「長生きトマト」夏の畑の怪事件。
毎年、畑にプチトマトを植えるのだけど、今年は見送った。
暑さと雨のダッグに、面倒という助っ人が加わり、ついにやる気が負けてしまった。
ところが、
いざ、無いと思うと、
心のどこかで寂しく思っていたようだ。
風の強いある朝、
畑に通じる道にプチトマトが一粒落ちていた。
近くの畑から飛ばされてきたのだろうか。
真っ赤な皮に少し傷が付いているように見える。
つま先でポンと蹴ってみると、トマトは不規則な折れ線を描いて畑の脇まで転がった。
雑草の間から見える赤い果実は、
育てられなかった子供が
こつそりと物陰から覗いているような気になる。
背中合わせの恨みと愛情が
そんなものを呼び込んだのだろうか。
次の日も、次の日も赤いプチトマトは、、、そこにあった。
次の週も。
次の月になっても。
長持ちするもんだ、と思っていたが、さすがに気味が悪い。
近づいてみると、、、
赤いスーパーボールだった。
思い込みとは、何と可笑しいものだろう。
おわり
#怪談 #不思議 #謎 #トマト #思い込み #畑
ありがとうございます。はげみになります。そしてサポートして頂いたお金は、新作の取材のサポートなどに使わせていただきます。新作をお楽しみにしていてください。よろしくお願いします。