歴史の書き方―「論文を読む!」

 「鄭玄で学ぶ中国古典」シリーズを執筆するに当たって、さまざまな書籍・論文を読むために遠くの大学図書館まで泊まりで出張したことは、前回紹介しました。

 今回は、オンラインで公開されている資料をどう利用していくか、ということを説明してみようと思います。

 「鄭玄で学ぶ中国古典」の参考文献のページのある論文のうち、オンラインで読めるものは以下です。

・大庭脩「漢の嗇夫」(『東洋史研究』一四(一)、一九五五)
・池田秀三「馬融私論」(『東方学報』五二、一九八〇)、
・池田秀三「盧植とその「禮記解詁」上・下」(『東方学報』五二、一九八〇)
・髙橋康浩「范陽の盧氏について 盧植・盧毓と漢魏交代期の政治・文化」(『東洋史研究』七五(一)、二〇一六)
・池田秀三「輯佚の難と校讐の難」(『中国思想史研究』二一、一九八八) 
・間嶋潤一「鄭玄『尚書注』と『尚書大伝』―周公居攝の解釋をめぐって」(『東洋史研究』六〇(四)、二〇〇二)
・間嶋潤一「鄭玄の祭天思想に就いて―「周礼」国家に於ける圜丘祀天と郊天」(『中国文化』四五、一九八七)
・南澤良彦「王粛の政治思想―「感生帝説」批判の背景」(『中国思想史研究』一〇、一九八七)
・南澤良彦「魏晉の明堂改制論と王粛の五帝説」(『中国思想史研究』三四、二〇一三)
・池田秀三「訓詁の虚と実」(『中国思想史研究』四、一九八一)
・田中麻紗巳「鄭玄『発墨守』等三篇の特色」(『日本中国学会報』三〇、一九七八)
・飯島良子「五精感生説と後漢の祭祀 鄭玄注にみる」(『史学雑誌』一〇一(一)、一九九二)

 いずれも、Ciniiなどで検索すると、提供元のデータベースに飛ぶことができ、ダウンロードすることができます。

 ただ、田中麻紗巳氏の論文が収録されている『日本中国学会報』は、Ciniiで調べても公開場所が分かりません。この雑誌は、ここで論文が公開されています。こういうのは面倒ですが、慣れてくると、雑誌名を見ると「あ、これはオンライン上に公開されていそうだな」「これはだめだな、図書館に行かなきゃ」という判別ができるようになってきます。

 ちょっと細かな話になってしまいましたが、何はともあれ、最初は「興味のあるもの」を手当たり次第に読むのが一番よいでしょう。

 では、どのようにして「興味のある論文」を見つければよいのでしょうか。

 最初は、自分の興味のある分野について、新書(1000円前後)概説書(3000円~6000円)を、本屋に行って探してみてください。探すコツは、「参考文献がきっちり書かれている本を選ぶこと」です。

 「参考文献がきっちり書かれている」とはどういうことかと言いますと、大まかには以下の三点を満たすものです。

①挙げられている研究の数が多い。(ただし、多すぎてただの羅列になっている場合はダメ。○○の研究によれば~~など、詳しく書いてある方が誠実な本です。)
②引用されている研究の筆者が、一人に偏っていない。(ひどい場合、全部自分の研究を引いていることもあります。)

 そしてその本を読んだら、今度はその「参考文献」に上がっている論文を、探して読んでみてください。

 「論文を読む」なんていうと敷居が高く感じられるかもしれませんが、そんなことはありません。その新書の書き手が言っていることと違うかどうか、と二つを比較しながら読むと、テーマが明確になって読みやすいと思います。細かいことまで、すべて把握しなければならないわけではありません。分からないところは飛ばしながら、とりあえず結論まで読み進めてみましょう。

 こうしてたくさんの論文を読んでいると、徐々に研究の進展や蓄積がどのようになされてきたか、ということが分かってきて、現代に残された課題、今の学者が試みていること、が掴めてくるわけです。

 こう書くと途方もない作業が必要に見えますが、そんなことはありません。ぜひ、トライしてみてください。

 ちなみに、おススメの本は、以下のページで紹介しています!何を読めばいいのか分からないけど、何か勉強してみたいな…という方は、ぜひのぞいてみてください。

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