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明暗を分けた重要な一戦【W杯最終予選】オーストラリアvs日本

まずは日本7大会連続W杯出場おめでとうございます。前半はスリリングな展開でハラハラしましたがら後半は少し落ち着いた展開で上手く戦い抜いたと思います。結果的に日本とオーストラリアで明暗が分かれましたが、今回はこの試合の個人的な感想をただひたすら文字に起こしていきます。

①W杯への切符

何よりもこの試合で一番大切だったことがW杯出場を決めるということです。負ければとても厳しい条件でベトナムとの試合を迎えることになるので最低でも引き分け以上の結果が欲しいところでした。日本はアグレッシブに攻める姿勢を見せながらもリスクマネジメントの部分ではかなり気を遣いながらプレイしていたと思います。三苫の活躍もあり試合に勝利。最高の結果でW杯への切符を手に入れたことは評価されるべきだと思います。


②バランス感覚

前半はかなりオープンな展開が続き、日本がチャンスを作ったと思ったら数秒後には日本がピンチを迎えているという場面が多々ありました。オーストラリアは意図的にオープンな展開に持っていっていたとは思いませんが、前半はオーストラリアの2トップの背後には大きなスペースがあり、遠藤を起点に浅野のスピードを活かした背後へのボールで多くのチャンスを作りました。ただディフェンスラインを上げる時間がないほどにスムーズに日本が攻めることができるので、中盤は間伸びしオーストラリアの守護神ライアンのパントキックからフルスティッチとデュークの2人でカウンターを受けてしまいました。「簡単に攻めれるけど、安易に攻めると危ない」という奇妙な展開でした。

そこで日本は後半から短いパスを主体にじわじわと相手陣内に攻め込む方法に意思統一。この辺りはハーフタイムで指示があったと思いますが、バランス感覚の優れた良い修正だったと思います。ボールを失ってもオーストラリアの選手たちが自陣に押し込まれているので、素速いカウンターからピンチを招く場面がかなり減りました。ゆっくりと攻める分、相手もしっかりとブロックを作って対処してきましたが川崎の遺産とも言える守田、山根、三苫の崩しは素晴らしかったです。


③左サイドの立ち位置

気になった点としては左サイドの長友と南野の立ち位置です。南野が内側に絞り、ハーフスペースを主戦場にしていたので大外にはスペースがあり長友が上がることができたと思いますが、南野にボールが入った際に長友のサポートの位置が低すぎて南野が潰される場面や南野が長友にパスをした時に長友の立ち位置からは中盤へのパスコースが角度がない状態でハマってしまう場面が見受けられました。当然カウンターのリスクがあったので、長友が安易に高い位置を取ることで相手に長友の背後にスペースを与えることに繋がる可能性も考慮しなければいけません。しかし、左サイドの南野と長友の関係性、そして田中蒼や遠藤といった中盤の関わり方に関しては今後の課題かなと感じました。


④采配的中

この試合の森保監督の采配は素晴らしかったと思います。オーストラリアがロングボールを使った攻撃が多くなってきた60分辺りで長友より上背のある中山を投入。また疲れが見えた浅野に代えて上田を投入し前線で収められる起点を置きました。試合も終盤に突入しセカンドボールが拾えなくなってきた時間に田中に代えて原口を投入し強度と運動量を維持。1点目の原口の黒子的な立ち回りも非常に効いていました。そして1人で状況を打開できる三苫を入れました。この時にはオーストラリアもかなり疲労感があり、この時間帯から三苫の投入はオーストラリアからすると嫌なカードだったと思います。日本の2点目は三苫が左サイドを切り裂きゴール、オーストラリアディフェンスはフレッシュな三苫に完全に振り切られる形となりました。森保監督の采配がズバリ的中したと言えると思います。


⑤オーストラリアの行く末は…

0-0で迎えた終盤にはパワープレイで勝負を仕掛けてくると踏んでいましたが、アーノルド監督の哲学なのかオーストラリアは割と丁寧に後ろで繋いできました。オーストラリアはポステコグルー監督が指揮していた時からポゼッションを主体するサッカーにトランスフォームし、アーノルド監督に指揮官が変わってもショートパスを繋ぎながら相手を攻略するサッカーをこの試合でも貫いていました。しかし、皮肉にも日本からするとオーストラリア人の高さとフィジカルの強さを活かしたパワープレイをしてこられた方が嫌だったと思います。

この試合で日本に負けてW杯出場に黄色信号が点いたオーストラリアですが、このポゼッションスタイルを今後も継続するのかというところで大きな議論がありそうな気がします。パワープレイ主体のサッカーでは世界に通用しなかったオーストラリアが求めたのがポゼッションであり、ポゼッションという武器を携えようと試みたらW杯出場自体が危うくなってしまっています。

日本も2014年のザッケローニ監督の下、多くの選手が絡み細かくパスを繋ぐ『自分達のサッカー』でブラジルW杯に挑みましたが、グループ予選を通過できませんでした。その後、日本人にもこれまで軽視されてきた『デュエル』が必要だという論争が起きました。ハリルホジッチ監督がデュエルを強調したスタイルで指揮してきましたが、W杯出場が危うくなり途中で解任。西野監督を挟んで現在の森保ジャパンに繋がるわけですが、球際の部分、まさに『デュエル』で相手と比べて見劣りする場面が激減したと思います。この試合でもオーストラリアの選手に対しても互角に戦っていました。

もしかしたらオーストラリアが現在志向しているポゼッションスタイルは日本が辿った経緯と同じように、後々のオーストラリアの財産となる可能性もあると思います。この試合に関して言えばオーストラリアも何人かの主力選手が欠いている状況だったので普段よりも上手くいかないといったことがあったと思います。オーストラリアの選手達の立ち位置も特に日本を困らせるような場面が少なく、日本が手こずったのはフルスティッチが遠藤の脇のスペースで仕事をするのでどうやって彼を捕まえるかという点だけでした。特にオーストラリアのダブルボランチはゲームメイクという部分で難があり、オーストラリアのビルドアップでダブルボランチが守田や田中に潰されてショートカウンターを受ける場面もありました。客観的に見てもオーストラリアのポゼッションは日本よりも優れていたとは言えないですし、このスタイルで結果が出るにはまだまだ時間がかかりそうではありました。「じゃあ今後オーストラリアがどういう道を辿るのか」という点は注目する必要があると思います。


最後に

ひとまずW杯が決まり世界へ挑戦することができるというのは大きな成果だと思います。ベルギーに敗れたロストフの悲劇から日本は世界との差を縮められているのか、はたまたギャップが拡がっているのか確認する絶好の機会です。何より世界中が注目する大会でサッカー離れが見受けられる日本でも注目が集まると思います。対戦相手がどこの国になるかは分かりませんが本線までにチームを築き上げて良い状態で臨んでほしいと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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