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NO.2の育て方㊱ナンバー2育成ノウハウが世の中に少ない理由

ナンバー2育成についての考察、ノウハウなどをテーマに記事を書いているので、時には参考文献なども探したりするのですが、ナンバー2育成に関する情報は本当に少ないです。

私自身はどうやって知見を集めているのかというと、数少ない参考文献と中国古典などの歴史書に登場する宰相や将軍のエピソードからナンバー2の理想的な在り方や失敗例などを考察したり、経営者の方からお話をお伺いすることが多いです。

経営者などのリーダー向けのリーダーシップに関する書籍は無限にあるのに、ナンバー2の育成や心得について書かれたものはあまりに少ないのはなぜだろうかと素朴に思う訳です。

今回はこのナンバー2育成ノウハウが世の中に少ない理由についてお話したいと思います。

■ナンバー2育成ノウハウが世の中に少ない3つの理由

私なりに3つほど理由を考えてみましたので、個々に解説したいと思います。

①ナンバー2の重要性を本当に理解している人が世の中に少ない
②ナンバー2は裏方の存在であるためノウハウが表に出てこない
③ナンバー2育成について体系化できる人がほとんどいない

■ナンバー2の重要性を本当に理解している人が世の中に少ない

組織には必ずトップが存在し、構想を練り、実行指示を出します。トップはやるべきことが明確ですが、ナンバー2の役割というのは不明確なことがほとんどです。

ナンバー2の役割はトップの補佐役という表現に落ち着くのかと思いますが、では補佐役は具体的に何をするのかと問われて上手く説明できる人は
少ないのではないでしょうか。

多くの組織に役職として存在し、トップに次ぐポジションとされているのに、曖昧で、本当に期待される行動が取れていない存在。それがナンバー2の捉えられ方なのではないかと思います。

それはそのまま、ナンバー2の重要性が理解されていない証拠とも言えそうです。

組織を動かすトップと言えども一人でできることなどたかが知れています。頑張りすぎるトップの限界が組織の限界になりやすいのです。そして、このトップの限界を突破させるための補佐役としてナンバー2がいるはずです。

ナンバー2の役割の概要は次のとおりです。

・社長に不足する部分を補うこと
・社長の描く戦略を戦術に落とし込み、実行、実現させること
・社長に正しい情報を提供し、必要に応じて意見を述べ、正しい決断をするための支援をすること
・社長の良き理解者であり、同じベクトルで動いてくれる強力なフォロワーであること

業績も悪くないからあえてナンバー2という存在にフォーカスする必要などないと考える人も多いかもしれません。事業が順調であれば、それはそれで良いことだと思います。

ただ、会社が苦境に立たされた時はどうでしょうか。

一定期間、苦境から脱せないと成果を出していた優秀な人材や自分の言うことをよく聞く人材から辞めていきます。こうなると悪循環の始まりです。

苦境に立たされる原因を突き止めたいのに必要な情報が上がってこない、対策を打ちたいのに的はずれな判断をしてしまう。実行させたいのに思うように動いてくれる部下は退職してしまう。慌てて採用募集をかけても、即戦力となる人材などほとんどいない。

長く経営をされていればこうした状況を経験される方も多いはずです。

このような状況の時により社長は孤独と感じると思いますが、精神的にも支えてくれる部下というのはそう多くはないでしょうし、自分の過ちを指摘してくれる部下はもっといないでしょう。

苦境の時にこそ、信頼できて、知恵も出してくれ、ともに汗をかいてくれる存在がいたらどれだけ安心で気持ちが強くなれるか。

その存在はナンバー2にしか務まらないと思いますが、役割を伝えても具体的にイメージすることはなかなか難しいかもしれません。

つまり、そもそもナンバー2という存在の重要性は理解されていないということです。

■ナンバー2は裏方の存在のためノウハウが表に出てこない

組織が成果を上げた時に注目されるのはトップだけです。「我が社には優秀なナンバー2がいて、その人材が切り盛りしてくれたお陰で」と語るトップの話はほとんど聞いたことがありません。

