見出し画像

台湾に来て感じた、日本社会特有の「社会人」という目に見えないプレッシャー

台湾留学に来て4ヶ月目に突入したので、台湾に来てから感じていることを帰国して忘れてしまう前に書き留めておきたい。

台湾に来て初めて気づいたことがある。

「日本社会(特に東京)には"社会人"という目に見えないプレッシャーがあり、そのプレッシャーが"大人"という新しい人格を形成している」

ということ。今まで全く自覚が無かったのだから恐ろしい。台湾に来て初めて気づいたこの気付きを、この記事ではより深く言及していきたい。

30代で初めての海外留学

初めてのnoteなので簡単に自己紹介をしておくと、僕は18歳の時に大学進学でド田舎から上京し、そのまま東京で就職し、約8年間東京で働いてきた。自分で言うのもなんだが、東京の中でもキャリア志向の強い"意識高い系"の部類に入っていたと思う。20代は仕事に人生を捧げる気持ちでバリバリ働き、周りの交友関係も大手企業や有名ベンチャー企業に勤める方や、起業して自分の会社を持っている方などがほとんどであった。自分自身も大手企業に勤めたり起業したりと忙しく働いてきた。自然と日常生活の会話の内容は「仕事に関する内容」が8割以上を占めていた。

新潟の田舎で育った自分にとって東京のビジネス社会はとても新鮮で刺激的で毎日が楽しく充実したものだった。ただ、飽き性の自分にとってその刺激は長続きせず、30歳に突入する頃には東京の生活にも飽きがきていた。

そんな時、2020年4月7日緊急事態宣言が発令された。実は昔から海外に対する興味が強く海外旅行にも頻繁に行っていたのだが、社会人になると長期休みもなかなか取れないため、一生日本で生きていくつもりであった。

ただ、緊急事態宣言以降クライアントとの打ち合わせが全てWEB会議になりリモートワークで働けるようになったため、急に海外留学に行けるチャンスがやってきた。人生最後のチャンスと思い30歳とギリギリワーホリビザの使える歳で飛びついたのが台湾留学であった。

台湾に来て、気づいたら十数年前の少年の自分がいた

ありがたいことに、台湾に来てすぐに日台交流会で台湾人の友達ができた。最初は台湾人があまりに距離が近いため戸惑ったものの、その距離の近さのおかげですぐに仲良くなることができた。出会った日から毎日のように連絡を取り遊びに出かけ、週末は毎週うちに泊まりに来て、旅行にも行った。

そんな中、出会って一ヶ月くらいで行った旅行で、旅行中にあることに気づく。子供のように無邪気に笑い、わがままを言い、冗談を言って友人を笑わしている自分がいることを。冗談を言いながら頭の中でふと思った、

「あれ、こんな風に少年のような感覚で過ごしているの何年ぶりだろう。」

台湾で気づいた"社会人"という新しい人格の"自分"

少年時代の自分は悪ガキで毎日先生に怒られていた。悪戯が大好きで、とにかく楽しければ何でも良いというアホな子だった。それが、いつの間にか悪ガキ少年の自分を忘れていた。小難しいことばかり考えて、真面目な話ばかりする面白みのない人間になっていた。

恐らく自分だけでなく、日本社会にはこのような人は多いと思う。"社会人"という自覚を持ちなさいと社会人になってから散々言われてきた。

自覚はなかったが日本社会は社会に出るとたくさんのプレッシャーが存在する。クライアントの前では誠実で真面目な自分を演じなければならないし、先輩の前では謙虚で気の使える後輩でなければならない。また、歳を重ね自分が先輩になると、後輩の前では仕事のできる賢い自分でなくてはならない。更に言うと、社会全体として"大人なんだからこうあるべき"というプレッシャーもあるように感じる。これは何も仕事だけの話ではない。30歳という世間の見え方と、相手によっては年上という立場から、日常生活においてもある程度落ち着いて常識人な自分を自然と作っていたように思う。

そんなプレッシャーを毎日受け続けることで、全く自覚はなかったがいつの間にか自分の中で新しい人格ができていたことに気づいた。「真面目で常識人な大人」という自分だ。

何歳になっても少年のままの台湾人

不思議なことに、台湾に来たら"少年"の自分に戻っていた。台湾に来て自分が少年に戻れたのは、台湾人の友達の影響が大きい。少年心を忘れていない彼らと遊んでいると、自分も何も気にせず少年の気持ちでいられる。

あくまで僕の感覚ではあるが、台湾人は30歳になっても学生時代のノリのままでいる人が多い。もちろん人によると思うが、割合で言ったら圧倒的に日本人よりも少年心を忘れていない人が多い。学生時代のノリのままで、みんな伸び伸びと素の自分を出していると感じる。

