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「数値」を「絵」にして人を動かす技術

御守 一樹

heyで STORES の事業責任者をしている御守(オンモリ)@OnMorikです。プロダクトマネージャー(以下PdM)組織のマネージャーからプロダクト責任者を経て現在に至ります。特技は予実を外さないこと。

この記事では「数値」を「絵」にすることで自分の考えを伝え、人を動かす技術について書きます。(プロダクトマネージャー Advent Calendar 2021 の10日目です)

WHYは具体的にどう伝えるのか

「PdMはWHYに責任を持つ存在」だとよく言われます。「なぜこれをやるべきなのか(=だから協力してほしい)」という自分の考えを伝え、周りのステークホルダーを動かしてプロダクト開発を進める。それがPdMだと。

一方で、そのWHYを伝えるための具体的な方法は?という疑問に答えてくれる情報は非常に少ないです。PdMという職種がまだ新しい職種であり、それぞれの現場で手探りしているのが現状でしょう。

WHYを伝える最強のツールは「数値」。だが…

一般に、自分の考えを伝えて人を巻き込む際に非常に強力なツールは、「数値」です。数値は客観的であり、継続的に測定可能であり、フェアです。「数値」はビジネスに限らずこれまで人類が意思決定の拠り所にしてきた最強のツールです。

しかし、この「数値で伝える」という武器は扱いが難しい。なぜなら、あなたが数値でWHYを伝える時、受け手である伝え ”られる” 側の脳にかかるコストが非常に高いからです。数値の定義を読み解き、その大小や対比から意味を読み解き、さらに仕事に結びつけてWHYの妥当性を判断する….、という多くの工程を受け手に強いることになります。

そこで役に立つのが、「数値」を「絵」に変換する技術です。

「数値」を「絵」にすることのメリット

自分の考えを伝えるために、「数値」を「絵」に変換するメリットは3つあります。

第1に、絵にすることで、理解してもらいやすくなります。数字の羅列と比べて受け手の解釈・理解コストが圧倒的に下がります

第2に、絵にすることで、覚えてもらいやすくなります。絵は数値と異なりイメージとして脳内に刻み込まれて残ります。私の実体験として、「あの●●●について話していた図ってどこでしたっけ?」と聞かれることがよくあります。私の話の内容を絵という形式でその人の脳内に残すことができた証左です。

第3に、絵にすることで、広めてもらいやすくなります。昨今のリモートワーク環境ではチャットでのコミュニケーションが中心ですが、誰かの話の引用は、テキストでズラズラ書くよりも、画像を1枚シュッと貼り付ける方が圧倒的に楽です。絵にすることで、自分が伝えたいことが、他のチームでも独り歩きして勝手に広まっていきやすくなります。

数値を絵にする技術

ここからは具体的な技術紹介に入ります。3つの例を紹介します。

技術① ファネルは長さにする

例えばこのような登録コンバージョンを改善したいとします。

例:登録CVRを改善したい

どこを改善するかを明確にするために、まず行うのはファネル分解でしょう。しかし、数値だとパッとイメージしづらいです。

ファネル分解。数値だとパッとわかりづらい。

そこで、このファネル数値を「長さ」に変換します。(下図)

ファネルを長さに変換。ボトルネックが視覚的に理解できる

すると、ファネルのボトルネックが視覚的にわかります。「フォームAとフォームCでガコンと離脱している点がボトルネックです!ここをゴリッと改善しましょう!」と伝えるのが楽になるはずです。逆に、他のファネルはあまり改善余地がなさそうということもわかります。どんなエクセレントなページでも数%は離脱するので。

また、残存率を記載するのもおすすめです(下図)。「世界がもし100人のユーザーだったら、ここまで到達しているのは何人なのか」というイメージがしやすくなります。

残存率。「世界がもし100人のユーザーだったら」がわかりやすい

一方、実数の記載はMUSTではありません。なぜなら今ここで伝えたいのは「ファネルのCVR」であり、「最初の発射台の母数を増やす」ことは別論点であるためです。CVRの議論の際に「ここで3,500を3,650にしましょう」といった実数の話は、受け手にとっては不要に理解コストを上げるノイズにもなり得ます。

なお、「ファネル」を画像検索するとだいたい出てくる三角形の図。これは「数値」を伝える上では不向きです。なぜなら、各ファネルのボリュームがこんな相似縮小で減ることは現実世界で起こらないため。また、線の長さと図形の面積のどちらが各ファネルのボリュームを示しているのか受け手に理解しづらいため。(面積は長さの二乗に比例するわけですが、その差分を…となると暗算できない) 。この図はあくまで概念の説明に使うとよいでしょう。

