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【読書メモ】Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法

この複雑な世界を生き抜くために、私たちは、何を指針にすればいいのか。「よい人生」とはいったいどういうものなのか。

古代の伝統的なモデルから最新の心理学研究の結果、ストア派をはじめとする哲学や、バリュー投資家の思考まで、膨大な研究結果をひもときながら、「よい人生」を送るための52の思考法が本書では紹介されている。より良く生きるには?というのは永遠の命題なのだろう。

なお、著者のRolf Dobelliは実業家、作家、さらにはパイロットとしても活動している多才なスイス人である。


良い人生とは何か

結論:わからない。

拍子抜けもいいところだ。しかし、著者はこれが言いたいのではもちろんない。人の数だけ境遇や環境が異なり、また世界は複雑でわずかな理念や原則だけでは当然把握できない。良い人生を手に入れるためには、あらゆる状況に対応する必要がある。

多くの状況で役に立つ、「思考の道具箱」を持つ必要がある。

そこで筆者は、人生の質を向上させる52の思考法を本書で紹介しているのだ。すべてを一気に把握することは当然できない。1つ2つと、日々トライアンドエラーを繰り返しながら実践していこう、さすればより良い人生へと向かうことができる、ということだ。

52の思考法からの個人的抜粋

個人的に印象に残った項目を、忘備録としていくつか抜粋しておく。

考えるより、行動しよう

考えるなということではない。考えすぎるよりは、すぐにでも行動しようということだ。考えるにも限度がある。時間とともに新たに得られる認識はどんどん小さくなり、これ以上考えても無駄という飽和点に達してしまう。考えを巡らせて行動しないというのはダメだ。


好ましくない現実こそ受け入れよう

体重が増えつつある人は、体重とは関係のないことに興味の中心を移していくようだ。なぜなら、そのほうが、痩せることよりも楽だからである。認知バイアスがかかっているとも言えるだろう。主観的には自分のことを正確に認識できないことが多い。そのため、あなたにありのままの真実を示してくれる「人生のパートナー」や「友人」を持ち、「好ましくない現実」を受け入れる必要がある。


 幸せを台無しにするような要因を取り除こう

「何を手に入れたか」で人生の豊かさが決まるのではない。「何を避けるか」が大事だ。対処療法ではなく予防医療が重要なように、勝つのではなく負けないことが大切なように。


自分の感情に従うのはやめよう

感情とは鳥のようなもので、外から飛んできてすぐに出て行ったり、しばらくそこにとどまっていたりする。周りの人の感情は真剣に受け止めるべきだが、移ろいやすい「自分の感情」とは真面目に向き合う必要はない。自分で客観的に理解することはほぼ不可能だからだ。自己の内なる感情に向き合え、というメンターも多いが、この著者は真逆のポジションを取っている。


目標を立てよう

これは、なにかの達成に向かっているときに役に立つ。いつまでに何をどうするのか、定量的に落とし込めば、後はそれに向かって邁進するのみ。


 楽しさとやりがいの両立を目指そう

以下の行為はあなたにとってどれくらい楽しいだろうか。

・大好きなチョコレートを食べること。

・趣味に没頭すること。

・被災者のためにボランティアをすること。

・足が不自由な人が道路を渡るのを手助けすること。

次に、上記の行為はあなたにとってどれほど有意義だろうか。

この質問2つに対してそれぞれ点数をつけてもらうと、多くの人にとってその順位は逆転する。上2つ(快楽や直接的な楽しみ)は前者の質問、下2つ(意義を感じる感情)は後者の質問に対して、点数が高くなったのではないだろうか。すなわち、欲求と意義のバランスが大切なのだという。どちらかに偏りすぎてしまうと、極端な方向に走りやすくなる。


性急に意見を述べるのはやめよう

アメリカとメキシコの間に壁を作るべきだろうか。各国は移民や難民を受け入れるべきだろうか。日本は原発を再稼働すべきなのだろうか。きっとあなたは、何かしらの意見はすぐに答えることは出来るだろう。しかしこれらの問題は即答できるほど単純な問題ではなく、短い時間で論理的な答えを出すことは不可能だ。

アメリカ人心理学者のジョナサン・ハイトはこう述べている。「人の脳は複雑な質問に即座に直感で答えを出す傾向があり、意見した後に頭で理性的に自分の立場を裏付ける理由を探し出す。」

すなわち早く発言してしまったために間違った判断をし、それを正当化してしまうという。以前紹介したこの本にも書かれていたことだ。

また常に意見を述べなければならないという呪縛がなければ、精神的にリラックス出来る。答えられない質問や難解な質問に答える必要はないのだ。意見がないのは知能の低さの現れではない。知性の表れなのだ。質問には「わからない」と答えてもいい。自分の意見は、時間を掛け、落ち着いて表明するべきだ。軽率に意見を述べる頻度が少ないほど、人生は向上する。

所感、52の思考法の紹介

ざっと印象に残った項目を紹介したが、本書にはよりよい人生を送るために必要な思考法(思考の道具箱)が紹介されている。そこまで目新しい思考法が紹介されているわけではなく、どこかで目にした提言も多い。少し冗長で分厚い本なので、腰を据えて読むというよりは、肩肘張らず気軽にサーッと流し読みし、気になった箇所を読み込む程度の読み方がいいのではないか。私はAmazonのAudibleを使って、ランニングをしながら3倍速で聞き流した。便利な時代になったものだ。

最後に、本書で紹介されている52の思考法を紹介しておく。

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