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ヘタリアになった日本企業

ヘタリア伝説


対エチオピア戦争
・帝国主義全盛の19世紀、アフリカの小国エチオピアと戦争し、まさかの敗北
・第2次世界大戦直前に、再びエチオピアと戦争! 槍と弓矢を相手に戦車を使って大苦戦。最終的には、国際条約違反の毒ガスとダムダム弾を使って、かろうじて勝利

第2次世界大戦
・第2次世界大戦の初期に、ドイツ軍の猛攻でパリ陥落寸前、瀕死のフランスに戦線布告、あっさり返り討ちにあって大敗。
・バトル・オブ・ブリテンの最中にイギリス植民地のエジプトに侵攻するも、現地のイギリス軍に敗北。結局、ドイツに援軍要請を出してドイツ軍のロンメル将軍が戦線を立て直す
・ギリシャに侵攻して、ギリシャ軍に返り討ちにあい敗北。援軍に来たドイツ軍がギリシャとユーゴスラビアを制圧
(結果として、独ソ戦でドイツの足をひっぱり、連合国の勝利にもっとも貢献したと言われる)

イタリア軍の弱さは、世界中でネタにされ、日本ではヘタリアというアニメになった。


なぜイタリア軍は弱いのか?


イタリア軍が弱い原因は、兵士のやる気が低いからだ。

兵士のやる気が低い原因は、イタリア人の国家への忠誠心が低いからである。

では、なぜ忠誠心が低いのだろうか?

理由1. 国家をあてにしない文化

イタリアといえば、マフィアである。

イタリアにマフィアが多い理由は、イタリアが外国による支配を受けてきて、国家が当てにならない場合が多かったからである。
実際に、19世紀に統一国家ができる前のイタリアは、ドイツ・オーストリア・フランス・スペイン・ローマ教皇などに支配されたり、されなかったりを繰り返してきた。

そのような状況において、イタリア人は、自分たちの身は自分たちで守るため、政府の代わりの暴力装置としてマフィアを活用してきたのであった。
イタリア人の根底には、いざというとき国家は当てにならない。自分の家族や地元の人間関係のほうが当てになるとの意識があった。

理由2.格差社会

イタリアは格差社会である。
第2次世界大戦まで、イタリアには国王がいた。
イタリア王国だったのだ。(もともとは、サルディーニャ王国)

イタリアといえば、グッチ、プラダ、フェラーリなど、ハイブランドで高価・高級品がたくさん存在する。
高級ブランドがたくさん存在する理由は、イタリアが強烈な格差社会であり、たくさんの金持ちが存在するからだ。

格差社会は、一体感を損なう。
さらに、日本のような列強に侵略される恐怖心もない。

末端の兵士としては、戦争に勝ったところで、利益を得るのは上級国民ばっかりだという現実に、やる気がでなかったのである。


ドイツ・日本との比較

ドイツでは、19世紀に世界ではじめて社会保障を整備するなど、格差を緩和するために努力をしてきた。

ドイツの社会保障制度は、世界で最初に社会保険を制 度化したビスマルクの医療保険法(1883年)、労災保 険法(1884年)、年金保険法(1889年)に端を発する。

https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kaigai/18/dl/t3-04.pdf

日本では、臣民は天皇の赤子であるとして、国家神道(宗教)をつかって一体感をもたせる工夫を行った。さらに、小学校と義務教育を整備して、国民の育成に力を入れた。

ドイツも日本も、上級国民が過度なぜいたくを控えるなど、一定程度の節度をもっていた。

それ故に、ドイツ軍や日本軍は、イタリア軍と比較して強かったのだ。

当たり前の話だが、格差が広がると組織は弱くなる。
下層に位置する人間にとっては、頑張る理由がなくなってしまう。

逆に、平等性を高めて仲間意識をもたせると集団は強くなる。


実際に、民族がバラバラだったオーストリア帝国の軍隊はナポレオン戦争時代からずっと脆弱であり、第一次世界大戦で敗北した後にオーストリア帝国は解体される。第二次世界大戦前に、オーストリアは、ナチス・ドイツに吸収されることになった。


