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後悔するよ。
上司からシュークリームを頂いた。
そんなことは滅多にないのだが、普段の業務ではない仕事を請け負った対価としてだ。
普段の業務ではないとはいえ、勤務時間中の事だし、それほど大したことはしていない。むしろこんなものまで頂いて申し訳ない。
と思う気持ちを、段々と今日の夕食後のデザートができた嬉しさが追い越して行くのが自分でわかり、ちょっと卑しいなと思った。
帰宅した妻にそのことを伝え、頂いた箱を開けると、シュークリームは6つ入っていた。私が妻と二人暮らしであることは上司も知っているはずなので、私たち2人に対して6つ、ということなのだろう。
ちょっと多いな、と思った。申し訳なさが追いついてくる。
すると妻が「今、1つ食べちゃおう」と、個装の袋を摘んで持って行った。
え、今?
これから夕食を作り、二人で食べた後、デザートとして頂くつもりだったので、今食べるという選択肢なんて思いつきもしなかった。思わず、聞き返す。
「今食べるの?夕ご飯前に、お腹いっぱいにならない?」
妻の返答はこうだ
「今食べなきゃ、絶対後悔するよ。」
どういうことだろうか。
シュークリーム1つが急にスケールの大きな話になるじゃないか。
まるで人生の岐路に立たされているかのような、大きな選択を迫られているかのような、そんな感情にすらなる。
でも、なんだか本当に今食べなきゃ後悔しそうな気がした。そんな言い方だった。
後悔は苦手だ。後悔する事が分かっていながら事を起こさないのは、もっと苦手だ。
「そっかぁ、できれば後悔はしたくないな」
私も、シュークリームを1つ手に取った。
妻の予感は大体当たる。普段賭け事はしない事にしているが、たかだかシュークリーム1つ、妻の直感に賭けてみてもバチは当たらないだろう。
夕食前に食べる大きなシュークリームに、確かに後悔はなかった。
あるのは、少しの満腹感だけだ。
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