東京にいる時は生活の中の会話の内容が8割以上仕事だったが、台湾に来てからは、友人関係の話、恋愛の話、遊びの話、美味しいご飯の話と、学生時代に話していたテーマに戻っていた。

東京生活で忘れていた、素の自分を表現しストレスなく伸び伸びと過ごせる環境が台湾にはあった。

とても不思議だったので、この要因を知りたく、台湾人の友達に色々と日本と台湾の文化の違いを質問してみると、やはり"社会人"の考え方が大きく違うことに気づいた。

台湾には"社会人"というプレッシャーがあまりない

まず最初に驚いたのは、年齢が離れていても友達、上司とも友達感覚ということ。台湾には敬語や上下関係という文化があまりない。友人であれば歳が違くても同い年のように仲良くなれる。仕事における規律や礼儀の厳しさも日本よりも少ない。

台湾人の友達も、上司とも友達感覚というから驚きだ。日本のように、上下関係、顧客との関係、大人という立場、というプレッシャーがあまりないと言うのだ。厳密に言うと一応場合によってはあるにはあるが、そこまでプレッシャーは大きくないとのこと。

"社会人"という文化がある程度日本特有のものという自覚はあったものの、そのプレッシャーが人格形成にまで影響を及ぼしていることに驚きを隠せなかった。

台湾人は本当に無邪気で、少年のままでいる人が多い。大都市台北でこのような感じなのだから、恐らく田舎にいけばもっと顕著なのではないかと思う。

海外に来て気づいた日本独自の"社会人"文化

この話は何も台湾人に限ったことではない。僕の語学学校には世界中ありとあらゆる国の人がいるのだが、やはり皆無邪気で少年っぽい。僕の仮説ではあるが、やはり"上下関係"という文化が及ぼしている影響は大きいように感じる。

専門家ではないので詳しくは分からないが、クラスメイトと話している感じだと、上下関係という文化は日本と韓国にしか存在しないらしい(国によっては身分による上下関係は残っているかもしれないが)。この上下関係に基づく様々な人間関係が、外からの見え方を気にして自然と自分にプレッシャーをかけ、"社会人"という新たな人格を形成するに至っているように思う。

"社会人"文化のメリット・デメリット

"社会人"文化はストレス社会日本の原因の一つであると思う。今まで当たり前だったのに、今ではクライアントとの打ち合わせでストレスを感じることが多い。お互いに様子を伺いお世辞を挟み、素ではない自分を演じて仕事を進める。ストレスフルもいいとこだ。台湾人のようにもっと距離を近づけ素の自分を表現したいと思ってしまう。

一方で、"社会人"文化によるメリットがあることも確かだ。皆常識人であろうとするので、仕事は進めやすいし、顧客側に立った時にサービスの質が良い。人間関係においてもお互い冷静に建設的に議論を進めることができる。更に、真面目であろうとするので仕事や知的な活動に関心が向きやすく、好奇心をくすぐるような知的な会話ができる機会が多いように感じる。(一方で常識人過ぎるが故に、知的なだけでビジネスの成功率は決して高い訳ではないとも思うが。)適度なプレッシャーは必要という考えももちろんある。

どちらが自分に合うかは本当にその人次第。

"社会人"文化の日本でこれから自分がどう生きるか

今まで当たり前だったため考えたこともなかったが、台湾に来てからずっとこのテーマについて考えている。自分にとって理想の社会・人間関係はどのようなものだろうかと。日本社会も台湾社会もお互いに良い点悪い点がある。

一つだけ言えることは、台湾に来なければこの事に気づくことすらできなかった。違う環境に来たおかげで、客観的に自分の生きてきた環境を見ることができる。海外留学の一番の醍醐味と思う。

台湾に滞在してみて思うことは、やはり自分は日本が好きだということ。台湾と比較して日本の悪い点はたくさん見えたが、それでも母国を愛する気持ちは変わらない。慣れ親しんだ食、世界と比べたらまだ高い給与水準(いつまで続くかは置いておいて)、治安が良く質の高いサービス、四季があり豊富な自然資源があり国内だけでも飽きない美しい土地、僕の大好きなサブカル、こんな良い国他にないと思う。

一方で、昔からずっと思っていたことだが、日本の上下関係文化は本当に大嫌い。この文化のおかげで上記メリットが保たれている側面もあるとも思うのだが、それでも嫌いなものは嫌いだ。弊害が多すぎる。

お互いの良い部分をうまく融合することはできないだろうか。日本社会を変えたい程の大層なことは言えないが、せいぜい自分の周りだけでも。その答えを見つけるために、後少しの台湾生活存分に楽しみたい。

最後に、コロナ状況下でこんなにも良い経験をさせてもらっている台湾には、本当に感謝しかない。いつか恩返ししたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?