何かを言っているようで何も伝わらない絵

技術② シェアは面積にする

例えば次のようなユーザー獲得経路のシェアがあったとします。

例:ユーザー獲得経路のシェア

やはり数値だと課題がパッとわかりません。そこで、これを数値を「面積」に変換してみます。かつ、もうひと手間、コントロール可能なものとそうでないもので塗り分けてみます。

数値シェアを面積に変換。課題が見えてくる。

すると、シェアが視覚的にわかります同時にいくつかの課題と示唆が見えてきます。特にこの場合はコントロール困難な経路(グレー)に依存していることが課題です。外部環境の変化でガタッと獲得数が落ちこむ可能性があります。コントロール可能な新しい経路の開拓をしたくなりますね。

そこで、コントロール可能な新しい獲得経路として、ユーザー招待機能の開発とそれに絡めたキャンペーンを企画したとします。獲得目標は1,000として。

全体への事業インパクトが視覚的にわかる

そんな時もこの絵を使えば「現状、獲得経路がアンコントローラブルなものに依存していることが課題。だから新しい経路を発明しなければいけない。」というWHYがスッと伝わります。また、+1,000という新機能の開発によって見込まれる効果が事業全体に及ぼすインパクトも視覚的に捉えやすくなります。チャレンジしようとしていることの価値が浸透している方が、ステークホルダーのモチベーションも上がるものです。

技術③ 結果は推移グラフにする

これら①②の技術を活用してWHYを伝え、周りを巻き込んだあなたは、きっと右肩上がりの結果を出しているはずです。最後はその結果を仲間と分かち合いましょう。

ここでも「数値」だけでは、実現したことのインパクトや意義が直感的に伝わりにくいものです。

数値。心に刺さらない。

そこで、数値を「グラフ」に変換します。それも推移がわかるものに。右肩上がりのグラフは見る人に爽快感を与えます。

数値をグラフに変換。しかしこれでは不十分。

ところが、Googleスプレッドシートから吐き出される純正のグラフ(上図)は、人にモノを伝えるにはやや不向きです。例えば目盛線。人間は2,500の区切りで物事を捉えないので実質的に意味がありません。また、10,000というそれっぽいボーダーラインに罫線が置かれてしまいますが、これは事業目標と全然関係ないので、ミスリードです。

例えばこんな感じでひと手間加えてみましょう。

ひと手間加えたグラフ。最終到達点と、やった感が伝わりやすい。

いかがでしょう。成長感と、目標に到達できた感が伝わり、「今年は良い1年だったな!」という気分が盛り上がるはずです。たぶん。

一方で、こうしたグラフのビジュアル調整は、生産性や業務スピードの観点では無駄だと感じる人もいるでしょう。しかし私はそう思いません。むしろ、一緒に仕事をしてくれた仲間と気持ちよく成功を分かち合うために一定のコストを払わないのは失礼だと考えています。トロフィーは量産品ではなく一点物で作りたい。

また、PdMとして周りを巻き込み続けるために真に重要なのは、「事前のお願い」ではなく、「事後のフィードバック」だと思います。協力して動いていただいたみなさんに、どんな結果を生み出し、それがどういう意味を持つのか、という成功の意義を伝え、喜びをしっかりと分かち合う。これにより、次のプロジェクトに進みやすくなります。

まとめ

この記事では、自分の考えを伝えて周りの人を動かすために、「数値」を「絵」にする技術について書きました。私が日頃こんな具合に社内ドキュメントを書いているためか、最近のhey社内では、私以外にも上記の技術を使って説明している人が増えてきた実感があります。

この記事が少しでも誰かのヒントになれば幸いです。参考になったと思ったら、ぜひスキを押したりシェアしていただけるとうれしいです!

[最後に]
hey社でのアドベントカレンダーもやってます!25日分なのに書きたい人が60人くらいいるらしくボリュームたっぷりです。heyに興味がある方はこちらまで!私 @OnMorik へのDMも大歓迎です!


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御守 一樹
heyでSTORESの事業責任者を務めています。PdM組織のマネージャーとプロダクト責任者を経て現任。 /前職のグリーでは複数プロダクト統括マネジメント、後払い決済サービス立ち上げ / 東大でロボコン日本一 ■https://twitter.com/OnMorik