35才の歪んだ私ができるまで~思春期②
本号では、私にとって、最も人格形成に影響を及ぼしたと思われる思春期に、私の性格がどのように変遷していったのか、順を追って話していこうと思う。
まずは中学一年。
記憶している限り、この時の私は絶対的な自信に満ち溢れていた。
傲慢という言葉が最も相応しい表現だろう。
学校の授業中ときたら、塾で習っていた内容ばかりで全く話を聞かずおしゃべりばかり。
教師に当てられたときはあっさりと回答し、またおしゃべりに戻る。
授業を聞かなくても定期テストでは高得点を叩き出す。
それでいてスポーツも得意で、学級委員長まで務めあげ、まさに絵に描いたような調子乗りだった。
さぞ、教師達には生意気に映っただろうと思う。
おまけにかなりのナルシストだった。
授業の合間には必ずトイレに行って髪型を直していた。
思い出すだけで反吐が出そうだ。
ただ、一定の女子人気は獲得していたし、告白されることなんかもあった。
どんな形であれ、私の人生において最も自信に満ち溢れた、輝かしい時期であり、そういった意味では、幼少期に芽生えさせた皆にとってのレッドになるという承認欲求を満たしていたに違いない。
ただ、案ずることなかれ。
この牙城はあっさりと崩れ落ちることとなる。
有頂天が度が過ぎると痛い目を見るのは、火を見るより明らかなわけで。
何をやっても失敗しないと思っていた私は、こともあろうか今までにやったことのない一発ギャグを気になる女子グループに披露したのだ。
誰かに強要されたわけでもなく、ただ女子の気を引くために。
絶対にスベらないという根拠のない自信をもって渾身のギャグを披露したわけだが、総スカンを食らったのだ。
何かしらリアクションがあったわけでもない。
完全に無視されたのだ。
今でもあの瞬間、あの恥ずかしさ、羞恥心を忘れない。
女子達からすれば取るに足らないことだっただろうが、私を失墜させるには十分な一撃だった。
これにて私の輝かしい無双期間は終焉を迎えたのである。
同時にこの時から、他人からどう見えるのかを意識するようになり、目立つことが恥ずかしくなる。
そして自らバカな行動をとることはなくなった。
なんとも滑稽極まりない。
当時の私にとっての良薬どころか、劇薬になったその珍事は、私を内向的な性格にするには十分すぎる効果を発揮したのだ。
中学二年の頃には先述のとおり内気な少年に変わり果てていた為、目立った行動には出ていなかった。同時に前号で話した、塾ズル休み事件を起こした時期でもあったため、精神的には最も不安定だったと言える。
休み時間も教室で過ごすようになり、アニメ好きの友達と語り合う程度に。
そこには、かつてのクラスの王様気取りの面影はなかった。
中学三年の頃には、腹黒い仏のような性格だったことを記憶している。
皆に良く思われたいという承認欲求は、変わらず持っていたが、その時の私はもはや、中心人物になろうという野望を抱かなくなっていた。
とにかく皆に好かれたい。嫌われたくない。
その一心で自分のあるべき姿を模索し、かつて傲慢から内気な少年を経て変貌を遂げた私の最終形態が、クラス皆に優しくなる、まさに仏のような人物だった。
その象徴として覚えているのが、ある曜日の昼休みの前が音楽室での授業の日だ。
そのまま昼休みになって遊びに行きたい女子達は、教室に音楽道具を持って帰る時間が煩わしいという話をしていた。
そこで、私は女子達の道具を教室に持って帰る役を買って出る。
女子達は喜んで私に感謝しながら道具を預け、遊びに出ていった。
私は教室に戻り、女子達の道具を各々の机に戻してあげる。
遊びから戻った彼女達は私に再び感謝を告げた。
私はこれに味を占め、頼まれてもないのに毎回、音楽の授業後にはこの役を買って出るようになり、その流れが定着するようになったのだ。
私は、必要とされることに喜びを感じ、様々な場面でこのような振る舞いをすることで、見事にクラスの仏の座を獲得したのである。
高校に上がってからも、私はこのスタイルを貫き、クラスの仏の座を明け渡すことはなかった。
これを読んで、一見ただのお人好しだと捉えることも出来るだろう。
だが、どことない気持ち悪さを感じる人も多いはずだ。
私もそうだ。
恐らくそれは、かつて私が学習した、人を欺くために自分を演じることと、同じことをしているのではないかということだ。
故に腹黒い仏と表現した。
そしてこの仏には芯がない。
信念も何もない、ただの表面的な偽善によって得た自己満足により創られた八方美人仏なのだ。
しかし、この仏こそが、恥ずかしながら今の私の基礎になっている。
つまり私を薄っぺらい、ふにゃふにゃな大人へと成長させた本質なのである。
当然、芯がないわけなのだから、私の歪みを大きく増幅させたのは言うまでもない。
次号では、浪人から大学生活での青年期の歪みについてお伝えする。
この歪んだ仏が、いよいよ地獄への歩みを進み始める。