さんのところに駆け寄ったそうです。

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慌てた理由は、「できあがり~ぃ」というのが上記のような髪型だったのだそうです。

マリーはフランス人。とってもいい人ですが、フランス人はフランス人。絶対に自分の主張を曲げたり抑えたりなんてことはしませんので、もちろん美容師に対してもこんな質問を投げかけました。

「写真と全然違うけど?」

単刀直入に。

美容師はああでもない、こうでもないと娘さんの髪質や量を理由にできないと言ったそうです。

じゃ、初めから言ってほしい!

「年頃の14歳の娘ががっかりするのは、あなたがハサミを入れる前からわかっていたなら、事前に説明するのが筋じゃない?」

と、フランス人のマリーが美容師さんに正論を投げかけてみたところ、娘さんが「お母さん、やめて!これでいいから」と、とにかく帰りたいという感じだったので、お金を払って美容室を出たそうです。

美容室を出たあと、娘さんは「この髪型大嫌い」とお母さんに怒りを投げつけてきて、それから1年間、一度も美容室に行かず、ポニーテールで毎日学校に行っていたそうです。

ちなみに、イギリスではこういうこと「あるある」事項です。できないと仕上がってからお客にどうどうと言う。それも、お願いしたことじゃない結果を出してから、

「お客の髪質で写真のような仕上がりにできることは不可能に近いにもかかわらず、それに近い形にするために、”私の素晴らしい技術をもって”、写真に限りなく近いスタイルに仕上げることができました。」という内容の言い方をします。

だったら、切る前から言ってほしい!でも、いつも事後報告なんですよね。

マリーの娘さんは、ちょっと神経質なところがあったりするせいか、友達に恵まれず、お友達だった人から無視されたり、学校の登校・下校も一緒にする一定の友達がいないという感じで、学校が嫌で不登校になってしまうかもという状況だったそうです。毎朝の「娘 VS 母」の学校行かない・行けのやり取りはかなり壮絶だったようで、2か月前にマリーとランチをした時にはかなり悩んでいて、あまり感情を顔に出さない彼女が泣き出してしまうほど状況は深刻なようでした。

先月、マリーの娘さんが1年ぶりに「美容室の予約を取ってほしい」とマリーに言ってきたそうです。マリーはもちろん前回の美容室ではないところを探し、家の近所にあるイタリア人の女性が経営しているとても小さなお店に予約を入れたそうです。前回の美容室での問題についてまず説明して、前回と同じ写真を娘さんが見せてできるかできないかを確認。イタリア人の美容師さんは「Of course!」と自信満々でしたが、マリーは半信半疑。切っている間もずっと観察していたそうです。

イタリア人美容師さんがカットが終了し、次にブロードライ、更にはコテまで使って写真のイメージに近い感じに仕上げてくれたそうです。ほしかった髪のレイヤーが横も後ろもきちんと入っており、初めて作った前髪の長さも写真通りで、マリーの娘さんもマリーも大喜びで帰ったそうです。

翌月曜日、マリーの娘さんは学校に行くときにとても緊張した様子で、鏡の前で何回も髪をチェックしたりして、前髪なしのポニーテール姿しかしらなかったクラスメートや友達が新しい髪型にどう反応するのかが怖くて、学校に行くのを躊躇する感じだったそうですが、勇気を振り絞って学校に行ったところ、友達だけではなくクラスメートや先生から、

「Oh my god!You look so beautiful!」という褒め言葉をたくさんもらったそうです。しかも科学の時間に隣に座っていた男の子は転校生が来たんだと思っていたら振り返ったらマリーの娘さんでびっくりしたということも、娘さんにはとても嬉しかったようです。

髪型を変えて「別人になれた」ような感覚を経験したようです。まさしく「髪は女の命」。髪次第で人生が変わるももんです!

その後、行かないといっていた来年6月の卒業パーティーにも行くといいだしたり、毎日同じ黒のトレーナーと黒のズボンで生活していたのに、ジーンズとトップを買ってほしいと言い始めたり、「I hate everyone みんな大嫌い」と言ってお友達を全く信用していなかった彼女が、来年から通い始める高校ではできるだけ多くの新しい友達を作りたいというようになったそうです。さらに「ボーイフレンド」もできるといいなぁ~との発言もあったそうで、1か月前まで登校拒否をしそうになっていた女の子と同じ女の子とは思えないほどの変わりようだそうです。

過去2年間ほど、娘さんへの対応に関して、マリーと話すと必ず言っていた言葉。

「I don't know what to do… どうしていいかわからない」

と暗い顔をしていたのですが、昨日のマリーは笑顔がいっぱい。ティーネージャーのTransition(変化)の時は必ずやってくるのだと信じて、その時を待つことが大切なんだなぁとあらためて思いました。私の娘は「口答え期」というのでしょうか「私が正しい期」がやはり14,15歳の時に大変だなと思ったこともありましたが、娘が17歳になった今、友達のように、意見の相違も認め合えるようになってきました。

子育てで出口が見つかりそうにない暗闇の中でもがくことってありますよね。でも光が見える日が必ずやってきます。その日はある日突然やってくるのです。そして、そのきっかけがなんてことのない「髪型」だったりするものです。


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