保育士ママがこうもりの絵本を作る話(2)
創作の土台
「図書館学のゼミにいましたよ。」(※)
急に聞き慣れない言葉が飛び込んできたので、一瞬驚いたが、
世の中には面白そうな学問があるものだ。
「へえ!もしかしてKさん、ゼミや趣味なんかで物語を書いたことありますか?」
「いやいや、書いたことはないんですが…」
Kは笑いながら、読書が趣味で最近はミステリー小説が多いこと、
普段ボランティア団体にいて、クリスマスはサンタに扮して施設を訪れること、
前職は児童擁護施設に勤めていたこと。
そんな日常を、初対面の私に話してくれた。
やっぱり保育士を目指す人は、子供たちと関わる現場が天職なんだろう。
保育所でパートをしてる人、看護師、幼稚園や小学校の教員、
ベビーシッターになりたい人・・・
保育士実技講習の受講中、私の席の周りもその道の人ばかりだった。
Kもその一人で、既に様々な背景の子供たちとの関わりがあったので、
保育業界の初心者からみれば、児童擁護施設での勤務経験は
とても貴重なものだった。
施設の子供たちとの日常の中で、
子供の幸せを願う気持ちが、創作の原動力になる。
Kの話に相槌を打ちながら、視界が徐々にクリアになっていった。
***
「そういうわけで、私、長年創作活動をしてみたかったんです。
良かったら一緒に、物語を作ってみませんか?」
店に入って小一時間経った頃、私はそう切り出した。
するとKは想像していたよりもはっきりと、
「そうですね。せっかくなので、やってみたいです。
初めてなので、よく分からないんですけど。」
と応えてくれた。
「ありがとうございます!私も、初めてですみません。」
「どんな風に、書けばいいですかね…?」
「ええと、それじゃあ原案になるような設定を、後でLINEで送りますね。」
「あ、それは助かります!よろしくお願いします。」
こうして、マニュアルのない絵本作りがスタートした。
***
その後、送ったLINEがこれ。(再現)
喫茶店で聞いた話のキーワードを拾っていき、
たたき台の設定を、帰りの電車内で思いつくまま書いて送った。
夜のイメージがあったので、主人公は夜行性の生き物を連想。
つい最近、夕方の公園で見かけたコウモリにした。
お互いの感性や力量を知らないため、いま私に出来ることはこれしかない。
当然、この単なる叩き台の設定は、
その後、9割消えていくので、安心して読んで欲しい。
ここからストーリー作りを進めるのだけれど、
どんな課題にぶつかり変遷を辿ったか、これから書いていこうと思う。
(※)当初絵本学とあった誤表記を訂正しました。2023.8.1