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【読書メモ】EAT&RUN 100マイルを走る僕の旅

先日、人生を変えるモーニングメソッドを読んで朝活を実践している。朝ランをすると頗る体調が良い。これはコツコツと継続できそうだし、続けていきたい。一方で、私のような素人のランではなく、もっとハードなラン、ウルトラトレイルランニングをしている人は何を考えて、どういう目的で取り組んでいるのだろう。どういう食事をとり、どういう生活を送り、そしてどのような境地に達するのだろうか。いくつか印象に残った箇所をメモしておこう。


筆者のスコット・ジュレクは、アメリカのウルトラマラソン界のスターである。ランニングを知らない人にも知名度があるほどアメリカではメディアに取り上げられ、日本にもイベントで来日をしている。

本書のテーマは、タイトルの通り食事とランである。筆者は完全菜食主義者だが、初めからそうだったのではない。日々の生活や趣味の運動、競技生活を通して、菜食が最も理想的な食生活と確信するに至ったのだ。

またマラソンは、しがらみの多い毎日の中で自由をもたらしてくれる。記録に挑戦し、ペース配分を考え、時には命を危険に晒すリスクを取ることもあるが、全ては自分次第なのが最大の魅力だと筆者は考えていた。私も同感だ。しかし、レースでの負けや失敗、恋人や友人との別離などを経験し、筆者は気づくのである。

田舎の農場での一人きりの生活を考えていた僕は、その晩、自分にとって友情がどれほど大切なものか分かった。最も大切にしている友情が、一人で誰にも頼らず挑戦する孤独なスポーツから育まれたことは、何という皮肉だろう。ウルトラマラソンはチームで戦うものではないのに、この徹底した個人主義のスポーツを通じて培われた絆が、僕の人生で何よりも強いのだった。


失敗から学ぶことの方が多いのは、世の摂理なのかもしれない。

完走とか優勝とかが答えじゃない時もあるんだ。みんな大変な時を経験している。そこで一番学ぶんだ、それが僕らを強くするんだ。
誰だって負けることがある。誰だって欲しいものを手に入れられないことがある。友人や愛する人が去っていくこともある。後悔する決断をしてしまうことだってある。そして、それでも何とか、それを埋め合わせようと必死に頑張る。負けることが生き方を決めるんじゃない。負けたあとに何をするか、つまり負け方が大切なんだ。


なぜこれほどハードな超長距離のランをするのかは、私には共感はできなかった。100kmを寝ずに走り切ったり、足場の険しい道や50℃を超える炎天下の中を、身体中が不調になりながら、時には嘔吐しながら走ることもあるそうだ。それでも、たとえ棄権となろうとも、また次のウルトラマラソンに参加するという。一種の麻薬のようなものらしい。

運動するときに経験する「ランナーズ・ハイ」が起こる原因は、脳が大量にエンドルフィンや内在性カンナビノイドを作り出すからだ。ウルトラランニングをやっている人には元中毒患者が明らかに多いのも、それで説明がつくのかもしれない。

そしてこのハードはランに適応するには完全菜食主義(Vegan)が体感的に最適だという。これは、欧米と異なりレストランやスーパーにVegan用メニューがない日本では真似ることはなかなか難しい。菜食主義(Vegetarian, 肉や魚は食べないが卵や乳製品などの動物性食品は食べる)を実践している人もまだまだ少数派だ。

しかし、野菜を多くとり、粗食な食生活が身体に良いということには共感できる。コロナ禍で外食が減り、家で健康的な食生活を送っていると、食べ過ぎたり飲み過ぎたりすることが少なく、懐にも優しい。シンプルな暮らしと食事は、一番のremedyなのだ。

食べ物や音楽や人生や死のことや愛の意味について話し、川の流れる音を聞きながら、窓から入る涼しい春のそよ風にあたって眠りについた。ほとんど毎朝、自然食を売っている一番近い村まで森の中を10キロ走った。フランスのハーブや新鮮な地野菜を使って簡単な食事を作った。美味しい食とシンプルな生活を大事にしているフランス人のセンスが僕は大好きだった。この石畳の田舎の村では、人生が複雑になり過ぎる前の古き良き時代に戻った気持ちになった。


数多のウルトラマラソンに出場し、輝かしい結果を残し続けてきた筆者が、「レースじゃない」と最後に悟っている。

人生はレースじゃない。ウルトラマラソンだってレースじゃない。ゴールラインはない。目標に向かって努力をして、それを達成するのは大切だけれど、一番大事なことではない。大事なのは、どうやってそのゴールに向かうかだ。決定的に重要なのは、今あなたが踏み出した一歩だ。
誰もが違った道を歩む。健康的に食べて、自由に走ることで、僕は自分の道を探すことができた。そうすることで、きっとあなたも道を探せるはずだ。その道がどこへ導いてくれるかは、やってみなければ分からないのだから。

つまり、本書をまとめると以下に集約される。

「より賢く走り、より賢く食べ、より賢く生きろ。」



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