ヘタリアになった日本企業


昭和の日本企業

1960年~1990年にかけて、日本は一億総中流といわれる時代であった。

1985年まで、未婚率は5%以下だった。結婚しない人は20人に1人である。皆婚社会といわれるのも納得である。

みな、大学卒業と同時に就職をして、年功序列で出世して、結婚して、家族をもって、ローンを組んで家を建て、定年退職するまで同じような人生を歩んでいた。

同質性の高い集団においては、社員のやる気を高水準に維持することが容易だった。会社の利益はみんなの利益、だからみんなで一緒に頑張ろう!という話が説得力をもった。それゆえに、昭和の日本企業の国際競争力は極めて高かった。

すべては、日本企業ではたらく人の同質性が高かったからだ。

同じ釜の飯を食うという表現がある。この表現は、同じ食事をしていることからわかるように、同質性が高くないと出てこない。

昭和の会社員たちは、終身雇用制度と年功序列により、強力な仲間意識をもつことができた。

分断の令和

1990年代から未婚率が急上昇して、未婚者と既婚者に階級が分化してしまった。
昭和時代と同じように結婚して家族をもつ人もいれば、結婚せず生涯を独身で過ごす人が同じ会社で働くことになった。

既婚者と独身者の人生は、まったくもって異なるものだ。

既婚者:
引っ越し→結婚→出産→家を買う→子供の成長

未婚者:
No Event!

ここまで人生が異なると、なかなかに仲間意識を持ちづらいだろう。

さらに、既婚者同士でも、最上級パワーカップル会社員と、妻がパートタイムで月額おこづかい制の会社員とでは、金銭的余裕がまったく異なる。

パワーカップルは、育児休暇や子育て支援などをフル活用し、2馬力で金銭的に余裕のある生活をおくることができる。

独身男性は、休日にやることがなく、ゲームやアニメをみて過ごす。社会からの疎外感を覚えて、人生がつまらないんだと、ひとりごつ。

一方で、職場には、非正規雇用で将来不安をかかえる事務の中年女性社員がいたりする。

ダイバーシティ、多様な属性をもつ人を揃えるのがよいこととされるが、現実問題、価値観も利害も全然ちがう人たちの寄せ集めでは、仲間意識は脆弱になる。
(ダイバーシティに多大なメリットがあるならば、ダイバーシティに豊富なオーストリア帝国やオスマン帝国が連戦連敗の末に滅亡するのはなぜだ?)

結果として、日本企業の集団としての質は、大日本帝国レベルからヘタリアレベルにまで低下してしまった。

令和の日本企業では、同じ釜の飯を食うことがなくなったのだ。


おまけの女性活躍推進

そして、ここに女性活躍推進運動が影を落とす。
女性管理職の数値目標などを設定する、女性活躍推進活動は、不平等を引き起こす。

日本の雇用制度は、メンバーシップ型といわれる。
仕事の割り振りが曖昧なのだ。

メンバーシップ型の問題点は、
 ・成果が評価されない割にしんどい仕事
 ・成果が評価されやすいおいしい仕事
これらの仕事を会社が好き勝手に割り振ることができることだ。

成果が評価されない割にしんどい仕事は、例えばトラブル対応で地方に長期間はりつくなどの仕事が該当する。
成果が評価されやすい仕事は、大型案件の受注や、研究開発、学会発表など、成果がわかりやすく目立つ仕事である。

大抵の大手企業のホームページには、女性が活躍してますPRが掲載されている。女性で、結婚して子育てをしながらも出世して管理職やっております、みたいな、何もかもを手に入れている上級国民の女性会社員が出てくる。

