「サッシの外」・・・超ショート怪談。
「コンコン」
早苗のマンションに遊びに行った夜。
少し風が出て来たのか、ベランダ側のサッシに何かが当たる音がした。
キッチンでつまみの用意をしている早苗は気が付かないようだ。
「風が強くなったみたいだよ。洗濯物、取り込もうか?」
アタシは立ち上がって、ベランダに近づいた。
後ろで早苗が、あっと小さく声を上げたようだが、
何も気にする事はないのに、こんな時は女同士、下着の柄を知られたとて
何の気にすることがあろうか。
アタシは、元カレが物干し棹から赤い下着をいやらしそうに取る場面を
思い出した。
「本当にあいつはデリカシーが無かったな」
アタシはサッシを開けた。
目の前には何も無かった。
ベランダには、物干し竿も、物干し用のロープも、洗濯ばさみの一つすら無かったのだ。
「何にもないでしょう」
早苗が肩越しに話しかけた。
「でも時々、何かが叩くのよね」
その顔は、恐怖におびえながらも、半ば達観しているようにも
見えた。
『叩く・・・当たるじゃなくて、ぶつかるでも無くて、叩く・・・誰が?』
その理由をアタシは聞けなかった。
その夜、アタシたちは、兎に角たくさん食べ、たくさん飲んだ。
おわり
*加筆改訂
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