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そのコミュニティにパーパスはありますか? 〜PURPOSE DRIVEN COMMUNITYのご紹介

NOTEをご覧の皆さま、こんにちは。本日は博報堂ブランド・イノベーションデザイン/VoiceVisionの米満から、コミュニティについて投稿します。

VoiceVisonでは2013年から生活者をはじめさまざまなステークホルダーとの共創を掲げ、コミュニティの立ち上げや運用を支援してきました。最近、コミュニティをつくりたい!という相談をいただくケースが増えてきたように感じています。

そんな経緯から、博報堂マーケティングセミナーにて講義をする機会がありました。平日の午後にもかかわらず80名近くのお申込みがあり、皆さんのコミュニティに対する関心の高さがうかがえました。

本稿では、そのセミナーのエッセンスをご紹介したいと思います。

※2月に「生活者と強いつながりをうみだす VISION DRIVEN COMMUNITY講座」として実施した内容を修正・加筆をしています。

■なぜ今コミュニティなのか?

−これまでもプロモーションやCRMの文脈でコミュニティはよく話題に上がっていましたが、なぜ今あらためてコミュニティなのでしょうか?

IOTや5Gなどの発展により周りのあらゆるものがデジタル化されて、ネットワークに繋がっていく生活のデジタル化が進み、データを介したやり取りが行われることで、企業と生活者はつながりやすい時代になりました。企業やブランドは、生活者にたくさんの製品サービスの中から選びぬかれるためにも、有益な情報を発信することで、強いつながりを作り出し、それを維持しなくてはビジネスの拡大が難しくなっている時代とも言えます。

また、生活者の企業に対する意識も変わってきています。生活者は、企業という存在を商品やサービスの提供者としてだけでなく、よい社会や未来をともにつくっていくパートナーと見る傾向も強まっています。

この企業と生活者の両者の直接的な接点となる「場としてのコミュニティ」の役割は、ますます重要なものになってきているのではないでしょうか。

コミュニティの重要性が高まる一方で、なかなか思ったような成果が得られないという声も多いようです。

■コミュニティはなぜ失敗するのか?

−なぜコミュニティはうまく行かないことが多いのでしょうか?

よく聞くケースは以下の4つです。もしかしたら、この記事をお読みの方にも心当たりがあるかもしれません。

①顧客育成の罠
 :既存顧客の熱狂は新規顧客の参加の障害になっている…
②LTV向上の罠
 :既存顧客に向けた施策に留まってしまい、思ったよりもLTVの上り幅が小さい…
③推奨促進の罠
 :ファンと言えども商品を推奨するのには抵抗があり、自然な推奨が拡散しない…
④価値機会探索の罠
 :コミュニティに集まる特殊な参加者の声をニーズとして一般化することが難しい…

多くの場合は、コミュニティを拡大しようという場合にうまくいかない罠に陥ってしまうようです。私たちはこのような、企業が“ターゲット”としての顧客を、“インセンティブを与え”ることで“囲い込み”、自社の売上向上のために“育成する”…いわゆる「顧客囲い込み型コミュニティ」に限界がきているのではないかと考えています。

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■「顧客囲い込み型」から「価値共創型」へ! 〜PURPOSE DRIVEN COMMUNITY

-それでは、生活者と強くつながるにはどのようなコミュニティには求められるのでしょうか?

そのひとつの考え方が、パーパスを中心としたPURPOSE DRIVEN COMMUNITYです。顧客マネジメント型コミュニティではなく、多様な側面を持つ生活者とつながりを再構築し、金銭の授受を前提としない価値共創型コミュニティが、今こそ求められていると感じています。

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PURPOSE DRIVEN COMMUNITYとは、「企業側の意志表明を越えて、生活者や他のプレイヤーと共に目指す社会や暮らしの提示し、そのパーパス実現に向けての活動体としてのコミュニティ」を指します。

PURPOSE DRIVEN COMMUNITY には、3つの特徴があります。


① パートナーとの関係構築
:商品の提供⇔消費する主体自社顧客⇔その他生活者という壁を越えて、パーパスの実現に向けて行動する“仲間・パートナー”としてのフラットな関係の構築。
② 自社の商品/サービス提供すら目的ではなく手段
:生活者との共有可能なパーパスを掲げ、自社の活動を意味づけし、商品/サービスの提供すら、パーパス実現に向けた手段としてパートナーに提供する。自社商品の利用/推奨を強要しないオープンな活動体。
③ 体験プロセスへの参加活動としての設計
:単にブランドを深く理解してもらうパーパスを理解してもらうための参加設計ではなく、一人一人のパーパス実現につながる参加活動としての体験設計と提供。

セミナーでは、最近のブランドやVoiceVisionの事例も交えながらご紹介をしました。

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■PURPOSE/PARTICIPANT/ACTIVITY 3つのデザインを!

