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初めての母、兄不在の時間

幻聴を聴き予備校に行かなくなって、

しばらくは何もせず家にいました。何をしていたかあまり覚えていませんが、ゲームをするとか漫画を読むとかしながら、鬱々と過ごしていたのだと思います。

そして夏になり、母親が手術のために病院に入院することになりました。
手術といっても半月板を損傷していたので、それを治す外科の手術です。命にかかわるとか、そういった類のものではありません。
なので、母は前々から入院の日取りを決めて予定を立てていました。

そして、母の入院の直前、兄が風邪をひき寝込みました。
母はおそらく入院もあったため、バタバタしており、兄の看病をあまりしていませんでした。
兄の風邪はなかなか治らず、部屋に引きこもっていたのですが、3日後くらいに部屋からでてきた兄の顔に、本当に死相のようなものがでていました。
顔は黒ずんでいて、かなりやばかったです。

我が家は、父が教員であったため、同じ区内にある教員の共済組合の大きな総合病院がかかりつけ医で、子供の頃からバスに乗ってそこに通っていました。
(子供の医療費が無料になる前から、教員の共済組合に家族は医療費がタダでした。入院もタダでした。今は三割か二割負担だと思います)

母がその病院に入院するのと、兄がその病院にかかったのとどちらが先だったのかは覚えていませせんが、兄もその病院の内科に行き、結果肺炎のため緊急入院となりました。

全く同じ時期に、整形外科と内科で同じ病院に母と兄が入院したのです。
それまで、私が幼稚園のとき中耳炎で入院した以外に誰も入院などしたことがなかったのにです。すごいタイミングです。
入院期間は二人とも2週間ほどだったと思います

そのことにより、しばらく我が家は父と私の二人暮らしとなりました。
父は普通に働いていたので、毎日仕事に行っていました。
食事は向かいに住んでいる祖母が毎日作ってくれていました。
当時まだ、私は料理をほとんど作ったことがなかったので、夕食を作れる技量はありません。
ただ、母がいないので台所を自由に使うことができたため、私も買い物に行き、食材を買ってきて少し料理を作ったりもしていました。

そして、この母と兄不在の2週間、私は何を思ったか、家の大掃除を始めました。特に台所をピカピカに磨き上げました。
私の台所はめちゃくちゃ汚くはないですが、物も多いですし、母は整理整頓があまり得意ではありません。あとあまりまめに掃除をしないため、汚いところはとても汚かったのです。
玉ねぎや茄子が液化していることがよくありました。
それぐらいの感じです。

激落くんを使い、台所をピカピカにしている時間はとても楽しいものでした。コゲだらけの五徳が見たことのないレベルで綺麗になりました。
楽しかったなという記憶が残っています。

そして、台所の掃除が終わると、私は兄の部屋を掃除しました。
これに関しては今ならばおそらくやりません。
当時の私はまだ、人との心理境界線が曖昧で、プライベートの線引きができていません。なので、病気になったのは兄の部屋の積もり積もっているほこりが原因だろうと思い、本人の許可を取らず勝手に掃除をしたのです。
兄の部屋は当時すでに汚部屋でした。

4畳半の部屋は足の踏み場がないほどものが床の上に積み重なっていましたし、机の上も引き出しの中もぐちゃぐちゃでした。掃除など数年来されていないので、ホコリは厚く堆積していました。
私はものの場所などは動かさないように、堆積していた埃を掃除機で吸い、雑巾で拭けるところを拭きました。
ちなみに掃除をしたからといって兄に喜ばれることはなく、おそらくかなり迷惑だったのではと思います。

この母、兄不在の2週間は私にとってかなり快適な時間でした。
父はいませんし、父は父のルーティーンを侵さなければあれこれいってくる人ではありません。
作った料理なども基本食べてくれます(その辺は興味が薄いです。逆に繊細な味などはわかりません。おおらかと取ればおおらかです)

今日は何を買ってこようかと自分で考えて、買い物に行き、洗濯などの家事をこなし、掃除をしてすご日々は、自分で生きているという感覚を持つことができ、とても楽しく、快適でした。

結局当時私にとっては、母の発信過剰で喋り続けるのを受け取らなくてはいけないことと、過干渉で色々先回りして私のこともやってしまったり、私のやることにいいの悪いの言われることと、兄と母の口の悪さが脅威だったのだと思います。

予備校に行けなくなったことで、底に落ちていた自尊心のようなものがこの2週間で少しだけ回復しました。
この2週間はとても貴重なキラキラした夢のような清らかな時間でした。

そして、2週間して母と兄が帰ってくると、全ては元通りになりました。
キラキラしていた日々はなくなり、台所はすぐに汚れて元通りになり、
私の気分もすぐ元に戻りました。

ちなみに、兄は熱が下がり退院する直前、身体中に発疹がでたため、何かしらのウイルスに感染していたらしい、ということだけ分かりました。(何だったのかはわからない)
ただ、ちょうど大学のテストと入院期間が丸かぶりしてしまったため、兄はこの入院のせいで落第し留年することとなり、履歴書に事情をかけるわけではないので、おそらく就活などにも影響が出ていたと思います。
それはとても気の毒でした。

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