保育士ママがこうもりの絵本を作る話(1)
はじまり
昨年2021年11月25日の夕方。私は神奈川県立プラザ近くの喫茶店にいた。
つい先ほど保育士の資格取得のために、1ヶ月間断続的に行われる実技講習会の最終日を終えたところだ。
コーヒーを2つ持って座った丸テーブルの向かいには、
講習会のグループワークで一緒になった同世代のKが座っていた。
「最後に提出したレポート、無事に通るといいですよね!」と私が言うと、
「本当に。自分の心に素直に書いたので。」と彼は呟いた。
このレポート提出を終えれば、神奈川県内で活動できる地域限定の保育士になれる。気持ちとしては一段落だが、翌月には全国版の実技試験も控えている。
「全国の実技も受けますよね? お互いがんばりましょう!」
私たちは、資格取得においては同じ立場だった。
「どうして保育士資格、取ろうと思ったんですか?」
そう聞かれて、身の上話を軽くした。
***
1年前。
私は2歳の息子と生まれたばかりの娘を持ち、小さな子供たちの要求によって、あらゆるタスク処理が儘ならない日常に困惑していた。
正直家庭と仕事との両立に苦戦・・・どころではない。
そんな私の頭がパンクする前に、夫や両親がサポートしてくれたのだが、
それでも整理のつかない苦しみの解消法を暗中模索していた。
ある晩。
あぁ、そうか。私、子育ての勉強したことない。
そう気付いて、保育士の勉強を始めた。
ちなみに、そこで学んだ「保育原理」という科目に、
私が知りたい「子育てって何?」の答えが書いてあった。
***
コーヒーを飲みながら、改めてお互いの近況を話した。
私は映像制作会社をしていて、子育てを機にオリジナル作品を作りたいと思っていること。
Kは九州から出てきて、資格取得しながら転職先を探していること。
どうやら彼には、就職先が決まるまで少し時間があるようだ。
「Kさんって学生時代、なんの専攻でしたか?」と聞くと、
「まぁ、専攻は今と全然違うので。でも、図書館学のゼミにいましたよ。」
これが、絵本作りの始まりだった。