縁の下の力持ちとしてその才能を発揮している人材は表舞台には決して立つことはなく、注目もされませんから成功の秘訣やノウハウも表に出てきません。

トップが得意げに成果を誇り、そのプロセスを語っても、真実とは異なると思った方が良いでしょう。

企画立案→PDCA。文字で言えばこれだけのことですが、その過程で対応すべきことは山のようにあります。

・企画はトップだけが練り上げたものなのか。
・情報収集、分析を誰がどのようにしたのか。
・実行計画は誰が練り上げたのか。
・営業活動は誰がどうしたのか。
・現場を誰が動かしたのか。
・進捗管理は誰がしたのか。
・躓いた時の修正を誰がしたのか。
・適正なオペレーション体制は誰がどう作り、維持したのか。

事業をしていれば、描いた絵がなんの障害もなく、思った通りの成果に結びつくことはなかなかありません。

作業レベルでもかなりのボリュームですし、小さな判断も無数にありますが
全てを社長一人ではできないでしょうから社長とともに統括責任者がいるはずです。

表に出てこない小さな判断、小さな修正。これこそがノウハウであり、その集大成が成果です。

このノウハウは単純にPMといったビジネススキルだけでなく、社長との連携を上手くやるコツも含みますが、この「社長と上手くやること」が実は一番難しい部分です。

このノウハウがナンバー2が保有するものであったのであれば、外部から窺い知ることはできません。

よく他社の成功事例をそのまま導入してみても上手くいかないということがありますが、それはそうでしょう。成功するためには表に出てこないノウハウが必要だからです。

スポットライトが当たらない人間にたまっていくノウハウ。

そして、このような人材を仮に社長が育て上げたとしても、わざわざ人に教える機会もないでしょう。

これらを抽出し、再現性のある形で整理することは極めて難しいので、表に出てこないノウハウとなってしまうのです。

■ナンバー2育成について体系化できる人がほとんどいない

ナンバー2育成論を語っている人の属性や内容を大きく分けると、

・歴史を題材に参謀論として解説する学者
・人材育成コンサル
・一人だけナンバー2を育てたことがある社長

こんな分類になるのですが、理想論や再現性のない話が多いです。

・社長のタイプが違えば、対応が違う。
・業界や会社の風土が違えば、対応が違う。
・ナンバー2のタイプが違えば、対応が違う。

もちろん参考になる考えもありますが、普遍的な原理原則というものが見えてこないのです。

ある特定の事情だけを取り上げて、かくあるべきと言われると説得力がなくなってしまいます。

また、表の話が社長向けのナンバー2の役割の理解、選び方、育成論なら、裏の話はナンバー2が抱える苦悩と乗り越え方、乗り越えさせ方なのですが、この裏の話を語ってくれる人もほとんどいません。

なぜかと言うと、ナンバー2の苦悩を知る人がいたとしても、その気持ちを吐露する場もなければ、乗り越え方を知る人は少ないからです。

トップに仕えるのであれば誰もが人間力が高く、有能なトップに仕えたいと考えるでしょう。けれども現実にはそうしたトップも、自分に落ち度があると考えるトップも多くはありません。

どんなトップに巡り合えるか。ナンバー2にとっては残念ながらこればかりは運の要素が強いです。

それこそ、歴史で言うなら、三国志の郭嘉、賈詡、法正など主君を鞍替えしている軍師も多いです。

仕事のスキルを上げるためのハウツーは世の中に溢れていますが、トップという一人の人間とじっくり向き合い、心を合わせ、成果を出すというのは口で言うほど簡単なことではありません。

ナンバー2自身のキャリアデザインも視野に入れて、ナンバー2の在り方ややりがいを語ってくれないと魅力的なポジションに映りませんので、トップに対してだけ理想論を展開しても、当の本人であるナンバー2自身のメンタル、スキルをケアする試みもなければ上手くいきません。

実際にナンバー2を務めたことがない人にはこの辺りがよくわからないので、トップの立場にある人にトップ目線の育成論は説けても、ナンバー2の視点でのアプローチがなくなり、結局、体系的に整理することが難しいのだと思います。


本当は社長と組織にとって有用性の高いはずのナンバー2を育てるノウハウを見つけられない理由はこんなところです。

最後までお読みいただきありがとうございます。


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