—最後に、どうすればPURPOSE DRIVEN COMMUNITYはつくることができるのでしょうか?

PURPOSE DRIVEN COMMUNITYをつくる上では、3つのデザインが必要になると考えています。

①PURPOSE
:この活動体はどんな未来を目指すのか?参加者の共感を生み活動を推進する指針/旗印
②PARTICIPANT
:パーパスの実現に向けて(規模問わず)行動する人。そのパーパスを実現するためには誰に(どんなステークホルダーに)参加してもらうべきなのか?参加者の参加動機はどこにあるのか?
③ACTIVITY
:パーパス実現に向けてみんなで何をするのか?商品はその活動においてどのように機能するのか?参加者はどのように関与するのか?何を成果として共有していくのか?

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特に①PURPOSEをつくる上では、目指したい未来を呈示する必要があり、どのように社会課題と企業/ブランドの活動を結びつけて捉えるか、という視点がポイントとなります。

コミュニティをつくりたい!と思ったときに、いきなりプラットフォーマーやサービサーにお声がけするケースもよく耳にしますが、まずはこの3つのデザイン=場としてのコミュニティのデザインがしっかりできているか、という確認が欠かせません。

また、コミュニティのタイプ/あり方にもパターンがあり、類型化することができます。この3つのデザインを踏まえた上で、どのようなコミュニティを目指すのか、さらにそのあり方に合わせてコミュニティ自体の成長を設計していくことが大事ではないでしょうか。必ずしもコミュニティの規模を追い求めることだけが正解とは限りません。

ここまで生活者と強くつながるための講座のエッセンスをご紹介しました。

■パーパスからワクワクする生活者とのつながりを!

SDGsへ注目やD2Cなど新しいブランド形態の例を出すまでもなく、企業やブランドは社会とのつながりを見直し、生活者との新しい関係性をつくりだそうとしています。生活者は単に消費を促す存在ではなく、社会やこれからの未来を共にうみだすパートナーとして接し、企業やブランドが掲げるパーパスに対して参加を促していく存在として捉え直す必要があります。

コミュニティはこれまでの市場をつくるマーケティング発想から、仲間をつくるファシリテーション発想へ、競争から共創へ。そのように考えると、コミュニティはもっと楽しく、ワクワクするものになっていくと思いませんか?

ともにPURPOSE DRIVENなCOMMUNITYをつくっていきましょう!

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(筆者/プロジェクトメンバー紹介)

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米満良平(よねみつ りょうへい)
博報堂 ブランド・イノベーションデザイン イノベーションプラニングディレクター

マーケティングリサーチ会社勤務を経て、2009年博報堂入社。共創をテーマに掲げ、推進する事業会社VoiceVisionにコミュニティプロデューサーとして参画。様々なステークホルダーとの共創から、地域・地域創生、新商品開発・ブランディング、産官学連携オープンイノベーション、コミュニティづくりなどのプロジェクトを担当。先進的な生活者と企業価値の共創を研究するユーザー・イノベーション・ラボにも参画・運営(https://www.hakuhodo.co.jp/news/newsrelease/85767/)

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上地浩之(うえち ひろゆき)
博報堂 ブランド・イノベーションデザイン イノベーションプラニングディレクター

2005年、博報堂入社。ストラテジックプラナーとして、多様な領域の戦略立案担当。その後ソーシャル領域を専門にSNSを活用した次世代型CRMや、社会課題を中心においたムーブメント創出などを企画。2013年、株式会社VoiceVisionを立ち上げ。共創による価値創造のパートナーとして様々なコミュニティ/プロジェクトをプロデュース。2020年より博報堂Brand Innovation Design局所属。

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田中和子(たなか かずこ)
博報堂 ブランド・イノベーションデザイン ビジネスプロデューサー/コミュニティプロデューサー

1998年博報堂入社。営業職、ビジネス開発職を経て、2014年に生活者共創型コミュニケーションを目指してVoiceVision立ち上げに参画。一人一人の声から課題と未来を共に創る思想より、2012年には“博報堂リーママ プロジェクト”設立。企業で働くママたち1000人以上と「ランチケーション®」を慣行。2016 Prix Ars Electronicaデジタルコミュニティ部門審査員。2018年同部門及びEC共催STARTS部門審査員。2021年SPIKES ASIAヘルスケア部門審査員。共著「リーママたちへ 働くママを元気にする30のコトバ」(角川書店)2男1女の母。


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