「歴史」の書き方―「足で稼ぐ!」

 先日まで、『鄭玄から学ぶ中国古典』というシリーズを更新してきました。読んでいただいた方の中には、「こういった内容の記事は、どうやって書くものなのだろうか」と疑問を持たれた方がいらっしゃるかもしれません。

 シリーズ内でも、どのように「歴史」の研究をするか、その描写をするか、ということはたまに触れましたが、具体的にどのように書き進めたのかということは特に説明しませんでした。
 そこで、「どのように歴史に関わる内容の文章を執筆したのか」ということを簡単に説明していきます。中国古典の研究者がどのように研究を進めているのか、少しでもイメージが湧くと嬉しいです。

 今回は、歴史の研究・執筆が、実は「足で稼ぐものである」ことについて説明していこうと思います。

 歴史の研究・執筆を行うときには、たくさんの「書籍」と「論文」が必要になります。しかし、当然ながら、必要になる全ての研究書・研究雑誌を買うことはできません。そこで、①図書館に行くこと、②オンラインの公開資料を利用すること、の二点が必要になります。

 「図書館に行く」と書くと簡単に見えますが、実はそうでもありません。歴史研究の上で必要になるような専門性の高い本は、普通の市民図書館には入っていないことも多いのです。よって、専門の図書・雑誌が多く入っている、大学図書館に行く必要があります。(ついでに言えば、大学図書館も大学によって差が大きく、その中でも充実した図書館に行く必要があります、)

 しかし、大学図書館は基本的にはその大学の所属者でなければ、気軽には利用できません。学外の人が利用できる仕組みも色々とあることが多いのですが、最近は新型コロナの影響で学外からの受け付けを一時停止しているところも多いようです。

 私の場合、オンライン授業で実家に戻っている関係で、所属先の大学図書館は遠く離れた場所にあります。近所の市民図書館にある書籍に関しては、たびたび通って必要なものはチェックすることができました。しかし、無いものはどうしようもありません。仕方がないので、一週間ホテルを取り、大学図書館まで行くことにしました。(むろん、感染対策を徹底した上で。)

 今回は、『鄭玄から学ぶ中国古典』の執筆のために確認した本が一番多いですが、自分の研究に関係する本や、今後読みたいと思っていた本も見たりコピーしたりすることができましたので、満足のいく遠出となりました。今回の遠出で入手した資料を全部購入すると、軽く数十万は掛かるわけで、一応、節約になっているとは言えます。(ただ、購入すればその後は遠出しなくても済むようになりますから、長い目で見れば購入した方が安上がりかもしれませんが、当然ながらそんな余裕はないです…)

 では、わざわざ遠出をして、どのような本を見たのか?というのが気になるかもしれません。『鄭玄から学ぶ中国古典』に使った本の一覧は、参考文献のページを見てください。

 ただ、わざわざ図書館に行って見てみたはいいけれど、あまり使いどころのない書籍・論文だった、結果徒労だった、なんてこともよくあるわけです。もちろん、「今後も何度も読む可能性が高い本だな」と判断し、新たに購入した本もあります。図書館への交通費、宿泊費、書籍購入費などを考えると、きちんと調べてものを書くためには、とにかくお金と手間がかかるものだと痛感しますね。

 さて、先ほど挙げた「参考文献」のリストの中には、オンラインで公開されており、今すぐ誰でも簡単に読める論文もたくさん含まれています。次回は、こうしたオンライン論文の公開事情について説明してみます。


 

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