彼女らは、もちろん優秀なのだろうが、育休を取得してもなお出世が遅れないような、割のいい仕事を優先的に割り当てられているのだろう。

キツイ割には評価されにくい仕事は、独身男性(or 妻がパートの既婚男性)にまわってくることになる。

このような不平等に対して、面と向かって会社に文句をいう人はいないが、確実に会社への忠誠心は低下するだろう。


死体蹴りの人材&技術 流出

日本企業は、円安と高額な社会保障費用の徴収により、高い給料を提示することができない。技術をもった、優秀な人材は、高い給料で海外企業に引き抜かれてしまうだろう。

この環境では、競争力を維持することは難しい。

人材流出に伴って、当然ながら虎の子の技術も流出する。


製造業の不調

2000年以降、特に製造業が不調である。

相次ぐ品質不正、飛ばない三菱ジェット、製造業の若手ばなれ、と製造業を取り巻く環境は、戦後最悪である。

半導体では、国産唯一のDRAMメーカー エルピーダメモリは倒産するし、フラッシュメモリの虎の子、キオクシアは2500億円の大赤字を計上し、いつまでたっても上場できないなど、絶不調である。

なぜ、製造業の不振が目立つかというと、製造業は国際競争にさらされるからだ。

例えば、パソコンや半導体や携帯電話は、輸出入が可能だから海外の会社との競争にさらされる。逆に、散髪やマッサージは、輸出入が難しいから、直接海外の会社と競争になることはない。

日本企業は、組織の結束度がヘタリアになってしまっている。やる気のある社員がいたとしても、集団としてのまとまりが悪いから、国際競争に勝つことはできない。

旧イタリア王国軍のように連戦連敗、槍と弓矢で武装したエチオピア相手に戦車まで使って苦戦する、瀕死のフランスに返り討ちにあう、など不名誉な伝説を残すはめになる。

もはや、日本企業は国際競争で勝つことは難しくなっている。

だが、この環境においても、日本国の指導者層は製造業の復活に野心を燃やしている。

例えば、半導体では世界最先端のロジック半導体の量産工場を北海道に建設している。補助金を数兆円、突っ込んでだ。
また、国産ジェット旅客機の開発にも、三菱リージョナルジェットの失敗を踏まえて、再チャレンジしようとしている。

 ラピダスは、世界で最先端の2ナノメートル(ナノは10億分の1)のロジック半導体の量産を2027年に開始することを目指す。日本が長年、海外のライバルに大きな後れを取る中、設立から2年に満たないベンチャー企業による最先端技術への挑戦は、業界の常識からすると、ハードルはかなり高いとの見方もある。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-20/S92W4GT0G1KW00


いったい、何を考えている・・・・?

ご老人たちは、自分自身が若いときに体験した1980年代、昭和の日本企業がまだ続いていると錯覚しているのだ。

ヘタリアと化した日本企業は、もはや国際競争に勝つことができない。

半導体のような競争が激しい分野において、日本企業が勝利することは期待できない。ラピダスへの数兆円の補助金とか、キオクシアへの巨額融資とか、一体何を考えているのだ!?と頭を抱えたくなる。

十分な技術があって、デジタル化をちゃんと進めれば、日本も海外の会社と競争できるだろうと・・・だが、分断がすっかり進んでしまった令和の日本企業は組織の底力そのものが低下しているのだ。

日本国において、製造業の復活は困難だ。
過去の栄光に執着せず、身の丈にあった戦略を考えなければならない。

製造業の課題は、人手不足とか、デジタル化の遅れとか、カーボン・ニュートラルとか、そんな技術面のものではない。
もっと重篤な”人”の問題である。

根本的には、未婚率の上昇が、製造業の競争力を奪ったのだ。


日本企業のヘタリア化がもたらす未来


① 円安
日本企業が国際競争に勝てなくなれば、輸出が減って輸入が増える。貿易赤字が増加する。

結果、円安になる。

最近になって、デジタル植民地だとか、デジタル小作人だとかGAFAMに搾取されている論が強調されるようになってきたが、輸出できるものがない以上、円安に対処法はない。

②インフレ
日本は、石油などのエネルギーと、食料を輸入に頼っている。円安になれば、当然ながら物価が上昇する。
食料品の値段が上昇するのはわかりやすい。
だが、食料品以外でも、服は化繊(石油)だし、家具なども加工と輸送にエネルギーを使う。コンビニの配送だって大量の石油を消費しているのだ。
結果、インフレは進む。

