【読書メモ】幸福の「資本」論
幸福の「資本」論、橘玲著
幸せになりたいと願っている人は多いだろう。
しかし漠然と願っているだけでは当然幸せにはなれないし、何をしたら良いのかわからないという人も少なくない。
捉えどころのない、また多様性の高い「幸福」について、本書は具体的な方法を授けてくれる。
どのように一歩を踏み出せば良いか迷っている人には参考になる一冊。
幸福の3つの土台=人生のインフラ
・金融資産(不動産などを含めた財産):自由
・人的資本(働いてお金を稼ぐ能力):自己実現
・社会資本(家族や友達のネットワーク):共同体=絆
この3つを育てよ。どれかが欠けると不幸を感じるが、別に全てを完璧に揃える必要はない(筆者は3つを兼ね備えている人はいないと言及している)。せめて2つを持つことができれば幸せになれるというのが筆者のメッセージである。
資産はないが稼ぐ力があり友達もいるのがリア充、財産はあって稼ぐ能力もあるが友達のいない金持ち、金融資産だけ持っているのが(独身)退職者など、この3つを持っている/いないで8つにセグメント分けしているのが面白い。
この中で、富の源泉は自分自身の人的資本である。
最初は誰も金融資本を持っておらず、初期段階では人的資本からしか富を得る方法はない。
まずは人的資本へ自分のリソースを集中投資し、これを最大限膨らませること。
3つのタイプの仕事
人的資本を最大化するためには、どのような仕事を選ぶべきだろうか。
筆者は仕事も大まかに3つに分けられるという。
・マックジョブ
マニュアル化された仕事。達成感もないが、仕事や人間関係上のストレスも少ない。
・スペシャリスト(大きな人的資本を持っている)の仕事
平均収入は高いものの重い責任がかかる。また拡張性がなく、スケールしない(医者や弁護士は、同時に複数の案件をこなすことは現状では難しい)。
・クリエイティブクラスの仕事
拡張性があり、得られる収入は青天井だが、大半の人は鳴かず飛ばずのまま終わる(数多のYouTuberやインフルエンサーもここに該当する)。
収益の最大化と自己実現を両立するには
幸福についての研究では、「自分の人生を自分の自由に決められる」ことが幸福感
に結びつくことがわかっている。これが「自己決定権」で、人生の自由度が大きいほど人生に対する満足感は大きくなる。
人生100年時代の人生戦略は、いかに人的資本を長く維持するかにかかっている。昨今「好きを仕事にする」という言葉をよく耳目にするが、一理あるなと思ってしまう。そして筆者は収益最大化と自己実現を両立するためには、
・好きなことに人的資本の全てを投入する(集中投資)。
・好きなことをマネタイズ(ビジネス化)できるニッチを見つける。
・官僚化した組織との取引から収益を最大化する。
以上に取り組むことを勧めている。
所感
人生の問題のほとんどは、金銭、健康、近しい人とのこじれた関係から生じるということはなんとなく認識していたが、本書は幸福な人生のポートフォリオを自由、自己実現、絆の3つに分類して、言語化して説明している。
個人としてどのようにこのポートフォリオを充実させていくかを考える良いキッカケとなった。
サービス残業という現代の奴隷制度の中で働いている自分は、人的資本を有効に使っているのだろうか?
以下、本書を読んでいて印象に残った点をメモしておく。
一度だけの強い痛みより、弱い痛みが持続する方が幸福度を大きく引き下げる。すなわり、離婚や愛する人との死別より、毎日の満員電車の長時間通勤の方が人を不幸にする。
収入が少なくても、自営業の方が会社員より人生の満足度が高くなるのは、自分の好きなことをして自己実現を果たしているだけでなく、時間(いつどれだけ働くか)と人間関係(誰と働くか)を選ぶことができるからであり、公務員の幸福度が高いのは、裁量(やりがい)はないが安定があるから。
定年退職で人的資本と社会資本の大半を失ってしまう。年齢に関わらず弱いつながりを維持しつつ、フリーエージェントとしてプロジェクト型の仕事をする「生涯現役戦略」が効果的。
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