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「カレンダーガールズ」・・・「ズ」に注目。


まず言ってしまおう。「この舞台を観られたことは、人生の大きな幸福である」。

内容は、亡くなった友人のために、友人たちがまさに一肌脱いでヌードカレンダーを制作するという、実話に基づいた英国発のコメディだが、ただの喜劇では無い。

「他人の為に今出来る事」のために奔走する普通のご婦人たちを
軽快さに彩られた笑いとインパクトで一気に見せ切る前半部。
後半に入ると、カレンダーのヒットによる、むき出しの高揚感に流され
目的を見失っていく人の姿は「人間の弱さ愚かさ」を如実に表し、
観客に迫ってくる。

演者の多くはベテランと言っていい女優・俳優である。
おそらく自らの人生経験を元に芝居を組み立ている部分もあるだろうが
それに頼り切らず、芝居の深みの部分にとどめているところが良い。

だからこそ、登場人物がちゃんとヨークシャーの住人に思える上に、
異国の見知らぬ人々の出来事ではなく身近な話として舞台上に結実している。

若い女優やタレントでは、上っ面のエロティシズムの「カレンダーガール」になってしまうのが精々で、これだけのものは作れないであろう。


そこで、「・・・ズ」の話である。
終演後に行われた短いアフタートークで出演者が「本当に贅沢な配役」と
語っていたが、その通りだと思う。
舞台俳優や声優など、ジャンルは違えども、
その役に本当に合った人々がキャスティングされている。

まさに「カレンダーガールズ」は、駒塚由衣氏、村松恭子氏お二人のプロデューサーの手腕と人となり、演出陣の細やかでありながら自由を束縛しない演出、そして、にこやかに楽しんで演じ切っている俳優陣「ガールズ」が生み出した、観るものの心に「太陽の種」を蒔いてくれる空間であろう。


メインの登場人物については、おそらく多くの方がどこかで語られるであろうから、ここでは脇を支える「脱がないガールズ」について少しだけ語らせていただきたい。
個人的には、公爵夫人の村中玲子氏のいるだけで笑みが浮かんでくる佇まいが好きだ。アフタートークで、シャナリシャナリの役は「初めてやった」と言っておられたが、一瞬で笑いをかっさらっていく実力は素晴らしい。
そして、ブロッコリーおばさんの真山亜子氏。服や小道具にまで気を遣い、
生のブロッコリーを用いている思い切りも好感が持てる。
こちらもアフタートークで語られていたが、生なので時間経過によるブロッコリーの変化をこっそり確かめるのも、生の芝居ならではの面白みである。是非劇場で確認して頂きたい。


最後に、これはかなり個人的な感想になるので恐縮なのだが、
昔からの友人であり、今回の企画者の一人である村松恭子氏にとって
駒塚由衣さんとプロデュースも含めて組めたことは、本当に幸福な事であったと思う。

比較的エキセントリックな役回りが多く、舞台上でも物語をかき回すことを求められがちな女優村松恭子が、そのエキセントリックな個性を活かしつつ
感動のフィナーレに芝居全体を帰結することが出来たのも、
このかけがえのない相棒による部分が大きいと感じた。
またいつか二人がコンビを組んで演じられる事を期待したい。

終演後、舞台そのままの写真を使った出演者たちの撮りおろしカレンダーも
迷わず購入した。勿論単なるエールの意味ではなく、この喜びの瞬間に立ち会ったことを忘れえぬためである。

残席僅かと聞いたがお時間のある方は、是非その目で観て頂きたい。

舞台「カレンダーガールズ」。7月6日まで、中野テアトルBONBONにて。


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