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私とおじいちゃん <自己紹介シリーズ>

おじいちゃん

父方のおじいちゃんは、私が生まれる2年前に亡くなっており居ないが、
母方のおじいちゃんが居る。

父方のおじいちゃんは、仏壇の右上に遺影が掛けられており、それを見ていた。
おじいちゃんの隣には、別の遺影が掛けられており全部で4人ほど連なっていた。全部モノクロの写真で、父に誰だか聞いたことがあるのだが、今はまったく憶えていない。

写真のおじいちゃんは所謂頭が禿ていて、将来私も似たような頭になるのだろうかと将来の姿に怯えてしまったことを憶えている。

さて、母方のおじいちゃんは隣町に住んでいて、たまに家に遊びに来てくれた。逆に私が父に連れられてお盆など行事の際におじいちゃんの家に行くこともあった。

ある時、おじいちゃんが家に遊びに来た。
いつも、インターフォンを押さずに玄関をガラガラと開け「来たよー」と声をかけるおじいちゃん。

父方のおじいちゃんとは対照的に、フサフサだけど白髪のおじいちゃんで還暦過ぎとは思えない元気なおじいちゃんだった。スポーツ刈りのように逆立った髪が、ヘルメットのおかげで少しだけつぶれていた。

スーパーカブ

おじいちゃんはバイクに乗る。バイクと言ってもスーパーカブなのだが、新聞配達の方が良く乗っているあれである。それでも、おじいちゃんが乗る姿はカッコよかった。この時ももちろんバイクだった。

急いで、玄関におじいちゃんを迎えに行った私は、ふと玄関とおじいちゃんの隙間から見えるバイクが目に留まり。そのまま靴を履いてバイクのところへ行った。
バイクにはフロントハンドルの内側に子乗せ用の椅子が設置されており、
乗り物が好きだったであろう私は、これは乗るしかないと「乗せて!」とせっついた。

おじいちゃんは渋々、だけどちょっとだけ笑顔で私をバイクに乗せてくれた。

バイクのエンジンを点けるとエンジンに近いからなのか自動車とはまた違う、鼓動のような振動が感じられ気分が高揚した。

その後、おじいちゃんが「しっかりつかまっていろよ」と念押しの一言を言ったと同時にバイクをスタートさせた。

庭は舗装されていないので、ちょっとグラグラしたけども、さすがおじいちゃん安定の運転技術だった。
その後、国道に出てアクセルを徐々に開けて、スピードを出していくと
私の顔にあたる風が徐々に感じられるようになり、それはとても心地よく。これがずっと続いて欲しい。そんな気持ちにさせてくれた。

距離にして500メートルくらいだろうか、近くのパチンコ店の駐車場に入りバイクは停車した。その後Uターンして私はもう一度心地よい風を感じた。

家に戻ると、おじいちゃんは母と何か話をして、その後、何かを渡してすぐに帰ってしまった。その日私はドキドキしてあまり眠れなかったことを憶えている。

次におじいちゃんが訪ねてきたときには、バイクに着けられていた子乗せ用椅子は取り外されてしまっていた。どうして外したのかは知らない。

そういう訳で、おじいちゃんとバイクに乗ったのはその時が最後になってしまった。

私のこころの中にはぽっかり穴が開き、そこを吹き抜けるせつない風の音が聞こえたような気がした。







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