③配当金で生きるしかない日本
日本の海外純資産は500兆円である。年5%の利回りと仮定すれば、25兆円である。
消費税の税収が国と地方あわせて30兆円だから、日本国全体で消費税収入に等しいレベルの海外所得を得ていることになる。

もちろん、すべての個人や会社が平等に海外資産をもっているわけではない。

日本の国際競争が低下している以上、海外に資産をもっており、その配当を受け取ることができる会社が、相対的に良い業績を期待できるということだ。

特に、海外資産を大量にもっているのが商社である。

著名投資家のウォーレン・バフェット氏が、日本の商社株を大量に買っているのは、この日本が積み上げてきた莫大な対外資産を間接的に保有するためだろう。

逆に、日本に大規模な工場を建設する日本企業には厳しい未来が待っている。例えば、ラピダスとかキオクシアである。

日本企業が半導体のように国際競争が激しい分野で戦うのは難しい。


④自動車産業の没落
現在、日本を支えているのがトヨタをはじめとする自動車産業である。
円安の追い風をうけて、利益は過去最高を記録して、絶好調である。

EVが期待外れに終わって、日本の得意なハイブリッド車の優位性が明らかになったことも、日本の自動車産業のサクセスストーリーになった。

トヨタすげぇ! という物語をYoutubeでもよく見かける。

だが、日本企業に蔓延する”分断”は、トヨタだろうが、ニッサンだろうが、同じである。
組織は、ヘタリア化している。

自動車産業が粘り強く利益を出し続けているのは、過去の遺産がまだ残っているからである。長年蓄積された技術で競争力を維持している。
だが、ゆっくりと確実に、自動車会社も脆弱になっていく。

品質への要求の高まりと、人手不足と、厳しいノルマは、品質不正問題を引き起こす。

⑤老害による被害拡大
1990年までの日本企業は、本当に強かった。競争力があった。
一億総中流に支えられた、社員のやる気と団結力はジャパン・アズ・ナンバーワンなどと言われた。
この時代に青春を過ごしたご老人たちが、現在まだ権力を握っている。

イタリア王国が、かつてのローマ帝国の復活を目指して、エチオピアや北アフリカやギリシャに侵攻したように、日本でもかつて世界一だった半導体分野での復活を試みる動きがある。
太陽電池でも、かつて世界一だったから、もう一回復活したいと野望を燃やす人たちがいる。

ペロブスカイト太陽電池で日本の「復権」を目指す。官民協議会の1回目を開催!

https://solarjournal.jp/policy/53713/

日本企業ヘタリア化の根本には、集団内部での分断が存在しているわけで、新しい技術だけでは難しい。

かつての、一億総中流時代とは、会社員の士気がまるで違う。そのことを理解できない経営者層は、結果として無茶振りをしてしまって、損失を生むことになるだろう。

⑥そしてニート国家へ・・
日本企業は競争力を失って、輸出できるものがなくなる。
対外純資産の配当金だけでは、日本人が消費する食料とエネルギーを賄えない。
だが、食料とエネルギーは絶対に必要だ。
とすれば、どうなるか・・・

アメリカ合衆国と中国を相手に、コウモリ外交をするしかない。

アメリカに、食料ちょうだい!
じゃないと、沖縄に中国軍の基地をつくっちゃうぞ~

中国に、お金ちょうだい!
沖縄の港を使っていいからさ~

そうやって、危険な瀬戸際外交を繰り返すことになる。


結論

日本の会社員は、昭和の一億総中流時代から、

・女性活躍推進で利益を得る既婚女性
・パワーカップルで豊かな既婚男性
・おこづかい制に苦しむ既婚男性
・休日にやることがない独身男性
・将来が不安な独身中年女性

といった形で、分断されてしまった。

分断の結果、日本企業はかつての団結力と高い士気を発揮することができなくなった。

結果、日本企業は世界大戦期におけるイタリア軍のように弱体化、ヘタリア化した。

ヘタリア化した日本企業は国際競争に勝てない。


だから、、

日本株式に投資する場合は、極力海外との競争が少なく、海外資産をたくさんもっている会社の株を買え!

例えば、商社株やエネルギー株などだ。


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